2009年2月23日(月)「しんぶん赤旗」
公的助成削減の来年度文化庁予算案
景気悪化で苦境の芸術団体
創造活動に深刻な影響
辻 慎一
二〇〇九年度文化庁予算案の詳細が明らかになりました。総額は、千二十億千二百万円で、二億五千七百万円(0・3%)の微増となっています。
制作や運営費が大変
しかし、その内容を詳細にみると、芸術創造活動への公的助成や人材養成などはむしろ削減となっています。また、国立美術館や博物館、国立劇場、新国立劇場など、芸術活動を支える基盤を運営する国立美術館、国立文化財機構、日本芸術文化振興会(芸文振)への運営費交付金はすべて減額となっています。
景気悪化の影響で芸術団体にとって制作や運営資金を確保することは深刻な問題になっています。今回の予算案はそうした事態を救うどころか逆行するものといえます。
とりわけ、芸術創造活動への公的助成の削減は重大です。芸術創造活動への支援では、重点支援事業が、「芸術創造活動特別推進事業」に改編され、文化庁と芸文振の事業を「一元化」するという制度変更がくわえられています。これは、一昨年末に閣議決定された「独立行政法人整理合理化計画」によるものです。
この「一元化」によって、舞台芸術では、芸文振の「舞台芸術振興事業」が廃止され、映画では、芸文振の基金による「映画製作への支援」が廃止されます。
「特別推進事業」は、五十一億七千九百万円が計上され、そのうち「舞台芸術公演・伝統芸能等への支援」が四十三億五百万円、「映画製作への支援」が八億七千四百万円となっています。
これを今年度の文化庁と芸文振の直接対応する事業の合計(芸文振は助成実績)と比較してみると、舞台芸術では四十八億三百万円から四億九千八百万円(10%)の減額、映画では十億千八百万円から一億四千四百万円(14%)の減額になっています。
三割をこえる減額に
この間、文化庁予算のなかで、芸術創造活動への重点支援は毎年のように削減されてきました。文化庁の重点支援は、二〇〇二年度に「新世紀アーツプラン」として再編されましたが、舞台芸術と映画が独立項目となった二〇〇三年度以降、文化庁と芸文振を合わせた額で比較すると、舞台芸術で七十六億八千五百万円から五十一億四千六百万円(67%)に、映画で十四億九千四百万円から八億七千四百万円(59%)にまで下がっています。しかも、二〇〇五年度には助成方式も改悪されました。これでは、およそ芸術団体の期待にこたえることはできないでしょう。
これまで映画製作への支援は、芸文振と文化庁の二本立てとなっていました。今回の「一元化」で、一九九〇年以来、芸文振がおこなってきた映画製作への助成は廃止され、毎年の政府予算からの補助金による助成に一本化されるなど、助成の性格も変更になります。
文化予算を拡充し、文化庁と芸術文化振興基金の行っている公的助成の削減をやめ、助成方式の改善と予算増を図ることは急務です。(党学術・文化委員会事務局次長)