2009年2月25日(水)「しんぶん赤旗」

文化 学問

富山大学学長選考問題

大学自治の保障くずす

例のない3位得票者の就任
大学内外から「再考を」の声


 国立大学が法人に移行して五年になろうとしています。いくつかの大学では、学長選考会議で、教職員による意向投票で第一位になった人が選ばれず、場合によっては訴訟になるケースさえ生まれ、大学の自治に大きな問題を投げかけています。

 昨年十二月、富山大学の学長に、教職員の投票で第三位の最下位だった現職の西頭徳三氏が再選されたことに対し、大学内外から「学長選考の再考を」と声が上がり、反響を広げています。

 富山大学では、次期学長を決める選考会議の前に、教職員による意向投票が二度実施されました。第二次投票(投票率88・5%)では、三人の候補者のうち投票総数の58%を獲得した第一位者に対し、西頭氏は約二割しか(第一次も)獲得できず最下位でした。

 同大学学長選考規則では意向投票を「選考の参考とする」と定めていますが、学外委員十二人(学長が任命)と、各学部長などの学内委員十二人で構成する学長選考会議は出席者による投票を行い、西頭氏が十一票を得て当選しました。意向投票で第三位者が学長に選ばれるのは全国に例がありません。

 学長選考の結果に対し、全八学部のうち、経済、人文、人間発達科学、理学、医学、薬学の六学部の教授会が、教職員の意向投票を「無視した」として、相次いで抗議や遺憾の声明や要望書などを発表しました。

 各声明では、教職員の意向投票での西頭氏の得票は、「事実上学内不信任を突きつけられた形」「学長を含めた現執行部にはっきりと不信任を示した」と指摘し、学長選考会議の結果は「異常な事態であり、大学自治への重大な侵害である」「教職員の衆知を結集した円滑な大学運営を実現するための重大な障害になる」「健全な組織運営は期待できず、教職員の活力も失われかねない」「社会的にも本学の信用に疑念を投げかける」とのべています。

 また全国大学高専教職員組合(全大教)が声明を発表。学長選挙の問題は「大学自治の枠組みの中で解決すべき事項」とことわりながらも、今回のことは「大学は、多様な価値観を共有する研究教育組織であり、構成員の意思の尊重と合意形成が何よりも重要」「学長選考の再考を促したい」とのべるとともに、国立大学法人法で現職学長にとって有利な規定があるなど学長選考制度のもつ問題性にふれて「学長選考のあり方を見直す必要性も示している」と指摘しています。

 二〇〇三年制定の法人化法の際、衆参両委員会で、「法人化にあたっては、憲法で保障された学問の自由や大学の自治の理念を踏まえ、…自主的・自律的な運営の確保に努める」という付帯決議が採択されています。大学によっては、教職員の意向投票結果に「基づいて」(東京大学)、あるいは「基礎に」(京都大学)総長予定者を決定する、と定めているところもあります。

 学長を教職員による投票にもとづいて選ぶことは、戦前から続けられてきた大学の民主的な伝統であり、学問の自由と大学の自治にとっての重要な保障となっているからです。(三木利博)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp