2009年3月1日(日)「しんぶん赤旗」

介護認定新方式

報酬増が吹き飛ぶ恐れ

石川の施設 軽度化の影響試算


 政府が四月から実施予定の介護保険の新しい要介護認定方式で、利用者の認定が軽度に変わるために事業所の収入が減り、報酬改定による増収分が吹き飛ぶ恐れのあることがわかりました。石川県の「やすらぎ福祉会」が傘下の特別養護老人ホームについて試算しました。

 試算は、日本共産党の小池晃参院議員の求めに応じて厚生労働省が一月に提示したモデル事業の結果(本紙一月十九日付で報道)に基づいて行いました。

 モデル事業は厚労省が昨年実施し、現行方式と新方式による認定結果を約三万件について比較したものです。新方式では、「要支援2」から「要介護5」までの各要介護度で、それぞれ二―三割の利用者の認定が軽度に変更されていました。(グラフ)

 新方式による認定の変更率を入所者の要介護度ごとにあてはめて計算したところ、特別養護老人ホーム「やすらぎホーム」では年間五百四十五万円もの減収となりました。(表)

 施設への報酬は利用者の要介護度が下がるほど低く設定されており、重度の利用者の減少に伴って収入が減ります。「要介護1」から「要支援」となり施設入所の資格を失う人も一人出ます。

 一方、四月から実施される介護報酬改定案で単純計算すれば同施設は年に六百五十万円の増収となる見込みです。

 しかし、改定案が新設している「日常生活継続支援加算」の算定要件は「要介護4、5」の入所者の比率が65%以上です。認定が変更され「要介護4、5」の人が減ればこの加算を算定できなくなります。

 認定方式の変更による減収分と差し引きすると、報酬の増額分はほとんどなにも残らなくなります。

 認定の新方式が各事業所の経営に及ぼす影響は一様ではありません。しかし、生活実態がまったく変わらないのに要介護度を下げられれば、利用者本人だけでなく事業所も大きな痛手をこうむることは必至です。四月から報酬をアップする目的として政府自身が掲げた「介護従事者対策」とも矛盾します。(杉本恒如)

表

 

表

 要介護認定方式の変更 介護保険のサービスを受けるには要介護度の認定を受ける必要があります。認定調査員の聞き取り調査と主治医の意見書に基づいて、コンピューターによる一次判定と認定審査会による二次判定が行われます。

 四月実施予定の新方式は利用者から聞き取る重要な調査項目を大幅に減らし、認定審査会が参考にする統計資料も削減しています。

 さらに厚労省は四月から聞き取り調査の判断基準を大幅に後退させる計画も進めています。この変更で、要介護度がさらに軽く出る恐れがあります。



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