2009年3月1日(日)「しんぶん赤旗」

1年半で10万人減

イラク撤兵計画発表

米大統領 完全撤退は11年末


 【ワシントン=西村央】オバマ米大統領は二十七日、ノースカロライナ州の海兵隊基地キャンプ・レジューンで演説し、イラクに駐留する米軍約十四万人のうち、戦闘部隊約十万人を来年八月末までに撤退させ、三万五千―五万人規模の部隊を残留させる方針を示しました。

 完全撤退は、イラクとの地位協定にもとづく駐留期限の二〇一一年末。オバマ氏が撤退の期限や規模などを明示したのは就任後初めてです。ただ大統領選挙中に公約した「就任後十六カ月以内の撤退」より三カ月遅いものとなりました。

 オバマ氏は「イラクは正統な統治機構を持つ主権国家であり、安全保障の権限を完全に移譲する」と述べ、イラクの領土や資源は侵害しないと強調。「イラクと周辺地域の安全保障を促進する新たな枠組みを創設する」ため、イランとシリアを含む「地域の全諸国との原則的で持続的な関与を追求する」と表明しました。

 また残留する三万五千―五万人について、イラク人部隊を訓練するほか、軍事顧問として活動し、一部は限定的な対テロ作戦や米国人保護にあたるとしています。オバマ氏は、残留部隊も二〇一一年末までに撤退すると表明しました。

 今後、米軍はアフガニスタン戦略の包括的見直しを進めながら、「対テロ戦争」の主戦場をアフガンに移す意向。米軍は夏までに一万七千人をアフガンに増派する方針です。


解説

残留部隊の役割に不透明さ

 今回の撤退表明は、国連無視でイラク侵攻に走った米国の軍事面での一国覇権主義が、国内外の批判を浴びて行き詰まった結果と言えます。ただ、撤退計画は明らかにされても、米軍は二〇一一年まで残ります。残留部隊がどういう役割をになうか、不透明な部分もあります。

 オバマ大統領が演説で「あまりにも長い戦争だった」と指摘したイラク侵攻は、ブッシュ前政権が「大量破壊兵器の脅威の除去」などを口実に、国連承認もないまま開始。当初から国際法違反の侵略戦争との批判を浴びてきました。

 「有志連合」を結成して同盟国を戦争に動員したものの、戦争の大義が失われ、不法な占領が長期化して犠牲が拡大する中、撤退する国が相次ぎ事実上、崩壊。米国が孤立して十四万人以上の駐留を続けてきました。

 オバマ大統領は二十四日の政策演説で、「イラクを同国民に委ね、責任あるかたちで戦争を終わらせる」と述べました。イラクの多数世論は一日も早い米軍撤退と主権の全面返還を望んでいます。戦争の「責任ある終結」をいうなら、イラクの人々の要求を尊重することが不可欠です。 (ワシントン=西村央)



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