2009年3月2日(月)「しんぶん赤旗」
国民の苦難に心寄せ 打開策をズバリ示す
衆院での共産党の論戦 マスコミも注目
二〇〇九年度予算案と関連法案が二月二十七日に衆院を通過しました。「百年に一度」の経済危機のなか国民の暮らしは深刻の度を増しています。そうしたなかで各党がその苦難にどう目を向けるのかが問われる国会論戦。日本共産党は国民の苦難に向き合い、打開策を示す論戦を展開し、政治を動かしてきました。衆院での論戦を振り返りました。
平和 グアム「移転」追及
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大きく変化しつつある世界のなかで日本の進路はどうあるべきか。今国会論戦の重要テーマの一つです。日本共産党は、志位和夫委員長の代表質問で、国連憲章にもとづく平和の秩序づくり、対等、平等の日米関係という道を提起。それに連動して、米軍との軍事一体化をすすめる「米軍再編」の危険を暴きました。
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赤嶺政賢議員は、沖縄の米海兵隊のグアム「移転」に際して、戦闘部隊の基地建設費用まで日本が財政負担することになっていることを暴露。防衛省も認めました(二月六日)。
「実戦部隊用の作戦運用施設は(費用)分担しない」としてきた政府の説明とまったく異なるもので、「米軍基地強化のための血税投入」(赤嶺氏)にほかならないことを浮き彫りにしました。
質問から十日後、十六日付の「朝日」は一面トップで、同じ内容を報じました。
米軍再編が口実としている「沖縄の負担軽減」もごまかしであることが赤嶺氏の質問(同二十六日)で明らかになりました。赤嶺氏は、在沖米海兵隊八千人とその家族九千人がグアムに「移転」しても、「(米軍の部隊が)別のところからやってくる」との米側発言を突きつけました。中曽根弘文外相は、答えず、「(移転の)人数は変動する」と述べたのです。
「琉球新報」は二月十九日付夕刊の一面トップで、「米軍再編 目的は抑止力強化 沖縄の実態裏付け」と報じました。同日の笠井亮議員の質問です。
笠井氏は、同月十七日に日米間で結ばれた在沖米海兵隊のグアム「移転」に関する協定について「基地強化が実態だ。『抑止力を強化する』とはっきり書いてある」と追及。麻生首相も「協定に書いてある通り」と認めました。
暮らし 深刻な実態示し対策迫る
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日本共産党は、全国各地でおきている暮らしや福祉をめぐる深刻な現実を示して政府に対策を迫りました。
経済不況と雇用情勢の悪化のなか、高校生の学費滞納が急激に増え、中途退学に追い込まれる事態を取り上げたのは石井郁子議員(二月二十三日)です。
石井氏は、父親が突然解雇され、住んでいるアパートの家賃のめども立たず学費の支払いが絶望的になり自主退学を余儀なくされた実態などを紹介。「高校教育を受けたい子どもたちにそれを保障するのは政府の責任だ」と迫りました。河村建夫官房長官は、「家庭の経済状況で就学の機会が失われることは何としても避けなければいけない」と答弁しました。
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高橋ちづ子議員は、総務省が作成した「公立病院改革のガイドライン」が、地域医療の崩壊に拍車をかけている実態を示し、「義務なのか」と追及(同二十日)。鳩山邦夫総務相に義務でないことを認めさせました。
また高橋氏は、病院が有床診療所に変えられると、医療機関に支払われる診療報酬点数が下げられるため、すぐに「無床化」されてしまう問題で是正を求めました。舛添厚労相は、「実情を考えながら、診療報酬改定時に正当な評価ができるようにしていきたい」と答えました。高橋氏の質問に、現地からは「実態を具体的に取り上げてくれてありがたかった」との声が上がりました。
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塩川てつや議員は、日系ブラジル人など定住外国人が二重、三重に差別され虐げられている実態を告発し、改善を求めました(同二十五日)。
塩川氏は、派遣、請負などで働いてきた外国人が真っ先に解雇されワーキングプア、ホームレス状態になっているとし、直ちに生活就労実態調査をするよう要求。舛添厚労相は、「少なくとも(全国で年度末までに)五千六百人の外国人が失業することになる。全体像をつかむ検討をする」と答えました。
塩川氏は、今問題になっている「かんぽの宿」など郵政民営化での国民の資産の切り売りについても追及(同二十四、二十六日、総務委)し、問題の大本には民営化があると指摘。「見直しというなら、郵政民営化を一から見直すべきだ」と主張しました。
雇用 派遣切りストップに道
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「年越し派遣村」からのデモで始まった通常国会。三月までに職を失う非正規労働者が十五万人以上にのぼるなど深刻さを増す雇用破壊をどうやめさせるか―今国会に課せられた大きな課題です。
日本共産党の志位和夫委員長(一月三十日)と市田忠義書記局長(二月二日)は、衆参本会議の代表質問で、雇用をめぐる事態を「政治災害だ」と指摘。麻生太郎首相の責任をただし、政治がとりくむべき三つの仕事((1)職を失った人への住居・生活・再就職支援(2)大企業への監督・指導(3)派遣法の抜本改正)を明らかにしました。
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予算委員会の志位氏の質問(同四日)では、多くの派遣労働者が期間制限を超えて違法に働かされたうえ解雇されている違法状態を告発。「偽装請負」や違法な「クーリング」の場合、派遣期間制限に「通算される」ことを舛添要一厚労相に認めさせ、現行法でも「派遣切り」をやめさせる条件があることを明らかにしました。
志位氏の質問は「豊富な聞き取り調査を踏まえての迫力があった」(「朝日」同五日付社説)とメディアの注目も集め、全国のたたかいを励ましています。
佐々木憲昭議員は、三菱電機で五年以上働きながら解雇された実例を示し、是正を要求。厚労相は「問題があれば、各県の労働局の特別の窓口に飛び込んでほしい」と答弁(同九日)。笠井亮議員は、その後の実態を示し、「派遣労働者からの申告があれば最優先で対応する。法違反があれば、確実に指導・監督を行う」との厚労相答弁を引き出しました(同二十七日)。
また、志位氏は、「雇用破壊」を主導する大企業・財界代表を国会に招致し、集中審議を行うよう提起。市田氏と、こくた恵二国対委員長は各党に国会招致の実現への協力を申し入れました。二月二十四日には、「非正規切り」を主導する自動車業界の代表を招致した参考人質疑という「第一歩」が実現。「雇用を守る企業の社会的責任を果たせ」(笠井氏)と求めました。
日本共産党は引き続き、日本経団連会長やトヨタ、キヤノンなど企業の代表の招致を求めています。
内需拡大 家計応援に予算組替え
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「世界で最初にこの不況から脱出する」と大見えを切った麻生首相。それとは裏腹に、昨年十―十二月期の実質国内総生産(GDP)は、年率換算で12・7%減と主要国の中で最悪の大幅減少です。政府・与党でさえ「内需拡大」を言いだしたなかで、深刻な危機をどう打開するかが論戦では問われました。
衆参の代表質問では、極端に輸出頼みになった日本経済のゆがみをただし、内需主導型経済への抜本的転換を主張。「国民の暮らしと経済を守る防波堤を壊してきた」政治の責任を厳しくただしました。
吉井氏は、労働者や中小企業に犠牲を押し付け、輸出大企業だけが莫大(ばくだい)な利益を上げてきた経済構造そのものを告発。麻生首相も、「最近は目先の利益に偏っている」と認めざるをえませんでした(二月五日)。
内需拡大の具体策についても、こくた氏が「身近な小規模工事は、中小企業の仕事起こしになり、地域の雇用も増える。小規模公共事業への思い切った予算投入を」(同二十四日)と提案しました。
これまでの経済政策の転換で問われたのが、予算案の組み替え案。民主党は、政府案を「欠陥予算」と攻撃しながら、最後まで組み替え案を示せませんでした。これに対し、日本共産党は、予算案の組み替え案をしっかり提案し、日本経済の体質改善の方向を示しました。
政府・与党が税制「改正」法案に盛り込んだ消費税増税方針にも、日本共産党は「低所得者ほど負担が重く、中小業者の経営を破壊する消費税増税は絶対にやるべきではない」(佐々木氏、同二十日の財務金融委)ときっぱり反対。国民の審判もないまま、消費税増税を決めようとする麻生内閣の姿勢を厳しく追及しました。
中小企業 「下請けいじめ」を告発
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「下請け切り」といわれる大企業の横暴―。一方的な単価切り下げや発注の打ち切りなど、中小企業の経営は苦境に立たされています。日本共産党はこの実態を調査に基づいて告発し、政府に改善を迫りました。
吉井英勝議員は、トヨタの孫請けの中小企業が内示で一万個だった発注量を突然七百個に減らされた例を告発。「違法な契約取り消しや変更があれば是正させるべきだ」と追及し、二階俊博経済産業相に「公正取引委員会と連携して対応する」と答えさせました。(二月五日)
笠井氏は、十五万個の受注がゼロになって「このままでは廃業しかない」という東京・大田区の自動車部品の下請け企業の実態を示し、「すべての親事業者への調査を行い、検査官も抜本的に増やすべきだ」と強く要求しました。二階経産相は「十分考慮する」と答えました。(同二十六日)
日本共産党の質問には、「よく実態を調べている。民主党にはできない質問だ」(自民党中堅議員)などの声が上がりました。
自民 民主
党略優先、対立軸なし
政府・与党は、採決前日(二月二十六日)に河村建夫官房長官が追加経済対策が必要と発言するなど予算案の欠陥を自認しながら、「年度内成立」に固執。民主党も、「(予算が通れば)自民党内の政局に発展してくる」(山岡賢次国対委員長、同二十二日)と衆院通過を容認、政局的思惑を真剣な審議の上におく態度を示しました。
「東京」二月二十八日付社説は、「中川昭一前財務相の『もうろう会見』など、政権の自滅に近いミスばかり」、「(民主党も)政局上の思惑で追及そのものも鈍ったのであれば、野党の責務を果たしたことになるだろうか」と指摘しました。
自民・公明は、「派遣切り」規制など雇用破壊を止める施策もなく、労働者派遣法抜本改正にも背を向けています。景気対策では「(消費税増税を)政争の具にしないでやらなきゃいけない」(自民党・野田毅議員、同三日)と内需を冷え込ませる消費税増税の大合唱です。
民主党も、「政府の失政は、定額給付金と消費税の打ち出し方にある」(中川正春議員、同九日)などと指摘するだけで、消費税増税それ自体には反対しませんでした。
平和の問題でも、前原誠司副代表が「制空権、制海権を保っていくためには、それなりの装備をしっかり持たなきゃいけない」と武器・装備の日米共同開発を主張(同二十六日)するなど、憲法の平和原則を踏みにじる姿勢をみせました。