2009年3月17日(火)「しんぶん赤旗」

ソニーは偽装請負認め直接雇用を

労組に入って知った
不当解雇だったんだ

派遣青年21人立ち上がる

長崎


 ソニーセミコンダクタ九州(ソニー長崎・諫早市)で働き、一月末で派遣元のワールドインテック社(W社)を解雇された二十一人の労働者が解雇撤回・補償、直接雇用を求めてたたかいに立ち上がっています。いずれも二十代から三十代前半の青年です。長崎県労連傘下の県一般労組に加入し、ソニー長崎ワールドインテック分会を結成した彼らの思いは―。(組合員の名前は全員仮名)(長崎県・原口一二美)


 「収入がなく、不安でたまらない。明日あさってのことも考えられない。子どもを幼稚園に行かせられなくなったら子どもに申し訳ない」と最初の会社との団体交渉の席で柳田真さん(29)は涙ながらに訴えました。

イブに突然…

 柳田さんには専業主婦の妻、五歳と二歳になる子どもがいます。解雇を告げられたのは昨年十二月二十四日、クリスマスイブです。突然の解雇通告に「なぜ、自分が」とあぜんとしました。ソニーで働き始めて約六年。「解雇されるとは最後まで思っていなかった」と悔しさをにじませます。

 団交後、「最後までがんばろう」と一人ひとりと握手していたのは佐久隆太さん(29)です。二〇〇〇年、「ソニーは安定しているから」と職業安定所を通じ、派遣会社のアクティスに準社員として入社。以来ソニーで機械のオペレーターとして八年二カ月働いてきました。この間、派遣元はアクティスからコラボレート、W社と変わりました。

 ソニーは昨年九月、老朽化などを理由に佐久さんたちが働くラインを閉鎖することをすでに発表していました。佐久さんは、W社の「次の仕事はあるから」との言葉に「全く心配していなかった」と話します。

 ソニーは、ライン閉鎖決定から徐々に人員を削減。残っていたのはソニーがスキル(技術)が高いと認めた労働者たちでした。W社は「クローズ(閉鎖)」を理由に、この労働者たちをライン丸ごと解雇したのです。

相談きっかけ

 これまで、言葉でしか知らなかった「労働組合」。一人の青年が県労連(長崎県労働組合総連合)に相談したのがきっかけでした。W社では青年たちは全員、期間の定めのない常用労働者(正社員)でした。県労連で初めて、この解雇が「整理解雇の四要件」((1)人員削減の必要性(2)解雇回避の努力(3)人選の合理性(4)労働者との説明協議義務)を満たさない不当解雇であることを知ったのです。

 「組合に入って不当解雇だと知り、ショックを受けました。これまで知識がなかった。泣き寝入りしたくありません」と話す柳田さん。もの静かな彼ですが「解雇される理由はない」とはっきり話します。

 全国労働組合総連合、県労連の支援を受け、柳田さんらは団交で、会社が「整理解雇の四要件」を満たしていないことを追及。会社は、希望退職を募らなかったことなど「四要件」を一部満たしていないことを認めつつも、「責任逃れ」に終始しました。

 W社が株主配当をこれまでどおり維持しながら解雇補償金を出そうとしないことに怒る佐久さん。「結婚し、子どもが生まれたばかりの人もいる。会社は何も思わないのでしょうか。人間として考えられない」と語り、「会社は『人は財産』と言ってきた。雇用を守らないのならそれはうそになる」と理不尽な態度を批判します。

労働局に申告

 分会は二月二十六日、長崎労働局に、ソニー長崎に対する直接雇用の勧告を求める申告をおこないました。ソニー長崎の業務請負は法律違反の偽装請負であり、実質的にはソニーから仕事の指示を受ける派遣労働だからです。工場ではソニー社員と一緒に働き、「社員から指示をもらって動いていた」と佐久さんは証言します。

 最長三年間の派遣労働の期間制限に違反しており、最も長い組合員は九年六カ月も働いています。

 「ソニーは偽装請負を認め、直接雇用せよ」。組合員が手書きの横断幕をかかげ、ソニーの門前に立ちました。分会長の丸岡雄樹さん(33)は、百人近くの支援者が駆けつけた分会の決起集会で、ソニーの不当性をきびしく告発しました。「ソニーは偽装請負で利益を上げてきた。それなのに犠牲になったのはわたしたちです」



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