2009年3月21日(土)「しんぶん赤旗」
どうみる雇用保険法改正
全労働者へ適用 さらに
高橋議員に聞く
政府提出の雇用保険法改正案が一部修正のうえ、十九日の衆院本会議で全会一致で可決されました。衆院厚生労働委員会で、野党間の共同や与党にも呼びかけて奮闘してきた高橋ちづ子議員に、改正の意味や今後の課題について聞きました。(聞き手 林信誠)
―なぜ改正が必要なのですか?
昨年秋からの深刻な経済不況のなか、派遣切りや雇い止めで大量の失職者が生まれています。これは、派遣労働の原則自由化など労働法制の相次ぐ改悪と大企業の非正規切りを放置している自公政治による政治災害です。また、失業しても八割の人が失業給付を受けられないのが現状です。
ところが、自公政府は、「循環的失業を防止する」という口実で、二〇〇七年に雇用保険法を改悪。「自己都合離職」の場合、それまでは「六カ月以上」の保険料納付だった受給要件を、「過去一年以上」に引き上げました。
これでは派遣労働者の多くが雇用保険の適用要件や受給要件を満たせず、しかも契約期間満了での「雇い止め」は「自己都合離職」扱いとなり、過去一年以上の納付という厳しい条件が課されます。
そのため、雇用保険制度が機能不全に陥っている実態への国民の批判とたたかいが、政府に改正案を出させたのです。
―どう改正されたのですか?
6カ月に緩和
日本共産党は、昨年十一月に発表した緊急経済提言などで、六兆円を超える積立金を活用し、未加入者も含む全失業者に雇用保険による支援がゆきわたるよう、制度の抜本改正を主張してきました。
今回の改正案では、期間満了による「雇い止め」の場合でも、〇七年の改悪後の「過去一年以上」の保険料納付という失業給付要件を、過去六カ月の納付に緩和することなどが盛り込まれました。
改正案では「自己都合」離職の要件は改められませんでしたが、実際は会社から退職を強要されるなど、実質的な「会社都合」が多いのが実態です。私は委員会で「退職理由」による給付要件の差別はおかしいと繰り返し主張しました。その結果、付帯決議には「実態を把握して適切な対応をおこなうこと」が明記されました。
年度末に発効
当初、政府案では四月一日施行としていましたが、それでは年度末の大量の非正規切りで失職する人たちは救われません。わが党は、他の野党との協議や委員会審議で、とにかく今年度末までの成立、発効を強く主張し、それが結局与野党の共通認識となりました。「これで少しでも多くの人を救えるのではないか」というのが、党派を超えた思いです。
―今後の課題は?
付帯決議は、すべての労働者に雇用保険を適用するよう改めるべきだとしています。そのような抜本的改正からみれば、今回の改正案は不十分ですが、一歩前進といえます。
現状では、失業給付には月二回の求職活動が必要で、就職のあっせんを断れば給付が打ち切られます。年齢制限で面接までたどり着けない人も多いなか、とにかく「早く就職せよ」というやり方は改めるべきです。
労働者派遣法改悪を元に戻し、大企業の首切りをやめさせることは、雇用のセーフティーネットの整備とともに、政治が果たすべき三本柱であり、避けて通れません。
日本共産党は、雇用をめぐる政治の責任を果たすために、付帯決議がめざす雇用保険制度の充実強化の実現と労働者派遣法の抜本改正のために、引き続き力をつくします。