2009年3月21日(土)「しんぶん赤旗」
農林中央金庫の増資をどう考える?
〈問い〉 農林中央金庫が海外投資で損失を出し、都道府県信連やJA(農協)などに1兆9千億円もの緊急増資を求めています。日本共産党はどう考えますか。(山形・一読者)
〈答え〉 農林中央金庫(農林中金)は、農協・漁協・森林組合など農林水産業者の協同組織の金融機関で、これらの組織における金融の円滑化を通して「農林水産業の発展に寄与し、国民経済の発展に資すること」(農林中央金庫法第1条)を目的に設立されています。
農協や漁協の単位組織は、余裕金の3分の2以上を信連または農林中金に預け、信連は余裕金の2分の1以上を農林中金に預けることが定款によって義務づけられ、資金運用に制限が設けられています。その結果、組合員らが預けた貯金80兆円のうち約40兆円が農林中金に集まっています。
資金は2割が貸し付けに、残り8割が有価証券に運用されています。貸し付けのうち、農林漁業者組織向けは6%で、アグリビジネスなど企業主導の農業関連産業が33%、その他の一般企業が61%を占めます。有価証券は68%が海外運用で、日本の農林漁業の発展に活用されているとはいえません。(数字は2008年3月現在)
海外での有価証券は、アメリカのサブプライムローン関連や住宅抵当会社債券の保有が大きな比重を占め、その価値低下によって、評価差額が合わせて1兆9千億円(08年9月)ものマイナスとなっています。ハイリスク・ハイリターン(利ざやも大きいが損失の危険性も高い)運用を積極的に実行し、大きな失敗をしたことになります。
今回の緊急増資は、国際的な機関投資家の一員とされるようになった農林中金が、その穴埋めを会員組織に呼びかけたものです。本来、農漁民のものである預け金の一部を、組合員の了解もなく農林中金の自己資本に組み入れるものです。それが組合員にたいする貸し渋りや、貸しはがしとなって現れないか心配されます。農林中金は、食料自給率の向上、農林水産業の振興、内需の拡大にこそ、その役割を果たすべきです。(本)
〔2009・3・21(土)〕