2009年3月23日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPress
最後の「慰安婦」裁判 26日判決 東京高裁
中国 海南島 原告のアポ(おばあちゃん)訪ね
心伝えきれない…と涙 でも覚悟決まった
最後の「慰安婦」裁判といわれる中国・海南島戦時性暴力被害訴訟。26日、東京高裁で判決が言い渡されます。裁判を支援する「ハイナンNET」のメンバー、20代の女性5人が、判決を前に海南島の原告らを訪ねました。彼女たちが現地で、見て、触れて、感じたものは―。(栗原千鶴)
20代の女性5人
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メンバーは原告のことを、親しみを込めて「アポ」(「おばあちゃん」の意味)と呼びます。海南島はマリンスポーツ、ゴルフなどのリゾート地として日本からの旅行客も多い島。アポたちが住んでいるのは、そんなビーチからは想像できないような山の中です。
舗装されていない道路を、何時間もかけてバスやトラックで向かいます。初めて訪問した、まいさん(24)は「ずっとでこぼこ道で移動が大変でした。私たちでもそうなのに、年をとって腰が痛いといっているアポが裁判のために日本に来るのはどれだけ大変か…」と思いをはせます。
訪ねた家々で、アポや家族、近所の人たちと交流しました。一人ひとりの状況は千差万別。これまで裁判の場でしか見たことのなかったアポの生活が、そこにはありました。
被害の後遺症で、自分の子どもを産めなかった人がいたり、幸いにも子どもがもてて、いまは大家族に恵まれていたり。料理でもてなしてくれるアポや、帰り道を心配してくれるアポも。
日本で裁判をしている姿しか知らなかったという、あいさん(23)は、「アポは私たちを歓迎してくれましたが、緊張させて、負担をかけてしまった。それなのに私は自分の心を伝えきれなかった。自分に何ができるのかと考えました」と涙ぐみます。
さおりさん(22)も、現地語が分からず、手を握ることしかできなかったこともあったといいます。「アポの生活と裁判はかけ離れている感じがして、自分たちの支援活動は自己満足なのではないかとも感じました」
旅の途中、そんな思いをみんなで語り合いました。
「5人で一緒に過ごして、いろいろと意見交換ができたのは、貴重な時間でした」という、ふみこさん(28)は、3度目の訪問でした。「アポを何のために訪ねているのか、これまで話せない友達もいました。友達でも難しいのに、『慰安婦』問題? なにそれっていう人に伝えるのはもっと難しい。どう伝えたらいいのか、みんなで見つけていきたい」といいます。
しほさん(26)は6回目の訪問。今回、改めて感じたのはアポ自身が、日常的に発言、発信していくことの難しさでした。「私たちには、集会で発言する機会もあるし、発信する多様な手段があります。積極的に活用して、被害者という一面だけでなく、豊かな気持ちを持っているアポの姿も知らせたい」と語ります。
初めて現地を訪ねた3人も、「考えなくちゃいけないことがたくさんみつかった」(さおりさん)、「あきらめずに考え続けていこうと思った」(あいさん)、「この問題にかかわっていく覚悟が決まった」(まいさん)と、今後への思いを語ります。
海南島戦時性暴力被害訴訟 1939年から45年の間、日本軍が侵略・占領した海南島で性暴力を受けた女性8人が2001年、日本政府に対して謝罪と賠償を求めて東京地裁に提訴。06年に東京地裁は、被害事実は認めたものの請求を棄却。原告側が控訴し、26日に東京高裁で判決が言い渡されます。
提訴から8年 早期解決が必要
日本軍「慰安婦」問題は2007年以降、発展がありました。米国、オランダ、カナダ、EU、韓国、台湾などの議会で、日本政府に対して早期解決を求める決議があがり、国連人権委員会も勧告を出しました。日本でも札幌市、兵庫県宝塚市、東京都清瀬市で「政府の誠実な対応を求める」意見書が採択されています。
「ハイナンNET」の女性(33)は「提訴から8年がたち、その間に2人の原告が亡くなりました。原告はいまでも悪夢を見るなど苦しんでおり、一刻も早い解決が必要です。東京高裁では、原告が受けた性暴力は、人格までも変えてしまう重大な人権侵害だったと訴えてきました。事実をしっかり受け止めた判決を期待します」と語ります。
26日は原告団の報告集会が、東京都千代田区のエデュカス東京(全国教育文化会館)で、午後6時半から開催されます。
最後の「慰安婦」裁判
1991年8月、韓国の日本軍「慰安婦」だった金学順さんが実名を公表しました。同年12月、ほかの被害者とともに日本政府に賠償を求めて東京地裁に提訴。以後、韓国、フィリピン、台湾、中国、オランダ、在日韓国人などの被害者が、次々と日本政府に対し「謝罪と補償」を求めて提訴しました。しかし、裁判所は被害の事実を認めず、また事実を認めても「謝罪と補償」を退けるなどしてきました。現在、行われている「慰安婦」裁判は、この海南島戦時性暴力被害訴訟だけとなりました。被害者が高齢なこともあり、最後の裁判といわれています。
日本の国会では
日本の国会では、2001年から「戦時性的強制被害問題の解決の促進に関する法律案」を野党が共同で参院に提出しています。同法案は、被害者が、尊厳と名誉が著しく害された事実を踏まえて政府による謝罪の意を表明し、問題の解決の促進を図ることなどを目的としています。参院に8回提出されていますが、審議されたのは2度だけ。いずれも案件が審議期間中に議決に至らず、会期の終了とともに廃案となりました。
お悩みHunter
結婚したい私、彼には夢があって
Q 付き合っている彼は私と同じ年。私は子どももほしいので、すぐに結婚したいのですが、彼はアメリカに行って新しいビジネスをやりたいと言っています。彼としても渡米は年齢的に「最後のチャンス」と思っているようです。一緒についていくべきか、別れるべきか迷っています。(30歳女性)
2人で考え2人でいい選択を
A 彼の行き先が国内ならいざ知らず、アメリカとなると大変悩みますね。知らない土地で生活することを考えると不安も多いと思います。もし一緒に渡米してすぐに子育てが始まったらと考えると、ちゅうちょしますよね。
彼の渡米と、あなたの結婚・出産―。どちらかに譲ればもう一方が先送りになり、いい時期を逃してしまうかもしれない。そんな不安もあるのでしょう。
しかし、二人の人間が付き合っていれば大なり小なりそうした譲り合いはあるものだと思います。
彼とはどこまで話し合っているのでしょうか。やはり一度きちんと自分の意思を彼に伝えたほうがいいと思います。ひとりだけで考えてたら、どうしたって自分を取るか相手を取るかの二者択一になってしまいます。
せっかく結婚まで考えているパートナーではないですか。お互いの意思を尊重しあいながら、二人セットで考えたいい選択を見つけてほしいと思います。
たとえ、どちらかが待たなければならないとしても、二人で出した答えですから納得できるのではないでしょうか。
また、年齢のことをいえば、可能性が残されている限り、たとえ困難だとしても何かをするのに遅すぎるということはありません。
彼と話し合うなかでいっそう固いきずなが生まれると思います。いい答えが見つかることを願っています。
第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん
東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。
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