2009年3月23日(月)「しんぶん赤旗」
公的助成充実に背をむける政府
辻 慎一
石井衆院議員の質問主意書への答弁
日本共産党の石井郁子衆院議員が三日、「芸術・文化活動への公的助成制度に関する質問主意書」を提出したのにたいし、政府から十三日、答弁書が送付されました。石井議員の質問は、景気悪化のもとでますます改善・充実が求められている芸術団体への公的助成について、芸術団体の声をもとに、歴史的経緯にも踏み込んで追及したものです。
「増額」にこたえず
第一に、石井議員は、文化庁の重点支援事業が五年間で三割以上の減額になっていることを指摘し、増額を求めました。これにたいし答弁書は、「予算額が減少している」と認めながら、「必要な予算が確保されている」と強弁。芸術・文化への支援に冷たい姿勢を示しました。
第二に、石井議員は、文化庁の重点支援が団体の活動を三年継続で支援するものだったのが、二〇〇五年度に突如、単年度の個別公演ごとの採択へ変更になった理由を問いただし、元に戻すことを求めました。
これにたいして、政府は、二〇〇四年二月に文化審議会文化政策部会が発表した「今後の舞台芸術創造活動の支援方策について(提言)」をその理由にあげています。しかし、同提言は、「舞台芸術創造活動」は「単年度での成果を求めることが適当でないものが多い」とのべ、中長期的観点から支援の充実を求めたものでした。政府・文化庁の答弁は、提言をねじまげるもので看過できません。
第三に、石井議員は、「芸術家会議」が昨年十一月に発表した文書で例示したように、現在の助成方式が「自己負担金」という負担を求めるため、芸術団体が「赤字」を累積することになっていることを明らかにしました。諸外国にはない方式で、芸術団体へのアンケートでも一番の問題点になっていることを指摘し、改善を求めました。
ところが、政府は、具体的な検討ぬきに、「『「赤字」を累積させる』ものではない」、「公平かつ効率的に行うために必要」などと開き直り、「諸外国における芸術文化に係(かかわ)る支援の詳細については把握していない」という不見識な態度を示しています。
答弁書のこうした内容は、芸術団体の切実な願いに背を向けるものといわざるを得ません。
「前払い」は「検討」
第四に、石井議員は、事前の制作費用のために公的助成の一定額を「前払い」する制度の導入を求めました。この点では答弁は、「引き続き検討すべき課題である」とし、文部科学省の所管する補助金でも「事業が終了する前に当該補助金を支払った例はある」と認めました。芸術団体が制作資金を確保することはますます困難になっており、すみやかに検討し改善することが求められます。
最後に、石井議員は、来年度文化庁予算案において、文化庁と日本芸術文化振興会の事業が「一元化」されることにともなって、作品選定で政府の関与が強まる懸念が出されていることを指摘し、芸文振の独立性の保持と専門家による採択を維持することを求めました。この点については、「今後とも、専門家の意見を踏まえておこなわれる必要がある」と答えています。
公的助成の改善・充実にむけて、運動のいっそうの強化が求められています。
(党学術・文化委員会事務局次長)
*質問主意書と答弁書は、衆議院のウェブサイトから検索できます。(http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_shitsumon.htm)