2009年3月27日(金)「しんぶん赤旗」

主張

水俣病特措法案

被害者の切り捨てを許さない


 自民・公明の与党が国会に提出した水俣病問題に関する「特別措置法案」に患者諸団体が猛反発し、撤回を強く要求しています。

 水俣病が公式に確認されてから五十三年もたつというのに、いまだに多くの被害者が救済されないままです。政府が厳しすぎる認定基準に固執し、被害者救済を怠ってきたからです。与党は政府の対策から取り残された被害者の救済のためといいますが、法案の中身は多くの被害者を切り捨て、加害企業を免罪するのが主眼の悪法であることは明白です。

チッソの免罪がねらい

 公害健康被害補償法にもとづいて水俣病の認定を申請している被害者だけでも二月現在六千三百十六人です。水俣病関西訴訟で水俣病の発生と拡大の責任がチッソだけでなく国と熊本県にもあると断罪した二〇〇四年十月の最高裁判決をうけて、認定申請する被害者が増えた結果です。しかし今でも声をあげられない被害者もいます。そうした人々を含めてすべての被害者を救済することが政治の役割です。与党案は「あたう限り」というだけで最後の一人まで救済することを目標にしていません。被害者救済の名に値するものでないことは明らかです。

 重大なのは与党案が、加害企業チッソと国、県、とりわけ国の加害責任とそれにもとづく補償という根本問題を不問にしていることです。この根本が抜け落ちているために、チッソから事業収益をあげる新会社を「分社化」し、チッソ本体は支払い能力の範囲でしか責任を負わない内容になっています。これはチッソの社会的・地域的な責任を免罪するものであり、患者諸団体が怒るのは当然です。

 被害者救済の道をとざすやり口は露骨です。認定対象を「四肢末梢(まっしょう)優位の感覚障害」(手足の感覚障害)者にしぼったうえ、裁判に訴える者を「救済措置の対象にしない」と明記しています。憲法が保障する権利さえ認めないのです。許されるはずはありません。

 しかも法案は、「三年以内を目途に救済措置の対象者を確定」し、公害健康被害補償法にもとづく地域指定も解除すると明記しています。水俣病問題の解決に不可欠な被害実態は政府が調査を拒絶しているため、いまだにわかっていません。日本共産党の市田忠義参議院議員が被害実態の調査を要求しても斉藤鉄夫環境相(公明党)は「困難」(十七日参院環境委員会)と拒否するばかりでした。被害実態もわからず、幕引きをはかるのは道理にもあいません。

 大量の被害者切り捨てを狙う与党の「特別措置法案」では水俣病被害者は救済できません。廃案に追い込むしかありません。

解決のための抜本対策

 最高裁判決にもとづき、加害企業、国、熊本県の責任で被害者救済にあたることこそ重要です。日本共産党国会議員団は水俣病問題の真の解決のため、四つの提案を発表しています。(1)地域住民の健康調査を行い被害の実相を明らかにする、(2)被害者切り捨ての国の認定基準を見直す、(3)最高裁判決をふまえて司法救済システムを確立する、(4)国の責任で、期限を設けず被害者をすべて救済する恒久的な救済策を策定する。

 こうした内容による解決をめざし、日本共産党は被害者とともに全力をあげます。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp