2009年3月30日(月)「しんぶん赤旗」
NHK「日曜討論」での
市田書記局長の発言
二十九日放映されたNHK「日曜討論」での、日本共産党の市田忠義書記局長の発言を詳報します。
西松違法献金事件――小沢氏は偽装献金の疑惑を説明していない、自民も批判する資格なし
西松建設の違法献金事件での小沢一郎・民主党代表の秘書起訴について、同党の鳩山由紀夫幹事長が「政治とカネの問題が二度と党内から起こらない体質をつくっていかないといけない」と述べる一方、報道批判を展開。市田氏は、これに対して、次のように発言しました。
市田 (小沢氏秘書の起訴事実は)単なる実務上の記載のミス、形式犯ではない。西松建設から長期にわたって多額の献金を受けていたことを国民の目から覆い隠すためにやった行為ではないかという疑いで起訴されたという点では、大変重大な問題です。この起訴事実について、この間の(小沢氏の)記者会見では一切、具体的な根拠をあげた説明はありませんでした。
政治資金規正法の立法の趣旨は、政官財の癒着や政治腐敗を防止するために、政治資金の収支を公開することによって「不断に国民の批判と監視のもとにおく」と(いうことです)。ところが、本来は西松建設からの献金であったにもかかわらず、ダミー(隠れみの)団体を通して献金を受けたかのように偽装していたのではないか。きちんとした説明が果たされていないし、率直にいって、民主党自身も「小沢さんを信じる」というだけで、党としての自浄作用を発揮されていない。公共事業受注企業から献金は受けないという法案まで出し、マニフェスト(政権公約)にも掲げられていたのを党首自らが破ったことについて、自浄作用を発揮すべきです。
市田氏の発言を受け、各党の自浄作用が問われ、鳩山氏も「小沢代表の説明責任が国民の目から見ても十分に果たされていない部分もある」と発言。自民党の細田博之幹事長は、同党政治家の偽装献金疑惑を棚にあげ、「(小沢氏のケースは)悪質な偽装献金だ」と批判しました。司会の影山日出夫氏は「国会で疑惑追及の機能が果たされていないのではないか」と問いかけました。
市田 おっしゃるとおりです。言葉は悪いかもしれないが、お互いにすねに傷をもっているのですから、相手を追及すれば、「あなたのところもそういう問題があるじゃないか」ということ(になる)。私たちは国会でこの問題を正面から取り上げて追及しましたが、これだけ金権腐敗政治が大問題になりながら、まともに議論が行われていないことは、政治的な退廃のきわみといわれてもしかたがないほどの重大問題だと(思います)。
自民党について言いたいのは、二階経産相の場合も、ダミー団体からの献金という点では、小沢代表のケースとまったく同じなんです。(ところが)麻生首相を国会で追及しましたら、「個別の事案には答えられない」とおっしゃった。個別の事案どころか、自分が任命した大臣のことですし、自民党自身も(政治資金団体の)国民政治協会がダミー団体から献金を受けられていたという事実もある。自浄作用をきちんと発揮されるべきで、民主党を批判されているが、私は「目くそ鼻くそを笑う」たぐいの問題だと(思います)。
国民から政治不信を抱かれないように、国会で、法的な問題と同時に道義的、政治的責任、わいろ性を帯びていないのかどうか、国民の税金が還流した疑いもあるわけで、正面から問題にすべきだと思います。
企業・団体献金――いっさい禁止を、個人献金貫くことはその気になればできる
細田氏は「公開のもとに(企業献金を含め)浄財を集める制度はどこの国にもある」などと企業献金を擁護。市田氏は次のように発言しました。
市田 企業・団体献金は、一切禁止すべきだと思います。企業は営利団体で、利潤追求が目的ですから、見返りを期待しないでお金を出すことはあり得ない。もしそういうことをやれば、商法上の背任行為になる。現行の政治資金規正法は、政党本部と政党支部には企業は献金してもいい、それ以外はだめだと(なっている)。しかし、政党支部は事実上、政治家個人への献金の隠れみのに使われているのがいまの状況です。もともと細川内閣のときに、企業献金は本来禁止すべきだが、すぐにはできないので、将来、できるだけ早く企業・団体献金は禁止する、そのかわりに政党助成金を導入するというのが名目だったんです。ところが企業・団体献金はなくならないばかりか、貴重な国民の税金である政党助成金を、制度が始まってから私どもの党以外は総計四千四百億円も受け取っている。与謝野馨財務相は「自ら努力しないで獲得できる政治資金があるのは、政党のある種の堕落を招く」とおっしゃったが、(自民党は)もらい続けている。個人献金で貫くべきで、わが党は党費と個人献金、「赤旗」の収入でやっています。その気になればいくらでもやれるし、法律も変えていくということだと思います。
経済対策――大企業応援か暮らし守るのか、方向性が問題
経済対策について議論となり、市田氏は次のように述べました。
市田 経済対策は必要だと思うんですけれども、金額、規模ではなく、方向性(が大事)だと思うんです。大企業、大資産家を応援するのか、いまの景気悪化から国民の暮らしを守り、家計を温めるのかが問われていると思います。
たとえば、「二百万人の雇用創出」と言われているんですけれども、小泉・竹中路線のとき「五百万人の雇用創出」とうたいあげたが、結局、大量のワーキングプア(働く貧困層)と派遣労働者をつくり出して、「派遣切り」が横行したわけです。いまやるべきは、大企業による雇用破壊を許さないために、内部留保を吐き出させる、雇用を守る社会的責任を果たさせるということです。
社会保障費の抑制路線も変わっていません。その結果、たとえば国民健康保険料が高すぎて払えないという人が四百五十万世帯で二割いる。お医者さんにもかかれない、窓口では全額負担しなければならないという人が百六十万世帯ですから、そういうところをきちんと手当てしていく。介護でも、認定基準をいっそうきついものにしていく状況はきちんとただす。社会保障、雇用に力点をおいた経済対策は当然必要だと思います。
麻生首相が提起している贈与税減税について、影山氏が「お金のある人に限られてきてしまう。イギリスのように消費税を下げるとか選択肢にないのか」と指摘。市田氏は次のように述べました。
市田 影山さんがおっしゃったように、これ(贈与税減税)は富裕層しか恩恵をこうむらないわけです。(〇九年度)本予算をみても証券優遇税制といって、株の取引で利益を得た人の課税は本来20%だったのを10%に下げたのを、再延長です。外国子会社がもうけた利益については無税だ。まさに大企業、大資産家優遇で、しかも税制関連法案の付則では二〇一一年度までに消費税の増税にレールを敷くことまで明記されている。
(新たな経済対策をいうなら)医療、福祉を充実させる。これは、命、暮らしを守ると同時に雇用の場の拡大にもなる。それから中小企業(対策)だと思うんです。従業員の七割は中小企業で働いているが、その中小企業対策費は約千九百億円くらいです。在日米軍への「思いやり予算」よりも少ない。中小企業への支援策を強めるとか、内需拡大、国民の懐を温めることが暮らしを守るうえでも、経済の発展のためにも大事です。経済対策というなら、そういう問題を集中審議をやってということが大事だと思います。
解散・総選挙――解散前に西松疑惑の解明と景気対策の集中審議を
追加経済対策との関連で、解散・総選挙の時期をどう考えるか問われ、市田氏は次のように述べました。
市田 解散をずるずる延ばしにすることはよくないと思います。しかし、少なくとも次の二つのことをやるべきだと思います。西松建設からの違法献金問題、これは司法の手にゆだねるだけでなく、政治的、道義的な責任、わいろ性はなかったのかどうかを含めた参考人招致を含めた集中審議が必要です。二つ目は景気悪化と雇用破壊から暮らしを守るための集中審議を衆参予算委員会の場でやって、日本経団連や財界の代表も参考人招致する。衆院では自動車工業会の代表を呼んでやりましたが、やはり経団連の代表を呼んで集中審議をやり、しかるのちにただちに解散すべきだというのがわが党の立場です。