2009年3月31日(火)「しんぶん赤旗」
参院での共産党の論戦
景気・雇用―切実な声届け
“献金疑惑”―政治責任ただす
二〇〇九年度予算と関連法の成立を受けて、後半国会が始まりました。西松建設疑惑が広がりを見せるなかで進んだ参院審議。「だんまり国会」「低調論戦」といわれるなか、日本共産党はどんな論戦を展開したのか―。予算委員会の論戦を中心に振り返りました。
路頭に迷わせるな
雇用
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日本共産党は、大企業の不当・無法な首切りをやめさせるよう迫るとともに、国会の役割として、日本経団連と大企業の代表の参考人招致や集中審議を求め続けました。
「なんの責任もない労働者を企業の一方的な都合で路頭に迷わせる。こんなことは人道上からいっても絶対に許されない」。市田忠義書記局長は代表質問(二月二日)でこう強調。同時に大企業による中小企業の「仕事切り」を告発し、危機打開の三つの提起((1)下請けいじめの防止(2)仕事おこし(3)貸し渋りをやめる)を行いました。
職を失った人への雇用保険の給付について仁比聡平議員(三月十二日)は、度重なる改悪で雇用保険制度が壊され、「現在では八割近くが受けられない」事態を告発。麻生太郎首相は、「(給付が受けられるのが)25%というのはいかがなものか」と述べざるを得ませんでした。
マツダなどが三年の派遣期間の上限制限をクリアしたように見せかける違法派遣を行っていた問題でも、失業給付すら十分受けられない実態を指摘。舛添要一厚労相に指導を約束させました。
紙智子議員(二十三日)は、全国に約二十万人いる季節労働者への失業給付の改善も必要だと強調しました。「せめて特例一時金を(四十日から)五十日分に戻すべきだ」と迫り、厚労相から「検討する」との答弁を引き出しました。
小池晃議員(二十四日、厚労委)は、人材派遣会社「シーテック」の事実上の内定取り消し問題を追及。東京新聞(二十七日付)は、「就職戦線異常だらけ」と、この質問に注目し、特集の中で小池氏のインタビューを掲載しました。
正面から違法献金追及
西松マネー
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西松建設からダミー(隠れみの)団体を通じて献金を受け取っていたとの違法献金疑惑。自浄努力が問われている自民・民主両党がお互いの疑惑を追及せず、「国会が機能を果たしていない」と指摘されるなか、日本共産党は正面から疑惑を追及しました。
追及の口火を切ったのが、テレビ中継もされた小池晃政策委員長の質問(六日)でした。小池氏は、小沢一郎民主党代表が説明責任を果たしていないことや、西松のダミー団体が二階俊博経産相の派閥のパーティー券八百三十八万円分を購入していることを告発。「民主党にも自民党にも自浄能力が問われている。お互いに疑惑にふたをするのは許されない」と追及しました。
「問題の根本にあるのが企業・団体献金だ」と述べ、企業・団体献金の禁止、政党助成金の廃止を迫った質問は、「政党助成金をやめ、企業献金もやめろと論陣をはれる共産党はさすが」など大きな反響を呼びました。
続いて九日には、山下芳生議員が二階氏の疑惑について、麻生太郎首相の認識をただしました。
井上哲士議員は十一日、二階氏と西松ダミー団体が一九九五年から十年以上もつながりがある事実を指摘。また、自民党の志帥会(伊吹派)と宏池会(古賀派)が西松ダミー団体にパーティー券を購入してもらいながら、政治資金収支報告書に未記載だった事実を明らかにしました。この質問は、すべての全国紙が報道しました。
西松建設関係者や自民、民主の政治家を参考人として国会に呼び、集中審議を行うべきだという日本共産党の提起は、テレビ討論でも各党議員も反対できない説得力を持っています。
社会保障改悪責任つく
くらし貧困
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日本共産党は、貧困と格差の深刻な実態を示し、社会保障の制度を壊してきた政治の責任をただしました。
山下芳生議員は、就学援助事業の縮小で、満足な文房具すら買えない状況をぶつけ、「家庭の経済的困窮によって、子どもの発達や成長が阻害されてはならない」と質問(九日)しました。塩谷立文科相は、「しっかり対応していく」と答弁。その翌日、文科省は年度途中でも就学援助を認定するよう求める改善通知を各都道府県の教育委員会に出しました。
小池議員は、介護保険制度で四月から認定基準を厳しくする新しい方式を導入することについて、「寝たきりの人から介護を奪うことをするな」と追及(十八日)。舛添厚労相は「意見もたまわり改善の努力を続ける」と答えました。
紙議員は、障害者自立支援法によって生きるために必要な支援に「応益負担」を迫られる障害者の悔しさを切々と紹介し、「応益負担」の撤回を求めました(二十三日)。後期高齢者医療制度の廃止を正面から要求したのは仁比聡平議員(二十六日)。「年齢を重ねただけで、無理やり『うば捨て山』に囲い込む、その骨格ゆえに理不尽な事態が次々と噴出しつづける。きっぱり廃止すべきだ」と舛添厚労相を追及。「廃止の選択肢はない」と継続に固執。
一方、高齢者からの保険証取り上げ中止を求めた小池議員の追及に、舛添厚労相は「しゃくし定規に冷たい扱いはしない」と答えました(十七日)。
増税のレールを敷くな
消費税
二〇一一年度までに消費税増税法案を成立させる方針を盛り込んだ〇九年度税制「改正」法案が審議された財政金融委員会で、大門実紀史議員は「増税のレールを敷くことは到底許されない」と正面からただしました。(二十七日)
大門議員は、低所得者ほど重い負担を強いられることになる消費税の逆進性の問題を繰り返し追及。“消費税の社会保障財源化によって逆進性はなくなる”とする政府の見解に対して、「社会保障のもつ所得再分配効果をむしろ押し下げるだけだ」と反論しました。
民主党は同法案の二十七日の採決を早くから自民・公明両党と合意し、消費税増税のレールを敷くことに事実上、手を貸しました。大門議員は「消費税増税は深刻化する貧困と格差をいっそう広げる」ときっぱり主張しました。
「米兵住宅に税投入」反響
グアム移転
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井上議員は、在沖縄米海兵隊のグアム「移転」計画で、寝室四部屋・バスルーム二つという豪華米兵家族住宅などが、日本の税金を投じてグアムに造られる可能性があることを明らかにし、反響を呼びました(十九日)。
井上議員が示した米国防総省作成の「統一施設基準」では、家族住宅の広さなどを細かく規定し、二等兵でも百二十五平方メートル以上、大佐では二百三十四平方メートルなどとしています。
日本の庶民の住宅と比べると破格の広さ。委員会室に驚きの声があがりました。
井上議員は、グアム移転で日本側が約六千五百億円の財政負担をすることを告発。「日本では『派遣切り』にあい、住まいを失う人が大量に出ている。このような税金の使い方は許されない」とただしました。
わずか五分間の質問でしたが、「テレビで質問を見た。その通りだ。米軍に一銭も払う必要はない」「国民の税金を使うなんて許せない。短い時間のなかで、大変分かりやすい質問だった」などの声が寄せられました。
居直りを封じた決定打
副大臣辞任
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株の市場外取引で約六億円も売却していたことが大問題になり辞任した平田耕一前財務副大臣(自民党)。同氏の辞任の流れを決定づけたのは、二十六日の財政金融委員会での大門実紀史議員の質問でした。
大門議員は、経済官庁の副大臣として市場の公平性を害する株取引を行ったという認識があるかと追及。「副大臣として不適格だ」として即刻辞任することを求めました。
大門議員が「財務副大臣に重大な疑惑があるもとで、税制『改正』法案などの審議はできない」とただすと、それまで辞任を求めていなかった民主党も「審議できない」と強硬な態度に転換。
「問題ない」と居直っていた平田氏も辞任せざるを得なくなりました。民主党からは、「大門さんにいい質問をしてもらった」との声があがりました。
水俣病、全被害者の救済を
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水俣病の患者・被害者を大量に切り捨てる加害企業の救済法だ―。市田書記局長は十七日の環境委員会で、自民・公明両党提案の「特別措置法案」を厳しく批判しました。同委員会で斉藤鉄夫環境相も、救済されない被害者が大量に出ることを認めました。
日本共産党国会議員団は二十三日、与党「特別措置法案」の撤回、すべての水俣病被害者の救済を求める提言を発表。その実現に全力をあげています。
農業に市場原理導入するな
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農業に「市場原理」導入を持ち込むべきでない―。紙議員は、政府の「農政改革関係閣僚会合」の助言者に、農業への市場原理導入などを主張する大泉一貫宮城大学大学院教授が就任している事実を追及しました。(十日)
紙議員は、一握りの大規模営農中心の農業では、農業の多面的機能の発展にはつながらず、小規模営農に離農を迫るだけで、食の安全や農地面積確保、食料自給率の向上にもつながらないと批判しました。
ほかにもこんな成果が
自衛隊幕僚学校「歴史観」講座を中止
井上議員が、統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座の廃止を要求。浜田靖一防衛相は、4月1日からの講座を実施しないと表明(17日)。
自営業者の家族従業員の給与検討
大門議員が、中小企業の家族従業員の給与を必要経費と認めない所得税法第56条の見直しを要求。与謝野馨財務相は、「研究してみる」と答弁(24日)。
カビ毒米販売の撤回
紙議員は、猛毒アフラトキシンに汚染された政府保有輸入米を飼料用に販売するとした新方針の撤回を要求。石破茂農水相は、「エサ用としても販売しない」と答弁(24日)。