2009年4月4日(土)「しんぶん赤旗」

総務相

日本郵政に改善命令

「かんぽの宿」入札 不透明


 鳩山邦夫総務相は三日、日本郵政の西川善文社長を総務省に呼び、保養・宿泊施設「かんぽの宿」の入札手続きが不公平・不透明だったなどとして、日本郵政株式会社法にもとづき業務改善命令を出しました。民営化した同社への業務改善命令は初めて。西川社長は「重く受け止め、きちんと対応したい」と答えました。


 日本郵政は、昨年四月、「かんぽの宿」六十九施設と首都圏の九社宅などの譲渡先公募を開始。国内外の投資ファンドやリゾート会社など二十七社が応じましたが、二度の競争入札を経て、昨年十二月二十六日、オリックス不動産への七十九施設の一括譲渡(売却)が決まりました。

 しかし、オリックスグループの宮内義彦最高経営責任者が、「民間開放」の旗振り役だったことから、国民の批判が噴出、売却契約が白紙となりました。


解説

民営化の見直し必要

 「かんぽの宿」はじめ、郵政資産売却をめぐっては、民間企業に安売りされるなど、多くの疑惑、不透明さがつきまとっています。

 旧日本郵政公社は二〇〇四年度から〇六年度にかけて不動産の一括売却(バルクセール)を三回実施。大手不動産会社のリクルートコスモス(現コスモスイニシア)が代表を務める企業グループが三回とも落札していました。このなかには、「一万円」と評価された後、転売され民間旅館となった「かんぽの宿 指宿」が含まれています。

 日本郵政の西川善文社長の出身である三井住友銀行が大株主のキョウデングループ企業は、「かんぽの宿」など八件を取得。約三百四十億円かけて建設されたのに、売却価格は三十分の一以下の約十一億円でした。

 資産売却を検証するために日本郵政内に設置された「不動産売却に関する第三者委員会」の事務局責任者には、三井住友グループ出身者が就任しています。

 同じく、日本郵政の不動産売却の責任者は、売却先のリクルートグループや、オリックスと密接に関係する不動産会社の元常務だったことも本紙の調べで分かっています。

 日本だけでなく、アメリカの金融資本も登場しました。施設の一括売却にあたり財務アドバイザーに起用されたのは、メリルリンチ日本証券。オリックス不動産への譲渡完了後に最低六億円の成功報酬を支払う契約が結ばれていました。大阪府の「近畿郵政レクセンター」跡地売却では、米国の投資会社モルガン・スタンレーグループの傘下にあった不動産会社が登場します。

 「官から民へ」の旗振り役として、こうした郵政民営化をすすめた政府の「総合規制改革会議」の議長が、オリックスグループの総帥、宮内義彦最高経営責任者であり、リクルートの河野栄子特別顧問もメンバーでした。

 国民の共有財産に内外の金融資本、不動産業者などが群がった構図が浮き彫りになっています。不透明な資産売却の全容解明とともに、民営化そのものの抜本的見直しが必要です。(藤沢忠明)


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