2009年4月8日(水)「しんぶん赤旗」
温室ガス
20事業所、総量の2割
大排出源への対策急務
企業(事業所)別の日本の温室効果ガスのCO2排出実態(2007年度)は、ごく限られた電力・製鉄に排出源の集中がより進行していることを浮き彫りにしました。CO2削減を、努力目標にすぎない日本経団連の「自主行動計画」まかせにしてきた政府の責任があらためて問われています。(宇野龍彦)
石炭使用
環境団体・気候ネットワークの分析によると、もっともCO2排出が多かったのは、中部電力の碧南火力発電所(石炭)。ついで、JFEスチール福山(広島県)、同倉敷(岡山県)、新日鉄君津(千葉県)の順。排出上位は、火力発電所と製鉄所が占め、ほとんどが石炭を使用する事業所です。わずか二十事業所で、日本の全排出量の20%を占めていました。(表)
前年より排出量を四倍に増やした東京電力の火力発電所もあります。石炭火力発電所の排出増も目立ちます。
カラクリ
日本の〇七年度の温室効果ガス排出量(CO2など)は、約十三億七千八百万トン。政府は、地球温暖化対策推進法にもとづく排出量公表制度の対象となった約一万五千事業所からの総排出量が、日本全体の約五割(前年比1・2%増)を占めていると発表しました。
ところが、この数字にはカラクリがあります。政府は、発電所から排出されるCO2を、電力使用する工場・オフィス・家庭に振り分けてしまう「間接排出」方式で計算。実際の排出の実態を見えにくくしています。
気候ネットワークが、電力使用者に振り分ける前の「直接排出」方式で計算すると、約一万五千事業所の排出量は、日本全体の七割を占め、しかも前年より5%も増えていました。
日本全体の排出量の50%は、百六十六事業所に集中していました。前年度(二百事業所)に比べても限られた排出源に集中しています。百六十六事業所のうち、化学工業がトクヤマ、昭和電工など二十一事業所、石油精製が新日本石油、コスモ石油など十五事業所、窯業土石が宇部興産、三菱マテリアルなど二十事業所、紙パルプが王子製紙など四事業所。
大幅増に
八十八の火力発電所だけで日本全体の約30%を占めています。十八の製鉄所が同約12%。この二部門で日本全体の半分に迫る勢い。
気候ネットワークによると、発電部門での石炭などの使用増は、電力一キロワット時あたりのCO2排出量を増やします。それは、東京電力で25%、北陸電力で38%増となりました。
国際条約や欧米が採用している「直接排出」方式ではなく「間接排出」方式で計算すると、発電部門に原因があるCO2の排出増が、見かけ上電力使用者側でのCO2排出増となります。たとえ省エネで電力使用量を減らしてもCO2排出は大幅増となるケースも出ているといいます。
実効性は
京都議定書の一九九〇年比6%削減の国際的な責任を果たすためには、CO2を直接大量に排出している百六十六事業所での削減対策こそが必要となっています。政府は、省エネ機器の買い替えなどを温暖化対策の柱の一つとしています。電力、鉄鋼、石油などの産業については、事業者の自主的取り組みにゆだねてきました。二〇〇七年度の排出実態は、根本の発生源対策をおろそかにした省エネ努力では、実効性あるCO2削減につながらないことを示しています。
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