2009年4月8日(水)「しんぶん赤旗」
「政府紙幣構想」をどう考える?
〈問い〉「政府紙幣構想」が議論されています。日本共産党はどう考えますか。(北海道・一読者)
〈答え〉「政府紙幣」は、日本銀行が発行する日本銀行券(日銀券=通貨)ではなく、政府が独自に発行する紙幣です。にわかに注目されているのは、麻生太郎首相に近い菅義偉・自民党選対副委員長らが選挙目当ての景気対策の「財源確保」策として主張し始めたためです。
「政府紙幣」は、かつて明治政府が、戊辰戦争で戦費調達目的で発行した「太政官札」があります。しかし、日銀券の発行(1885年)が始まって以降は、発行例はありません。現在は、コインが市中から日銀に還流してきた場合、政府が日銀に対価を支払って回収しています。仮に「政府紙幣」が発行されたとしても、日銀が日銀券と「政府紙幣」の交換に応じたり、市中で使われずに残ったりして日銀に還流してきた場合は、日銀が政府に「政府紙幣」の回収を求めることになります。このときの対応には、2つのケースが考えられます。
第1は、日銀の要請に応じて、政府が「政府紙幣」を回収するケースです。この場合、政府は「政府紙幣」を回収するための財源を用意しなければならなくなります。この財源は結局、国債発行によってまかなうしかないのが現状です。このケースは、「政府紙幣」=事実上の国債発行だといわれています。
第2は、政府が日銀から引き取らず、日銀に「政府紙幣」を保有させつづけるケースです。この場合、政府は回収のための代金は不要となります。しかし、日銀が、無利息かつ転売不能な政府の債務(事実上の永久無利子国債)を引き受けることになります。また、これは国債の日銀引き受けを禁止している財政法第5条の趣旨に反します。
「政府紙幣」の発行は、円滑な金融調整が阻害され、通貨価値の安定を損ない、ひいては激しいインフレを招く恐れがあります。仮に激しいインフレが起これば、まじめに働いている方やこつこつ貯蓄してきた方の金融資産が目減りすることになります。「政府紙幣」は多くの問題があります。(藤)
〔2009・4・8(水)〕