2009年4月20日(月)「しんぶん赤旗」

主張

要介護認定見直し

破綻した計画は撤回しかない


 厚生労働省が国民の強い反対を押し切って四月から強行した要介護認定制度の見直しが、介護保険の給付費を削減するためだったことが日本共産党の小池晃参院議員の追及で浮き彫りになりました。厚生労働省も、申請者が希望すれば従来どおりの介護を認めるとの経過措置をいいだしています。

 認定制度見直しの道理のなさは明らかです。見直しを「見直す」だけでなく、破綻(はたん)した計画は根本から撤回すべきです。

介護給付を減らすため

 要介護認定制度は、お年寄りが介護保険のサービスを受けようとした場合、「要支援」(1、2)、「要介護」(1から5)のどの段階に当てはまるかを認定するものです。利用できる介護サービスの上限がきまります。

 四月からの認定制度の変更では、コンピューターによる一次判定での調査項目を減らし、「要介護1」と「要支援2」を振り分ける判定をコンピューターに任せ、調査員のテキストも改定しました。たとえば「座位の保持」は、これまで、いすやベッドに足を下げて「十分程度」座れるのが目安だったのに、どんな姿勢でも「一分程度」座れれば「できる」に分類されることになります。

 なぜ変更するのか―厚生労働省の説明は、地域ごとの「ばらつき」をなくすためで、介護給付費の削減の意図はないということでした。しかし、小池議員が国会で突きつけたのは、厚生労働省が内部資料で、「介護報酬の改定」のためには「さらなる財源確保策が必要」としていることです。「認定の適正化」を財源確保のための給付費「縮減」メニューに並べていました。

 重大なのは、厚生労働省もこの資料の存在を認めざるを得なかったことです。小池議員の指摘にこたえた説明文書(十三日付)で、「議論のための材料として作成した資料」だと認めました。

 内部資料は、一次判定で介護の必要なしとされた人が、認定審査会の二次判定で重度に変更される割合を10%減らすだけで約八十四億円、「認定の適正化」など「介護給付の適正化」をすれば二百億―三百億円縮減できると具体的です。「要支援2」と「要介護1」の割合を5対5からおおむね7対3へと軽度を増やす方法も明記していました。

 厚生労働省はなおも「実現可能性を問わず」検討しただけなどと言い訳をしていますが、実際に資料に書かれていたことが実行されているのですから、言い逃れは通用しません。認定制度見直しの根拠が説明できなくなっていることを、率直に認めるべきです。

社会保障費削減の撤回を

 今回の要介護認定方式の変更で低く判定される人が多いことは、厚生労働省の事前の調査でも明らかでした。だからこそ、厚生労働省も変更が実施される直前の三月に一部見直し、さらに四月になってからは新しい認定でこれまでと違う判定が出ても申請すれば同じサービスを認めると経過措置を決めなければならなかったのです。

 給付費削減が狙いの要介護認定制度の変更は、介護保険をますます使いにくくするだけです。背景には社会保障予算の削減路線があります。削減路線を根本から転換し、認定ではなく現場の専門家の判断で必要な介護を提供できる制度への抜本改正が急務です。



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