2009年4月23日(木)「しんぶん赤旗」
高速増殖炉「もんじゅ」
安全管理穴だらけ
原子力機構 問題多発で報告書
運転再開を目指している高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)でナトリウム漏れ検出器の取り付けミスなどのトラブルが多発していることに関連して二十二日、経済産業省の原子力安全・保安部会小委員会に日本原子力研究開発機構の報告書が提出されました。報告書は、トラブル多発の「根本原因」に、組織として安全意識が形骸(けいがい)化していることをあげており、運転再開への批判が強まることは必至です。
報告書は、「組織要因の分析」として、「もんじゅ」の停止状態が長く続き、維持管理費が大幅に削減された事情をあげたうえで、「管理職をはじめとする職員が、プロジェクトの意義と重要性についての自覚が十分でなかった」としています。
内部で安全をチェックする「原子炉等安全審査委員会」の運営が形式化、形骸化し、技術的な審議が十分に行われず、結果の権威付けだけになったとしています。また、「問題が生じたことへの対応はなされるが、問題の発生を予防する取り組みが浅い傾向がある」と指摘しています。
「正確な情報を適時に機構外に提供することの重要性の認識が足りなかった」「外部に誤った情報を公表した場合、社会からの信頼を失ってしまうという認識が低かった」とも記しています。
解説
旧動燃と体質同じ
一九九五年、高速増殖炉「もんじゅ」がナトリウム漏れ・火災事故を起こしたときに、「もんじゅ」の開発・運転を行っていたのは、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)でした。動燃はこの事故のとき、事故現場を撮影したビデオを隠し、大きな批判をあびました。
動燃はさらに九七年、茨城県東海村の再処理工場で火災・爆発事故を起こし、このときも事故隠しが大きな問題になりました。
事故・不祥事の続発で動燃の悪名が高くなったために、九八年に名称を核燃料サイクル開発機構(核燃機構)に変え、事業が引き継がれました。さらに二〇〇五年、核燃機構と日本原子力研究所が統合され、原子力研究開発機構が発足しました。
今回、原子力機構が提出した報告書は、安全への意識や外部への情報提供のあり方などが、動燃時代と変わっていないことを示しています。
事故以来、十三年以上運転を停止している「もんじゅ」の開発の意味が薄れ、担当している職員たちの緊張感が薄れていることもうかがえます。
「もんじゅ」は危険性の高いプルトニウムを燃料に使います。事故が示しているように、ナトリウムの取り扱い技術は確立していません。報告書が示すような実態の組織に運転再開をまかすわけにはいきません。
「もんじゅ」には運転停止中でも、年に百億円以上がつぎ込まれています。これ以上無駄遣いを続けないためにも運転再開は中止すべきです。(前田利夫)
「もんじゅ」 プルトニウムを燃料とし、使用した以上のプルトニウムを生み出せるとして開発された原子炉(高速増殖炉)。“原発先進国”がこぞって開発に取り組みましたが、重大事故が続発し、開発を断念しました。「もんじゅ」も、一九九五年にナトリウム漏れ・火災事故を起こし、運転を停止していますが、国は運転再開を目指しています。
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