2009年4月28日(火)「しんぶん赤旗」
中山氏聴取を強行
憲法審査会規程巡り自公
野党が抗議
小坂憲次衆院議院運営委員長と自民・公明の与党は二十七日の同委員会で、改憲原案を審査する憲法審査会規程の議決をめぐり中山太郎前衆院憲法調査特別委員長(自民党憲法審議会長)からの意見聴取を、野党の反対を押し切って強行しました。日本共産党をはじめ野党各党は、与党による一方的な運営に抗議しました。
中山氏は、「一刻も早く国会に憲法論議の場を」として憲法審査会規程の早期制定を求める一方、「できるだけ広範な会派の賛同のもとに審査会を発足させるよう」にと主張しました。
意見表明した日本共産党の佐々木憲昭議員は、「野党との合意なしに一方的に参考人を呼ぶというやり方は禍根を残す」と批判。「いま国民が求めているのは改憲手続きの整備ではない。貧困と格差が拡大し憲法二五条の生存権が脅かされているという現実をどうするかが当面の最大の課題だ」と述べました。
自民党は「(今日の)意見聴取は審議促進のうえでの一歩だ」と強調し、公明党は「強引だという野党の批判はまったく当たらない。国民投票法施行一年前となり憲法審査会発足は当然」などと述べました。
与党理事は、今後の進め方について自民党と民主党の筆頭理事の間で協議していくとしました。
強行は矛盾深める
「すでに二年間やってきた。一刻も早く、憲法記念日までに審査会規程を議決するという意図でやっている」
衆院議院運営委員会の自民党理事はこう強調し、憲法審査会の早期始動にあくまで固執する姿勢です。
一方、中山太郎前衆院憲法調査特別委員長は二十七日の衆院議運委での意見陳述で「できるだけ広範な会派の賛同のもとに憲法審査会を発足させる」と発言し、民主党を取り込んで進めた方が得策との姿勢を示しました。
しかし、二年前の二〇〇七年四月、改憲手続き法の与党案の採決が、中山氏自身のもとで強行されたという事実も記憶に新しいところです。民主党との「協調」は絶対条件ではありません。
民主党が憲法九条二項改定を方向付ける「憲法提言」をまとめながら(二〇〇五年十月)、改憲問題で自民党との「共同」が崩れたきっかけが、改憲手続き法の与党による単独強行でした。その根本には、小泉「構造改革」による貧困と格差の拡大、米国追随の海外派兵に対する国民的な批判の高まりがあり、何より保守層を含めて露骨な安倍改憲路線への危ぐがありました。また、「九条の会」が全国各地で草の根のたたかいをひろげ、九条擁護の世論を広げました。民主党はこうした世論を前に自民党への「対決」姿勢を強めざるをえなかったのです。
いま麻生・自民党では、北朝鮮のロケット発射を利用して敵基地攻撃論や核武装論まで飛び出し、早期警戒衛星など軍拡も進めようとしています。また、小沢一郎代表の西松違法献金疑惑で民主党の足元がぐらついていることに乗じ、総選挙も意識し改憲論議を強引に進めることで民主党の政党としてのまとまりのなさをあぶりだそうとしています。
しかし、安倍内閣の参院選での惨敗、その後の安倍、福田と二代続けての政権投げ出し、支持率の歴史的低迷に苦しんできた麻生内閣という自民党政治の行き詰まりに変わりはありません。そこに無反省のまま、憲法改定の論議を進めようとすれば、国民との矛盾をさらに激化させるだけです。(中祖寅一)
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