2009年5月5日(火)「しんぶん赤旗」
汚染米 輸入に抜け道
関税低い「米粉調製品」
厚生労働省の各地の検疫所で輸入した「コメの粉」から、カビや農薬など、食品衛生法で禁じられている物質が相次いで見つかっています。「米粉(こめこ)調製品」という名の汚染米の隠れた輸入ルートを探りました。(今田真人)
コメの粉の輸入は、コメ輸入の一形態です。本来、WTO協定による年間約七十七万トンの「ミニマムアクセス米」の枠でしか輸入できません。この枠外でコメの粉を輸入しようとすると、「枠外税率」という高い関税がかかります。
財務省関税局の担当者は「コメの粉の輸入は、ミニマムアクセス米なら輸入価格の25%の関税ですが、枠外なら一キロ当たり三百七十五円の関税がかかる」と説明します。
コメの粉の輸入価格は最近では、一キロ当たり百円前後。ミニマムアクセス米としてなら約二十五円の関税がかかり、そうでないと、三百七十五円の関税がかかるわけです。ところが、“抜け道”がありました。
コメ以外混ぜ
二〇〇八年に食品衛生法違反の「もち米の粉」を輸入し、検疫所から「廃棄、積み戻し(輸入先への返送)等を指示」された新潟市内の輸入業者。資本金五百万円の有限会社です。
登記上の所在地に行くと、そこには有名な大手製菓会社の本社がありました。同製菓会社の広報担当者は「この輸入業者は、うちの社のグループ会社だが、独自の事務所はなく、専任の従業員はいない」と説明します。大手企業の事実上のペーパーカンパニーでした。
同社関係者は「このもち米の粉は、当社の商品の『おかき』などに使う予定でした。ミニマムアクセス米としての輸入ではない。米粉調製品という、コメの粉以外のものを混ぜて輸入している。そうすれば、関税が安いのです」と明かします。
財務省・東京税関の担当者はいいます。
「コメの粉以外のものを15%以上混ぜると、『米粉調製品』として関税の安い輸入品目になる。これを利用する輸入業者は、でんぷんや砂糖を17%程度混ぜるのが一般的です」
WTOに対応
米粉調製品(でんぷんなど、砂糖以外のものを混ぜた場合)の関税は、一キロ当たり輸入価格の16%。砂糖を混ぜた米粉調製品は同23・8%。ミニマムアクセス米の25%よりも低い関税で済みます。しかもミニマムアクセス米と違い、輸入量に上限がありません。
こうした米粉調整品の輸入は、ここ数年は年十万トン前後で推移しています。(グラフ)
米粉調製品の関税が大幅に引き下げられたのは「一九九五年実施のWTO協定に対応し、国内法を改定したから」(財務省関税局)。
米粉調製品によるコメの輸入ルートが、ミニマムアクセス米とともに、日本の「食」の安全を脅かし、米価下落を加速させている実態が浮かび上がりました。
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