2009年5月6日(水)「しんぶん赤旗」
「かんぽ生命」保険金不払い
公社化前も支払いへ
国民の協力を得て解決を
「かんぽ生命保険」(旧簡易生命保険)で百四十万件にのぼる保険金の不払い問題が明らかになり、放置してきた総務省の所管責任が問われています。鳩山邦夫総務相は、公社化以前にさかのぼって支払うことを約束しましたが、一人の被害者も出さない対応が急がれます。(鎌塚由美)
「かんぽ生命」のまとめでは保険金の不払いは、(1)給付金支払いに入院保険金などの特約部分があるのに支払われなかったもの最大八十万件、(2)満期になった保険を請求がないため放置してきたものが六十万件です。
「かんぽ生命」は二〇〇七年から、大量の不払いが生まれている疑いが出てきたため、千二百五十万件を対象に内々に検証作業を進めてきました。しかし、その結果は、一年半がすぎても公表されませんでした。理由は、「問い合わせが殺到するリスクがあり、体制を整えないと混乱が起こる」というものでした。
状況が動くきっかけとなったのは、日本共産党の山下芳生議員が四月七日の参院総務委員会で内部文書をもとにこの問題を取り上げたことでした。
鳩山総務相は、山下氏に「不払い問題をご提起いただき、ありがたかった。先生から先に承って、後から知る形というのは、情けない。反省しなくちゃならん」(四月十六日)と述べる一幕もありました。山下質問後、マスコミも「この約二年間、加入者に対して不払い状況に関する調査の概要も調査内容も説明していないとはどういうことなのか。加入者軽視も甚だしい」(「毎日」四月九日付社説)と指摘しました。
発覚後、総務省は、不払いが確認された契約者に、七月から順次支払いの連絡を開始すると発表(四月十日)。鳩山総務相は、不払いに「時効は適用しない」と述べ、一人残らず支払う姿勢を示しました。
支払い関係書類は、死亡保険金で五年、入院保険金で六年という保存期間のため「書類がないのでは」という不安の声もありました。山下議員の質問に、「かんぽ生命」の山下泉社長は「保存期間後の申し出の可能性に備えるために、マイクロフィルム化して永久保存している」と表明。公社化以前のものも支払い可能であることがわかりました。
転居などで顧客と連絡が取れないケースへの対応が今後の課題です。「かんぽ生命」は昨年、未請求と考えられる十二万一千件に案内を送付しましたが、返送はわずか二万八千件だったといいます。
加入者の請求がないかぎり保険金を支払わなくてもいいという「請求主義」が、膨大な不払いを生む原因となっています。「かんぽ生命」と総務省は、請求待ちに陥らず、広く国民に事態を公表し、国民の協力を得て解決する姿勢を貫くことが求められます。
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かんぽ生命保険 郵政民営化による分社化で二〇〇七年十月に発足した生命保険会社。契約件数は国内最大の五千三百万件。
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