2009年5月9日(土)「しんぶん赤旗」
偽装請負の末 使い捨て
営業黒字のパナソニック
強まる正社員化の声
営業黒字なのに偽装請負など違法を重ねて働かせた末に派遣労働者を使い捨てにしているパナソニック。雇い止めどころか正社員にしなければならない実態が浮かび上がっています。(酒井慎太郎)
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「派遣のときから働いてきたのに、正社員にもされず、闇から闇に葬られました」
プラズマテレビをつくる兵庫県尼崎市のパナソニックプラズマディスプレイ(プラズマ社)の工場で、一月末に期間満了を理由に雇い止めされた契約社員の男性(49)はこう語ります。
二〇〇六年四月、大阪府茨木市の同工場に派遣社員として勤務。偽装請負が発覚し、派遣に切り替えた直後でしたが、まもなく請負に切り替えられました。プラズマ社の社員を請負会社に出向させ、指揮・命令する脱法行為でした。違法を重ねた製造請負大手の「コラボレート」は事業停止命令を受けて撤退しました。
雇い止め強行
これを受けてプラズマ社が同年十一月から直接雇用にした一期生が前出の男性でした。しかし、正社員ではなく最長二年三カ月の契約社員にとどめました。
十二時間勤務の二交代制。月収二十万円。「世界に誇れるパネルを作ろうと一生懸命働きました。きれいなパネルができたときが喜びでした」。三カ月、一年、一年と契約を更新。生産ラインが尼崎に移転してからも働いてきました。電機ユニオン関西に加入し雇用延長や正社員登用を求めましたが、会社は応じず契約満了を理由に雇い止めを強行したのです。
茨木工場で偽装請負から直接雇用されたものの五カ月で雇い止めされた吉岡力さんの事件では、大阪高裁が〇八年四月、「黙示の労働契約」が成立しているとして解雇無効・正社員と認める判決を出しました。違法行為を繰り返すラインで働いていた労働者を、正社員にする義務がプラズマ社にあることは明らかです。
しかも、雇い止めの一方で新たに契約社員を募集。「正社員登用大幅拡大」と銘打ち、JR大阪駅前のビルに面接会場を常設しています。兵庫県からは雇用助成金として〇六年、正社員六人と派遣二百三十六人分の二億四千五百万円を受け取っており、雇用を守る社会的責任が問われます。
前出の男性は「みんなここで働き続けたいと話していました。雇い止めではなく正社員にして責任を果たすべきです」。
違法を重ねて
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パナソニック電工の津工場(三重県津市)で昨年末に雇い止めされた男性(25)は、偽装請負と二重派遣の二重の違法状態で働かされていました。
男性は〇六年九月ごろ、請負A社の契約社員として雇われました。しかし、「B社の社名で働いてもらうよ」と言われ、B社の制服を着て働かされました。しかも現場は、電工社員が直接指揮・命令する偽装請負。A社の約十人を含め複数の請負会社から約四十人が働いていました。
賃金はB社の契約社員より月五万円も安く、月二十三万円。有給休暇もなく、雇用保険と社会保険も、家族がいるこの男性以外は未加入でした。
「『辞めるなら代わりを連れてこい』と脅されていました。大企業の現場が、街ヤクザみたいな企業に支えられていた」
〇七年四月、派遣に切り替えられました。A社から、「別の工場が労働局の是正指導を受けた」と説明されました。しかし、男性が「正社員になれますか」と聞いても、電工の班長は「正社員になる制度も事例もない」といい放ちました。
労組結成して
みえ労連に相談し、昨年八月、同僚らと中勢伊賀自治体一般労組の分会を結成。A社、B社と団体交渉で残業深夜割増賃金や有休などを勝ち取りました。B社は法違反を認めて直接雇用にしたものの、わずか一カ月契約とされ、十二月末で雇い止めされました。
パナソニック電工広報部は、「偽装請負や二重派遣の事実はない。法にもとづき適正に運営している」と説明します。しかし、B社の社長は請負から派遣に変えたことについて、「(電工から)問題になる前にきちんとせよと指示があった」と組合側に明かしています。
「電工の社員とほとんど同じ仕事をしており、正社員に登用すべきだ」と男性。「こんな目に二度とあいたくない。製造現場の派遣労働はなくすべきだし、労働者派遣法を改正してほしい」