2009年5月20日(水)「しんぶん赤旗」
主張
中期目標「+4%」
排出削減に逆行する経団連案
二〇二〇年の日本の温室効果ガス排出削減目標(中期目標)の政府決定が六月に迫っています。その中で、財界の総本山である日本経団連が「4%増」を目標に採用するよう主張しています。排出削減に後ろ向きな財界の立場を浮き彫りにしています。財界寄りの姿勢に終始してきた政府の責任も問われています。
日本の孤立招く
政府は中期目標について、一九九〇年比で(1)「4%増」(2)「1%増―5%減」(3)「7%減」(4)「8―17%減」(5)「15%減」(6)「25%減」の選択肢を示しています。
日本経団連の御手洗冨士夫会長は十一日、最も緩い「一番目が合理的だ」と発言しました。日本経団連が翌日に発表した意見書も、「(1)が最も合理的だ」と主張しました。意見書は「(2)も検討の余地がある」としたものの、欧米が現在の目標を引き上げることなどを前提条件としています。
「4%増」案は、日本の現在の温暖化対策のままで“よい”というものです。世界の流れに逆行することは明白です。
日本経団連は、温暖化防止には「すべての主要排出国が参加する必要がある」(御手洗会長)と強調してきました。しかし、日本経団連の後ろ向き姿勢こそ温暖化対策の国際合意の障害になり、日本の孤立を招きます。
来日したデンマークのヘデゴー気候エネルギー相は十八日、「(『4%増』案は)二十一世紀の世界の状況を考えると、決して成り立つものではない」と日本経団連の姿勢を批判しました。同相は、十二月に開かれる温暖化対策の次期枠組みを決める国連の会議(COP15)で議長を務めます。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、気温上昇を二度以内に抑えるには先進国全体で「25―40%削減」が必要だとしています。欧州連合(EU)は20%、他の先進国が大幅削減に同意する場合には30%削減するとの目標を確認しています。国際合意を得るためにも、日本は野心的な中期目標を掲げるべきです。
日本経団連の主張には、斉藤鉄夫環境相も十二日、「そんな目標を出したら世界の笑いものになる」と述べました。その通りです。しかしそういうなら、斉藤環境相は、「4%増」を選択肢の一つとした政府案自体が「世界の笑いもの」であることも自覚すべきです。
日本は京都議定書で、〇八―一二年度の排出量を九〇年度比で年平均6%削減するよう求められています。しかし、〇七年度の排出量は9・0%も増加しました。ドイツは〇七年に九〇年比で22・4%削減し、21%削減の目標達成にめどをつけています。
大規模事業所で
日本の温室効果ガス総排出量の半分は、火力発電所や製鉄所など、大規模工場の計百六十六の事業所から排出されています(環境市民団体・気候ネットワーク調べ)。
大規模排出源への集中度は年々高まっており、排出量を削減するにはこれら事業所での実効ある対策こそが不可欠です。
それにもかかわらず、政府は温暖化対策を産業界の「自主努力」にまかせてきました。「4%増」案はその立場に立つものです。これでは温暖化対策は進みません。財界に甘い政策を抜本的に転換する必要があります。
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