2009年5月23日(土)「しんぶん赤旗」
「チキンオコワ」に抗菌剤
低関税で輸入 「鶏肉の調製品」
低い関税で輸入できる「調製品」という呼称を使ったコメ輸入が食の安全を脅かしています。その一つが「鶏肉の調製品」で、四月に輸入された同調製品から、食品衛生法で検出されてはならない「抗菌剤」が検出されました。そのほか、今年に入って輸入米からは、相変わらずカビなどの発見が続いています。
年間30万トン超 上限なし
「鶏肉の調製品」は、鶏肉が20%を超えて入っている米飯などのことです。関税は輸入価格の6%(WTO=世界貿易機関=加盟国からの輸入の場合)です。鶏肉が20%以下は「コメの調製品」とよばれ、一キロ当たり三百四十一円の高い関税がかけられます。「鶏肉の調製品」の最近の平均関税額(一キロ二十六円)の約十三倍です。
抗菌剤が検出された「鶏肉の調製品」は、冷凍米飯「チキンオコワ」。輸入したのは、冷凍食品会社アクリフーズ(東京都中央区)です。厚生労働省によると、この米飯から検出されたのは、フラルタドンとフラゾリドンという「合成抗菌剤」。
アクリフーズ社の広報担当者は「この製品は、当社で従来から輸入していたものではなく、新商品開発のためにテスト的に輸入した。検疫所で引っかかったので、全量を輸入元に送り返した」と説明します。
この「鶏肉の調製品」の輸入は、年間三十万トンを超えています。ミニマムアクセス米の輸入上限七十七万トンとは別で、上限はありません。
解説
「食の安全」を脅かす関税逃れ脱法的手法
コメやコメ加工食品の輸入は、WTO協定と食糧法などによって年間約七十七万トン(玄米換算)に制限されています。
ミニマムアクセス米以外でコメ加工食品を輸入しようとすると、一キロ当たり三百四十一円というような高い関税がかけられます。ミニマムアクセス米として「コメの調製品」を輸入すれば、関税は輸入価格の25%。これは、ミニマムアクセス米以外のコメ加工食品の輸入を制限するためです。
ところが「コメの調製品」としてではなく、米飯に鶏肉20%超をまぜて「鶏肉の調製品」として輸入すれば低関税ですみ、この制限に脱法的な穴を開けることになります。
「鶏肉の調製品」の輸入は年間約三十万トン。こうしたコメ輸入が日本の「食の安全」を脅かすだけでなく、米価下落を加速させています。
この脱法的な手法の輸入を含め、コメの輸入は全面的な禁止が必要です。(今田真人)
抗菌剤 細菌の増殖を抑制したり殺したりする働きのある薬剤。天然物質ではない、化学的に合成してつくった抗菌剤を合成抗菌剤とよんでいます。鶏を密飼いすると病気になりやすいので、それを防ぐ目的で使われたと思われます。抗菌剤のフラルタドンとフラゾリドンは、強い発がん物質(遺伝毒性発がん性物質)である可能性を指摘されています。
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