2009年5月30日(土)「しんぶん赤旗」
「ニコニコ生放送」
核兵器廃絶・雇用問題
志位委員長が大いに語る
日本共産党の志位和夫委員長は、二十七日夜、インターネットの動画サイト「ニコニコ動画(ββ)」の「ニコニコ生放送」に出演し、核兵器廃絶、雇用問題という国政の焦眉(しょうび)の課題について大いに語りました。志位氏の出演は三月十二日に次いで二回目。番組タイトルもずばり、「C(志位)リターンズ!」で、司会役の政治ジャーナリスト、角谷浩一氏の質問や、リアルタイムで届く視聴者の意見にも答えました。「延長して〜」のたくさんの書き込みに、番組は予定時間の四十五分間を大きく超えて――。
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冒頭、角谷氏が意見募集のメールアドレスが書かれたボードを掲げました。アドレスの頭には「CGJ」(志位・グッド・ジョブ)の文字。前回出演時に多くの視聴者から書き込まれたもので、すっかり、番組と視聴者の合言葉になっている様子です。
党首討論
全くなかった国民生活の話
最初の話題は、番組の数時間前におこなわれた麻生太郎首相と民主党の鳩山由紀夫代表による党首討論でした。角谷氏が感想を求めたのに対し、志位氏は「やっぱり、国民の皆さんが生活で一番困っている問題、深刻さを増す国民生活の話がなかったですね。雇用の問題、社会保障の問題、税金の問題、それから大問題になっている核兵器の問題、そういう基本の問題が全然、やられていない」とのべました。
北朝鮮核問題
国際社会が一致協力して対応を
そして、党首討論では「情報管理」の議論に終わってしまった北朝鮮の核実験問題では――。
志位 北朝鮮の核兵器開発をいったいどうやってやめさせるのか。私たちは、国際社会が一致協力して対応する、北朝鮮に核兵器を捨てなさいという対応を国連安保理でもきちんとやるという、国際社会の一致した対応が大事だということをまずいいたい。
それから、こういうときこそ、世界中から核兵器をなくす、核保有国が「私たちも捨てるから、あなたのところも捨てなさい」といってこそ、一番強い立場がとれますよね。そういう議論をもっと太くやる必要があると思います。
角谷氏も、「本質論には踏み込めなかった感じがする」「(核廃絶問題という)このことだけでも四十五分間議論することができたのに」と応じました。
核兵器と文明は両立しない日本こそ廃絶の強いメッセージを
核兵器廃絶
米国大統領として国際交渉の呼びかけを
そこで議論は、核兵器廃絶問題そのものに。角谷氏は、アメリカのオバマ大統領が四月五日におこなった「核兵器のない世界」をめざすとした演説をうけ、志位氏が同大統領あてに送った書簡について質問しました。
志位氏は、「演説は歴史的で強い感銘を受けた」とのべ、その意義について、(1)アメリカという最大の核保有国が「核兵器のない世界」を追求すると歴史上初めて宣言した(2)アメリカはかつて核兵器を使用したことのある唯一の国として、(核兵器廃絶に向けて)行動する道義的責任があるとのべた(3)世界に向けて「核兵器のない世界」の実現への協力を呼びかけた――この三点を指摘。「アメリカ政府と日本共産党の立場は、たとえば米軍基地の問題とか大きな違いがたくさんありますが、これは心から歓迎したい、ぜひ、これは後押しして実際に実るようにしたいという思いで書簡を出したんです」と説明しました。
そのうえで、オバマ演説がのべている核軍縮のためのさまざまな具体的な交渉について、「もちろんこれらの部分的な措置は大事です。同時に、それだけでは核兵器はなくなりません。これと一体で、核兵器廃絶を正面から主題とした国際交渉を呼びかける必要があります」「やる気になれば呼びかけることができますよね。合意、実行までには時間はかかるかもしれないけれども、まず呼びかけることはすぐにもできる。呼びかけて国際交渉をスタートさせてほしいということを私はオバマさんに要請したのです」とのべました。
これをうけて角谷氏は、オバマ演説について、アメリカ国内で反発する世論もあるがと質問しました。
志位 そうであるがゆえに、国際的な世論で後押しする必要があるんですね。世論が応援して、支えて、それでオバマさんが実際に前に向かって進めるように後押しするということが、国際社会にとって大事ですね。とくに被爆国日本からすれば、核兵器による惨害に、いまだに被爆者の方々が苦しんでいるわけです。そういう事態におかれているわけですから、核兵器と人類は共存できない、核兵器と文明は両立しないという被爆国日本から強いメッセージを送って、あなたが一歩前に踏み出したことを歓迎する、ぜひ実行してほしいという強いメッセージを日本こそ送る必要があると思っています。
日本政府の態度
核抑止力論にしがみつくだけ
議論は日本政府の態度に移ります。
「一番大きな問題は、日本政府が核抑止力論をいまだに信奉しているということです。核抑止力論というのは、平たく言うと、核兵器の脅しで相手を黙らせるという考えです」とのべた志位氏。
かつてレーガン政権で国務長官を務めたシュルツ氏も、核兵器を落として無辜(むこ)の女性や子どもたちを無差別に殺傷することなど文明国にはできないとし、核抑止力論はいまや通用しないと表明していることを紹介。「核の脅しで相手を封じ込めるという論理に立つと、相手も同じ論理で核を持とうとするわけですよ。だから、核兵器の拡散を止めることを考えても、核抑止の考え方を捨てないといけない」「核兵器廃絶ということをみんなで確認する努力が大切です」と力説しました。
角谷氏は、「核をまずなくす、これも大事だ。しかし一方で、通常兵器だけになったら、アメリカがまたそのなかで影響力を持つんじゃないかという声もあります」と質問しました。
これに対して志位氏は、「核兵器というのは、特別に残虐な兵器だという認識を、私たち人類はしっかり持つ必要があると思います」「私も被爆者の方の話を聞きますと、生き残った方が、生き残って申し訳ないと、そんな気持ちすら思わせるくらいの死の世界がつくられたのですね。本当に都市を丸ごと抹殺したんですよ。もちろん、いろいろな兵器の問題はあります。しかし、核兵器がある限り、人類はいつ滅亡の危険にさらされるかわからないという淵(ふち)にいつづけなければなりません」「その時にオバマ大統領がああいう発言をした。ですから一つの大きな歴史的チャンスととらえて行動すべきだと思います」と表明しました。
この議論の中で志位氏は、「若い方にぜひお勧めしたい」として、井上ひさし氏の戯曲、『父と暮せば』を紹介しました。広島で被爆し一人生き残り、死者への罪悪感から恋にも躊躇(ちゅうちょ)する若い女性の物語で、幽霊の父親が“恋の応援団長”として登場します。ここで視聴者からは「『はだしのゲン』は読みました」の書き込みも。角谷氏からは「『夕凪(ゆうなぎ)の街…』というあれは…」と。
志位 『夕凪の街 桜の国』はもともとはマンガですね。その主人公の女性も同じです。生き残ったことにたいする罪悪感が…。最後は白血病で亡くなってしまう。核兵器は本当に子々孫々にわたって残酷な影響を残すものですから、これは人類と共存し得ないということを私はどうしても強く言いたい。若い人もぜひ、そういう絶対悪をなくそうということで一緒に頑張ってほしいなと思います。
泣き寝入りせず、たたかいでルールつくろう
番組後半は、深刻な雇用問題がテーマになりました。
志位氏はまず、「雇用の状況は、深刻さがいっそう広がっている」とのべ、いわゆる「非正規切り」が厚生労働省発表でさえ、二十数万人という規模になっていること、正社員のなかでも無法な退職強要による「クビ切り」が広がっていることを指摘しました。一方で、この間、一万人以上が新たに労働組合をつくったり、既存の組合に結集して立ち上がっていることを紹介し、視聴者に向けて、「ここにはとても未来があると思います。ここは泣き寝入りしないで一緒に立ち上がろう」と呼びかけました。
深刻な雇用
人類の歴史もたたかいがルールをつくった歴史
そこで角谷氏から、たたかうと本当に雇用が守れるのかとの質問が。
志位 そういう不安はあると思うけれども、ただ、たたかいをあきらめて泣き寝入りしてしまったら、これはどんどん崩されていきますよね。労働がいよいよ非人間的なものになる。たたかいによってこそ、人間らしい労働のルールをつくれるということをいいたいと思います。
人類の歴史もそうなんです。一番最初に工場立法がつくられたのは十九世紀の中ごろのイギリスですが、それまでは一日十五時間という労働だったんです。(労働者の)寿命がどんどん縮んでいくという状況があって、労働者がものすごいたたかいをやって、そして最初の工場法で十時間労働になりました。このルールをつくってみたら、イギリスの資本主義は衰退するのではなく、発展したんですよ。ですから、そういうたたかいの歴史の中で労働のルールを人類はずっとつくってきたんですよ。いまも、たたかいでルールをつくる時だということをいいたいですね。
たたかいのテーマについて問われた志位氏は、(1)非正規雇用は臨時的・一時的なもので合理的理由がある場合に限定し、それ以外はすべて正社員にするという、「正社員が当たり前のルール」(2)正社員も非正規社員も、同じ労働をすれば給料も休暇も同じという「均等待遇のルール」(3)残業時間の上限を法律で規制する(4)失業しても安心して時間をかけて次の仕事を探せるように雇用保険を抜本的に充実する――の四つの課題をあげました。
「賛成」「当たり前だよな」「日本人働きすぎ」などの書き込みが相次ぎました。
サービス残業
犯罪行為にペナルティー科す根絶法案
ここで角谷氏は、日本の労働者が「サービス残業」を受け入れやすいのは、同僚を気遣う「優しさ」にも原因があるのではないかと指摘し、「それをどう変えていくのか」と質問しました。
志位 日本の場合、率直に言って、働いている人の権利が侵害された場合、社会の側から大ストライキが起こるかというと、そこがまだ弱いですよね。やはり国民的な闘争をつくってそこは変えていかなければならないと思います。
フランスではバカンスも有給休暇も絶対に取りますよね。取り残しはありませんね。なぜかといえば自分たちでたたかいとってきたと考えているからです。フランスの場合は一九三〇年代に人民戦線政府ができて、はじめてバカンスがつくられたんですね。
「サービス残業」問題について、志位氏は、日本共産党が「サービス残業」根絶法案を提案していると紹介。現在は違法が摘発されてもペナルティーがなく、不払い残業代を払えばそれで済んでしまうという、いわば企業の“やり得”の状況だと指摘し、犯罪行為にはきちんとペナルティーを科す、何倍もの残業代を払わなければいけないというルールをつくる必要性を強調すると、「その法案大賛成」とのコメントが書き込まれ、こんなやりとりになりました。
角谷 (政府が)経済対策で(予算を)いくらかけていますよというよりはそういうものをつくってくれたらいいんじゃないかと思いますよ。
志位 「サービス残業」根絶法は一円も国の予算はかかりませんから。
角谷 それは、志位さんの声がもっと大きくならないとなかなかだめだということですから…。
志位 ぜひ全力を尽くしてやっていきたいと思います。
ひっきりなしに届く「CGJ!」「がんばってください」「面白かった〜」などの書き込み。今回の番組の“訪問者”は一万一千人近く、視聴者コメント数は六万を超え、いずれも前回の約二倍に達しました。