2009年6月1日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

その合併待った


 いわゆる“平成の大合併”も一段落したかのようにみえます。しかし、合併特例法・新法が来年3月末に期限を迎える中、再び強引に推進しようとする動きも活発になっています。これにたいして、あくまでも地方自治を守り、自立の道をすすめようとする住民の運動が粘り強くすすめられています。滋賀県、宮城県の現状とたたかいを紹介します。


滋賀県安土町と近江八幡市

町長リコールで対峙

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 滋賀県ではいま、異常な駆け込み合併がおきています。住民の強い反対のなか強行議決された今年3月の長浜市・湖北6町合併に続き、近江八幡市と安土(あづち)町で来年3月21日の合併計画がすすめられています。町民は「住民の声を聞け」と、町長リコールで対峙(たいじ)しています。

 安土住民は5月15日、有権者42・6%の署名を集め、津村孝司町長リコール(解職請求)を提出しました。住民投票実施は確実です。しかし津村町長は「不退転の決意で臨む」と、あくまで合併強行の構えです。

■「理由もなく」

 リコールの住民団体「急ぐな合併・守ろう安土みんなの会」の大林宏代表は「リコール署名は、町長の町長選得票も上回り、町長は死に体。それでも強行なのか」と迫ります。

 安土は、織田信長の安土城などで全国に知られ、住民が誇りにする地名です。その安土が、合併されれば地図から消えます。

 法定協議会は今年4月1日設立し、わずか5回の協議で終了。6月議会で合併議案を議決する駆け込みです。

 しかし合併の合理的な理由が町民に示されたことはありません。合併協議会が募集した、まちづくり計画への住民の回答は、両市町(約8万人)で、わずか272通でした。

 このなかで安土町民は明確な意思を示してきました。

 05年3月、町の住民意向調査で60・9%が「合併しない」。昨年11月、住民団体の「はがき投票」では85・2%が「合併反対」。今年2月、住民投票の直接請求に有権者の40・6%の有効署名が提出されました。

 直接請求を町議会が1票差で否決するや、ただちに直接請求を上回るリコール署名が積み上げられました。

 国が合併特例法(旧法)で「平成の大合併」を打ち出し、滋賀県内で最初に計画されたのが、安土町を含む3町合併でした。しかしこれは新市名をめぐり、最後の土壇場で破たんしました。その後も組み合わせを変えた計画が住民の反対で断念に追い込まれました。

 この間の動きについて町の元幹部職員は「旧法の最初から新法終了間際まで10年近く、『町をなくすしかない』といい、相手はどこでもよかった。それは合併に理由がないということだ。その力を町の発展に注いでいたら…。本当にもったいない」と話します。

■県主導で強行

 合併を直接に推進してきたのは、国いいなりで「合併先進県」を目指す県です。県は2000年12月、合併の「基本パターン」を示し、県内50市町村を26市町に半減させました。

 06年当選の嘉田由紀子知事も「自主的な合併を応援する」と、合併新法のもとで三つの合併を指名しました。

 その一つが長浜市・湖北6町で、むちゃなやり方に長浜市でも反対の声がわきました。しかし県と県議会は「住民の声を聞け」という住民を、踏みつぶすように合併を進めたのです。

 「合併しない」と決めている竜王町と近江八幡・安土合併を指名することもしました。今回の安土・近江八幡では、リコール投票の前に合併議決をと市議会に事実上の強要までしました。

 6月議会を前に、日本共産党は、近江八幡で「性急な合併は将来に禍根を残す」と主張し、安土では「今度こそ町議会が良識を示すべき」と訴えています。(滋賀県・黄野瀬和夫)


宮城県柴田・村田・大河原の3町

議会内外 反対で共同

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 宮城県の柴田町、村田町、大河原町が5月25日、合併協の廃止議案を審議する臨時議会を開き、合併協は5月31日までで休止と決めました。

■チラシに衝撃

 合併推進の町議らでつくる「県南中核都市実現の会」(会長=大沼惇義柴田町議)は昨年3月、新合併法の期限である「平成21年度末までに合併すれば、国や県の財政的な支援等も約束されている」から、今が合併の「ラストチャンス」だと大宣伝し、各町で有権者の26〜33%の署名を集めました。

 このなかで日本共産党は昨年5月、3町でチラシを一斉に全戸に配りました。チラシは、合併が行われた栗原市、登米市、大崎市の新市町で、合併後に公立病院の廃止や小中学校の統廃合などが持ち出され、住民のための施策が後退している実態を知らせました。

 広大な駐車場に数台の車しか止まっていない旧・小野田町役場の写真は、合併による「周辺部の衰退」を浮かび上がらせて衝撃を与えました。「あのチラシが流れを変えた」という声が各町の幹部からも上がりました。

 日本共産党宮城県議団は、村井嘉浩知事が合併協議会で合併を強要する発言をしたことを批判。「県南中核都市実現の会」が合併反対の議員5人の名前を勝手に使って合併推進宣伝のための補助金を申請していたことを明るみに出し、合併を主導した県の責任を追及しました。

 柴田町では、合併に慎重な住民の声を背景に、4年前の協議会では合併推進だった柴田町の滝口茂町長が、反対を鮮明にしました。二つの住民運動団体が発足して「平成の大合併」の検証を始めました。村田町、大河原町でも住民団体が結成され、町全体に合併反対の看板を林立させました。

 集会には日本共産党の新市町の議員がパネリストとして出席して「合併のマイナスは、乳幼児医療費助成制度の後退、病院統廃合計画、本庁が遠くなった不便などたくさんある。プラスは、ほとんど思い浮かばない」(遊佐辰雄・大崎市議)と、住民生活の変化を事実で知らせました。

 柴田町では、6人の保守・無所属の議員と日本共産党議員が合併反対の一点で共同し、連名のチラシを7回発行して住民世論を広げました。「これ以上の合併は…国の崩壊につながる」とする全国町村会の見解と調査報告書「平成合併の実態と検証」(2008年10月6日)を活用した宣伝と論戦は、合併推進派を反論不能に追い込みました。

■反対派が躍進

 局面は3月22日投票の柴田町議選で、大転換しました。合併反対・慎重の新人5人が全員当選し、「合併反対の先頭に立ちます」と訴えた日本共産党の広沢真議員も議席を守る一方で、合併推進の現職が正副議長を含めて4人落選。定数18人のうち合併反対の議員が11人を占め、柴田町議会は合併推進から合併反対に変わったのです。

 4月19日投票の大河原町議選でも、日本共産党が前回より票を伸ばして2議席を守り、合併を批判した無所属候補も当選しました。

 合併協の廃止議案は、村田町では6対6で議長裁定で否決になりましたが、柴田町10対7、大河原町8対6と2町議会で可決されました。わずか9カ月でこれだけ変わったのは、合併反対の一点で多くの人々が連帯したたたかいによるものです。(中嶋廉・宮城県委員会自治体部長代理)


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