2009年6月8日(月)「しんぶん赤旗」

NHK「日曜討論」

小池政策委員長の発言


 7日に放送されたNHK「日曜討論」での小池晃政策委員長の発言を詳報します。


「景気は底を打った」の与党の認識こそ危機的

 冒頭、司会の島田敏男解説委員から、米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)の破たんからくみとるべき教訓を問われ、小池氏は次のように述べました。

 小池 金融部門が自動車の本業よりも大きくなっていた。モノづくりの基本を忘れて目先の利益に走って破たんしたということです。「アメリカモデル」だといってきた金融自由化、「構造改革」路線の破たんだというふうに思います。モノづくりの基本をしっかり応援する、暮らしと雇用を守るという「ルールある経済社会」をつくっていくことが導き出す教訓ではないかと思います。

  島田氏が鉱工業指数の改善などを背景に、与謝野馨財務相が景気は“底打ち”と述べていることを紹介し、景気に対する見方を各党に聞きました。自民党の林芳正参院議員は、「与謝野さんの言うとおり」などと述べたのに対し、小池氏は次のように答えました。

 小池 与謝野さんは、リーマン・ショックのときには“ハチに刺された程度だ”といったが、日本は一番経済指標が落ちたわけです。そして今度また“底を打った”と。底打ちだなんていえない。賃金、雇用者報酬は、連続して減り続けている。さらに今年夏のボーナスは、ガクッと減るという。雇用の指標は軒並み、史上最悪という数字になってきている。しかも、生活保護を受けている人が、119万世帯、人数で165万人を超えた。自殺者も、増加傾向にある。一部の経済指標で国民の暮らしをとらえることはできないと思います。国民から本当に大変な悲鳴が上がっている。これで底を打ったという与党の認識こそ、私は危機的だと思います。

社会保障抑制しながら「内需主導」はできない

 産業構造を転換し、内需型経済をどう実現していくか、という課題について、公明党の石井啓一衆院議員は、バラマキを盛り込んだ15兆円の2009年度補正予算で「内需を喚起し、将来に向けての投資が着実になされていると思う」と発言。小池氏は次のように述べました。

 小池 内需主導は、(与野党)みんないうわけですよ。その中身は、雇用・中小企業・農業・自然エネルギーだと。実際に何をやっているのか、が問われると思うのですよ。

 社会保障というけれども、毎年2200億円の抑制路線は、これからも続けます、と与謝野財務相はまだ国会でおっしゃっている。雇用(対策)だとおっしゃるけれど、本当に雇用を守る努力をしているのか? 派遣村は、ロンドン、パリにできたか? 日本だけじゃないですか。東京だけでなく、全国にできている。

 フランスでは、大臣がルノーの工場に乗り込んで、リストラ計画を撤回させることを政治がやるわけです。(日本は)そういうことをやっていない。

 農業支援では、やっぱり価格保障、所得補償です。しっかり生産コストを補償する。

 こういう道に踏み出さずに、輸入自由化路線は、そのまま続けるのでは内需主導の経済にはならない。そういう意味で今までの経済政策を転換することが求められています。危機のときだからこそ、もちろん当面の手だてを打ちながら、中長期的な支援、視点で本気で応援していく政治にしなければならない。

不法な解雇は許さない全国一律の最賃制度を

 自民党の林議員は、フランス政府がルノーに乗り込んでリストラ計画をたださせたという小池氏の話に対し、「(国有化された米GM社と同様)ガバメント・モーターズというふうになってしまって、いい車をつくる会社にならないのではないか」と発言。小池氏は、「あたりまえのルールを企業に守らせることは、政府が当然やるべきことだ」と反論。深刻な雇用情勢のなかで政府がとってきた対応に触れながら、小池氏は、次にように答えました。

 小池 さきほど林さんは、政府が企業に乗り込んで雇用を守れといってはいけないといったが、とんでもない。今、現場で起こっているのは違法行為ですよ。労働者派遣法や職業安定法の違法行為が横行している。

 こういう違法な「派遣切り」という蛇口を閉めないで、いくら雇用対策でお金を注ぎ込んでもきりがないということになる。やはり、政府がきちっと不法な解雇を許さないという立場でやるべきです。

 もう一つは、解雇された人への対応が日本は弱すぎる。日本の失業者のなかで、失業保険が受給できていない人は77%いる。欧州では1割〜2割ですから、日本の雇用保険、失業保険制度が機能していない。「派遣切り」にあったら、もうホームレスまで滑り台のように落ちていくっていうことになってしまっているわけで、ここを強化しなくてはならない。

 そういう点でいうと、今の(政府の)対策は3年限りの限定であり極めて不十分だと思います。雇用調整助成金の活用は、大事ですが、これをもらってもなお首を切っている大企業がありますから、きちんと“首を切るな”という政治にしなければ、きりがないと思います。

  司会の島田氏は、日本の最低賃金(時給703円)が、フランスなどと比べて低いことを紹介し、引き上げに対する各党の見解を聞き、小池氏は、次のように答えました。

 小池 年収200万円以下のワーキングプアが1000万人を超えている事態は本当に解決する必要があるし、私たちは時給1000円以上にすべきだと考えます。地域格差が出てきていますから、全国一律の制度にするということで、憲法25条の生存権という考え方をきちっとたてるべきだと考えています。

 中小企業は大変になるという話がありますが、大変なのは、大企業による下請けいじめや、今の規制緩和で過当競争を強いられているからなのです。そこにきちんと手だてをする。賃金の助成措置などが経過的にも必要だと思います。地域の経済格差をなくす上でも、全国一律の最低賃金制度の確立が今必要だと思います。

消費税増税の議論は社会保障の精神壊す

 司会の島田氏は、4月で全廃された生活保護世帯への母子加算について、野党4党がこのほど復活法案を提出したことを紹介。社会保障などの「財源の問題は、総選挙に向けてのポイントになる」と各党に意見を聞きました。自民党の林議員は、生活保護を受けていない母子家庭から「(母子加算が)うらやましいという声がある」などと母子加算全廃を正当化。消費税増税について「われわれは逃げずにやっていく」と表明。民主党の大塚耕平議員も、「しかるべき時期には、やはり消費税を国民の皆さんにお願いする時期がくる」と述べました。小池氏は、「うらやましい」などを口実に母子加算を廃止した自民・公明を批判。「生活保護を受けている家庭より一般の母子家庭は消費水準が低い。圧倒的な母子家庭は生活保護水準以下で暮らしていることこそ深刻な問題だ」と指摘し、廃止を撤回し、復活すべきだと強調しました。財源問題については次のように答えました。

 小池 財源として消費税というが、消費税はまさに生活保護世帯をよけて通らない。生活保護世帯にもかかってくる税金です。こんな税金で社会保障の財源をつくるという議論は社会保障の精神をぶち壊すことになると思います。まっ先に320億円の政党助成金をやめるべきです。



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