2009年6月9日(火)「しんぶん赤旗」
主張
温暖化対策
自然エネルギー重視へ転換を
地球温暖化の最大の原因となっている二酸化炭素排出の9割を占めているのが、エネルギー利用による排出です。問題は、これをいかに減らすかです。
政府、電力業界は、このために二酸化炭素排出の少ないことを口実に原発への依存を強める道をとろうとしています。しかし、これは大変危険な方向です。
原発の安全性は未確立
原発は、技術的に未確立で安全性が確保されておらず、放射能汚染という別の重大な環境問題を引き起こします。したがって、政府のいうように、「低炭素エネルギーの中核」とはなりえません。
1986年のチェルノブイリ原発事故(旧ソ連)では、深刻な放射能汚染が国境を越えて広がりました。使用済み核燃料など放射性廃棄物の処分方法も未確立です。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告も、原発には「安全性、核兵器拡散、核廃棄物の問題」があると指摘しています。
温暖化対策で重視すべきは、原発の増設ではありません。太陽光、風力、バイオマスなど、安全で永続的に利用できる自然エネルギーの利用を抜本的に高めるべきです。
自然エネルギーは、国内にも豊富に存在し、太陽光、風力だけで日本の総発電量の11倍、原発の発電量の36倍という潜在量があります。問題は、これを本格利用する政策をもつかどうかです。
EU(欧州連合)は、2020年までに温室効果ガスの排出量を90年比で20%削減するために、自然エネルギーをエネルギー供給の20%にすることをめざしています。
ドイツは、原発ではなく自然エネルギーを増やすことで、温暖化ガス排出量をすでに22%以上減らしました。自然エネルギーは、10年で約3倍に増え、電力の15%弱を担っています。20年にはこれを30%以上にする目標です。
ところが日本では、原発が優先される一方で、自然エネルギーが不当に軽視されています。
政府は、20年に非化石燃料で電力の5割以上をめざすとしていますが、そのほとんどは原発です。自然エネルギーは、電力の1割程度と、現状から若干増やすだけです。政府は、20年の温室効果ガス削減目標として、いくつかの案を検討していますが、いずれも原発の発電量を05年実績の1・4倍にすることを前提としています。
エネルギー研究開発予算(07年度)でも、日本は65%が原子力で、自然エネルギーは5%にすぎません。ドイツは22%、イギリスは36%を自然エネルギーにあてています。日本政府の自然エネルギー軽視は世界でも際立っています。
欧米並みの目標と制度を
自然エネルギーの普及には、政策的な対応が欠かせません。ドイツなどで成功している電力の固定価格買い取り制度の導入は、その重要なカギとなります。自然エネルギーによる電力を一定期間、決められた価格で電力会社が買い取る制度です。政府も世論に押され、これを導入するとしてはいますが、住宅用太陽光発電の余剰電力を対象にしているにすぎません。自然エネルギーによる全発電量を買い取りの対象とすべきです。
欧米並みの目標と制度で、自然エネルギー利用を本格的に拡大する方向へ、エネルギー政策を転換するよう強く求めます。
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