2009年6月11日(木)「しんぶん赤旗」
主張
中期目標政府決定
地球環境を守れない自公政権
温室効果ガス排出量を削減する2020年までの中期目標について、政府が05年比「15%減」(1990年比「8%減」)を決定しました。これは地球温暖化を防ぐ目的に照らしてまったく不十分です。期限まで半年を切った排出削減の国際交渉では通用せず、国際的にいっそう孤立しかねません。
政府決定に環境団体や広範な国民から厳しい批判が上がっています。麻生太郎首相と自公政権に、地球温暖化を防ぐ日本のかじとりができないことは明らかです。
本末転倒の検討
政府は今回の決定で、削減目標の基準年を90年から05年に変更しました。日本は90年以後も排出量を増加させてきたため、05年比では見かけ上削減幅を大きくできるからです。削減幅を“偽装”しても温暖化を防ぐことはできず、国際交渉をより困難にするだけです。
日本は2050年までの長期目標で60〜80%の削減を掲げています。90年比「8%減」の中期目標は長期目標を達成する見通しを欠き、無責任のそしりを免れません。
「8%減」は既存の省エネ技術を最大限に普及すれば達成できるとされています。温室効果ガスの排出を大幅に抑え、温暖化を防止する目的を見失った本末転倒の議論です。
国連などの専門家からは、中期目標として先進国全体で25〜40%削減することが求められています。この科学的要請を満たすには、化石エネルギーを大量消費する経済のあり方を転換し、名実ともに「低炭素社会」をめざさなければなりません。
ところが、政府は中期目標の検討にあたって経済のあり方を吟味せず、それには手をつけないことを前提にしてきました。排出量の削減には最大の排出部門である発電などエネルギー転換部門の対策が不可欠です。そこにメスを入れないままで、新たな地平を開く対策はできません。
政府の検討はもっぱら対策に必要なコストを議論の的にしており、高い削減量をめざすことは国民生活に悪影響が大きすぎるとの印象をふりまいてきました。
対策の検討にあたって、産業界が眼目にしたのは「国際的公平性」の確保です。コスト増で大企業の「国際競争力」が損なわれないようにするためです。
政府が選択肢として6案を発表して2カ月弱、環境悪化を懸念する多くの国民が高い削減量を求め、これを押しとどめたい産業界との間で綱引きが続きました。「8%減」は両者の中間をとったかにみえます。しかし6案全体がもともと偏っていました。日本経団連が要求した「4%増」は論外ですが、「7%減」も経済同友会の提言に盛り込まれた通り、産業界が進んで許容する枠内にあります。
決定は見直しを
目的を見失った主張では国際交渉は乗り切れません。とりわけ今後の交渉では、中国やインドなど急速な経済拡大を進める途上国も参加できる枠組みをつくることが焦点の一つとなっています。先進国の責任を果たそうとしない日本の目標では、リーダーシップどころか交渉の障害になるだけです。
日本共産党は、先進国の歴史的責任にたって、90年比30%削減を掲げるよう主張してきました。
政府は決定を見直し、高い目標を設定し直すべきです。
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