2009年6月12日(金)「しんぶん赤旗」

憲法審査会規程制定に対する

笠井議員の反対討論

衆院本会議


 日本共産党の笠井亮議員が11日の衆院本会議で行った憲法審査会規程制定に対する反対討論(要旨)は次のとおりです。

 なぜ、いま審査会規程づくりか。与党は、「改憲手続法が成立したのに、憲法審査会規程をつくらないのは立法不作為だ」と繰り返します。これは「憲法に改正規定がありながら、手続法がないのは立法不作為だ」という、手続法をつくる際の理屈と同じです。

狙いは9条改憲

 しかし、憲法審査会規程がないことで、国民の権利が侵害された事実はどこにもありません。「立法不作為」論は、全く成り立たないのです。理屈にならない理屈で、再び採決を強行するなど言語道断であることを厳しく指摘します。

 そもそも改憲手続法の狙いは、9条改憲の条件づくりにほかなりません。2005年秋、憲法調査特別委員会で憲法改正国民投票制度についての審議が始まると、自民、民主など手続法をつくろうとする政党が、相次いで憲法9条を中心とする改憲案や改憲構想を発表しました。そのなかで自民党は、憲法9条2項を削除し、自衛軍の保持と集団的自衛権の行使を含む、海外での武力行使を可能とする規定を盛り込んだ改憲案を発表したのです。

 当時の法案提出者が主張した「公正・中立なルールづくり」ではなかったことは明瞭(めいりょう)です。

 改憲手続法は、内容上も不公正で反民主的な法律であります。国の最高法規である憲法の改正は、主権者である国民の意思が最大限にくみつくされることが必要不可欠です。

 ところが、手続法は、どんなに投票率が低くても国民投票が成立し、有権者の2割台、1割台の賛成でも改憲案が通る仕組みとなっているのであります。公務員、教育者の国民投票運動を不当に制限し、改憲案の広報や広告が改憲推進勢力に有利なものであるなど、多岐にわたって重大な問題点をもったまま成立が強行された欠陥法なのであります。

 いま、自民・公明の与党が規程制定を急ぐのは、国民投票法の施行が来年5月に迫るもとで、憲法審査会を一刻も早く始動させ、改憲原案づくりに着手し、国民投票法施行後、いつでも改憲原案を提出できるようにしたいからにほかなりません。総選挙が間近なとき、国会で多数を握っているうちに、改憲の条件を整えようとすることは断じて許せません。

憲政史上に汚点

 2年前の本会議場で、与党が、安倍(晋三)総理の改憲スケジュールに沿って改憲手続法を強行成立させたとき、私は、憲政史上に重大な汚点を残す暴挙であると批判しました。その後、2007年の参議院選挙で、「改憲ノー」の国民の審判をうけ、安倍政権が退陣を余儀なくされたことは記憶に新しいところです。今回、審査会規程の制定を再び強行すれば、憲政史上にさらに大きな汚点を重ねるものであることを厳しく指摘するものです。

 国会における改憲の動きは、1997年の憲法調査委員会設置推進議員連盟の設立以来、憲法調査会、憲法調査特別委員会と12年に及び、改憲勢力の周到な準備のもとに進められてきたかにみえます。しかし、いかに国会で改憲の機運を盛り上げようと狙っても、国民はそれをきっぱりと拒否してきました。国民は、憲法改正を求めてはいません。今日にいたるまで、改憲勢力が主眼とする9条改憲を求める国民の声は、どの世論調査でも一貫して少数であり、多数になったことは一度もないのです。

守り生かすこと

 今日、政治がなすべきことは、貧困と格差を拡大させてきた「構造改革」路線を改め、雇用の確保、社会保障の充実など、憲法25条の生存権が保障される社会をつくることです。オバマ米大統領が「核兵器のない世界」を呼びかけているいまこそ、非核・平和の世界に向けて、9条をもつ被爆国日本ならではの役割を発揮することです。

 憲法を守り生かしていくことこそ時代の要請であり、憲法審査会は始動させず、その根拠法である改憲手続法は廃止すべきであることを強く主張します。



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