2009年6月13日(土)「しんぶん赤旗」
省エネどころか増エネに
エコに逆行、政府の「エコポイント制度」
液晶・プラズマテレビにみる
「エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業」(エコポイント制度)が始まっています。政府は「環境によい製品の購入や行動に対して、様々な製品等と交換できるエコポイントを付与し、そのような購入や行動を促す」とします。対象はエアコン、冷蔵庫、地上デジタル放送対応テレビ。実際に本当にエコになるのだろうか、液晶・プラズマテレビについてみてみました。(中東 久直)
税金使い買い替えあおるが…
大型化で消費電力量大きく
補正予算で約3千億円計上
環境省、経済産業省、総務省の3省が実施する「エコポイント制度」。来年3月までの一時的な措置で、09年度補正予算で約3000億円が計上されています。
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「地上デジタル放送対応テレビ」でいえば、現行の統一省エネラベル「4つ星」基準を満たす製品と、基準が設定されていないプラズマ・フルハイビジョンテレビ、LEDバックライト液晶テレビ、ワイヤレス方式液晶テレビで4つ星相当の基準を満たすと認められる製品が対象です。
統一省エネラベルとは、06年10月から導入された、小売事業者が製品の省エネ情報を表示するための制度です。省エネ法に基づく省エネ基準達成率、年間消費電力量(エネルギー消費効率)や、多段階評価制度による5段階の星、年間の目安電気料金などが表示されています。
液晶・プラズマテレビの場合、省エネ基準達成率143%以上164%未満が4つ星で、164%以上が5つ星です。省エネのための目標基準値は、画面の大きさや画素数、機能・付加機能などの区分ごとに決められ、その達成率により星の数が表示されています。星の数は、製品の中での相対的な評価です。
大型になるほどポイント増える
経済産業省資源エネルギー庁、財団法人/省エネルギーセンターが毎年2回発行する『省エネ性能カタログ』によれば、液晶・プラズマテレビの年間消費電力量は、「一般的に、テレビサイズが大きくなる、あるいは複数の機能を備えるほど…大きく」なるとされます。
表は、今回の「エコポイント制度」の「エコポイント数(点)」です。
「地上デジタル放送対応テレビ」では、「エコポイント数」は、42V、40V型「23000」、46V型以上「36000」と、大型ほど増える仕組みとなっています。1ポイントは1円相当。販売店でも、40V型以上の「お得」感が押し出されています。
環境省の環境経済課は、ポイント数について、「テレビは価格の10%が目安で、エアコンと冷蔵庫は価格の5%が目安となっている」とします。
経産省の資料によれば、32V型を超えると、年間消費電力量は、加速度的に増える傾向を示しています。また、08年度の32V型の出荷台数シェアは33・2%、年間消費電力量シェアは27・2%となっています。42型V型では出荷台数シェアは12・2%なのに、年間消費電力量シェアは21・3%になっています。
温暖化対策にならないの声も
現行の目標基準値や年間消費電力量の測定方法などを決める審議(05年)の中では、「今後大型化、高性能化に伴う消費電力量の増加が見込まれることから、テレビ全体の1台当たりの平均年間電力消費量を公表すべき」(地方自治体)、「画面の拡大により消費電力が増加することから、温暖化防止対策にならないのではないか」(業界関係者)とのパブリックコメントも寄せられていました。大型化による増エネへの危ぐの声です。
今回の「エコポイント制度」によって、大型化を招くことへの批判の声が関係者からあがっています。環境対策という面でみた場合、今回の制度の欠陥は明らかです。
「電気代おトク」ってホント?
消費電力量
実態と離れた現行測定方法
本紙測定では2倍に
経産省は、エアコンや冷蔵庫、テレビは10年前と比べて省エネがすすんでおり、「エコポイント制度」でCO2排出量は年約400万トン削減できると試算しています。本当にそうなるのでしょうか。
消費者を欺く現行測定方法
『省エネ性能カタログ』(2008年冬版)では、液晶テレビ32V型、デジタル放送受信対応、垂直方向の画素数650以上1080未満の5つ星と1つ星の製品の年間消費電力量と年間電気代を比較。5つ星を選ぶことで、年間消費電力量は107kWh削減され、「電気代にすると1年間で、約2、400円おトク!」と掲載しています。
ところが、年間消費電力量の現行測定方法が、実際にテレビを視聴する方法と違っているのです。本紙が実測すると、約2倍にもなりました。実用状態を反映しない年間消費電力量をもとした年間電気代を示すのは、消費者を欺くものです。
本紙は4年前、冷蔵庫の年間消費電力量の測定方法が実際での家庭での使用実態とまったくかけ離れ、3―4倍もの乖離(かいり)があることを指摘し、年間電気代を不当に安くみせかけていた問題を追及するキャンペーンを展開しました。
当時のJIS(日本工業規格)の測定方法は、通常の家庭ではありえない「結露防止ヒータ類、野菜室の凍結防止などのための温度補償用ヒータ類の機能は通電しない状態で測っている」「製氷機能もオフにする」などのごまかしがあったのです。
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本当に省エネか検証が必要
政府、メーカーは、「電気代おトク」「省エネ」などの宣伝が消費者を欺くものであることを否定できなくなり、JISの測定方法を改正せざるをえなくなったのです。その結果、あるメーカーのカタログの06年春号と夏号では、451リットルの同じ機種なのに年間消費電力量は3・6倍にもなっていました。それまでカタログで年間電気代4000円といって売っていた冷蔵庫が、実際は18000円もの電気代がかかる製品だったなどの、驚くべき実態があかるみになったのです。
液晶・プラズマテレビの現行測定方法を「より実用状態に合致する測定法」にするにはどうすればいいのか。メーカーは正確な情報を開示し、国や業界、消費者が参加して検証すべきです。同時に、実際の家庭での実態を把握し、本当に省エネにつながっているのかを検証していくことが求められています。
年間消費電力量
「静止画」で測定!?
液晶・プラズマテレビの年間消費電力量の現行省エネの目標基準値、その測定方法を決める審議時(05年)、動作時消費電力の測定で、従来のブラウン管テレビとは違う方法が採用されました。ブラウン管テレビと同様のフラットレベル白信号時とフラットレベル黒信号時の消費電力の平均値とした場合、「実使用時より動作時消費電力が小さくなる傾向がある」ので、「実使用に近づける観点から、カラーバー信号時と三縦じま信号時の消費電力を加えた平均値」とされ、写真のような「静止画」で測定することになったのです。
この方法による年間消費電力量で算出された年間電気代は、実際の半分程度でした。