2009年6月14日(日)「しんぶん赤旗」
主張
鳩山総務相辞任
郵政民営化の路線を転換せよ
日本郵政の西川善文社長(三井住友銀行元頭取)の進退問題で、鳩山邦夫総務相が辞任しました。
鳩山氏は「かんぽの宿」問題などに重大な責任がある西川社長の留任を「認可しない」と表明してきました。これに対して郵政民営化を進めた小泉・竹中派や財界が反発し、麻生太郎首相が西川社長留任の方針を固め、事実上更迭しました。
国民の財産を食い物に
日本郵政が「かんぽの宿」など79施設をオリックス不動産にたたき売ろうとした疑惑の解明も道半ばです。建設費2400億円の79施設を、20分の1以下の109億円で、まともな入札もやらずに売却しようとしました。
しかも売却先は、規制緩和の旗振り役で、郵政民営化を進めた宮内義彦氏が会長を務めるオリックス・グループです。郵政民営化にかかわった企業に郵政の財産をたたき売るやり方に、疑惑の目が向けられたのは当然です。
郵政民営化で最も甘い汁を吸っているのは、西川社長の出身銀行である三井住友グループです。日本郵政は、三井住友が大株主の不動産関連会社に「かんぽの宿」など建設費340億円の8物件を、わずか11億円、30分の1以下で売り払っています。
郵便貯金のカード事業では、郵政公社時代には0・2%の占有率しかなかった三井住友カードが民営化後は占有率99%に躍進しました。三井住友を委託先に選んだ責任者である「ゆうちょ銀行」の常務執行役は、三井住友カードの元副社長です。いずれは数百億円のビッグビジネスに成長するであろう「ゆうちょ銀行」のカード事業の受注は、カード業界の主導権を左右すると目されています。
日本郵政グループは西川社長を筆頭に、日本郵政の専務執行役と常務執行役、「ゆうちょ銀行」の副社長、常務執行役など、三井住友出身者が要衝を押さえています。内部監査や法令順守の統括責任者も三井住友の出身です。
郵政事業は国民の貯金や保険料、郵便料金で長年にわたって培ってきた国民の共有財産であり、地域住民の暮らしを支えてきた公共財産です。それがいま、民営化によって営利企業に食い物にされているのです。
西川氏の社長就任を強く推したのは当時の竹中平蔵総務相です。竹中氏は西川氏の「高い志」を持ち上げ、「間違いなく独立した立場でしっかりとご貢献をいただける」と絶賛しました。
いま竹中氏は日本郵政に「政治が口を出すべきではない」と西川社長を全面擁護しています。日本郵政は、まだ国が100%の株を持つ「国有企業」であり、政府には国民の財産を守る責任があります。何より、郵政を銀行業界の食い物にさせた責任者である竹中氏は国民に謝罪すべきであり、「口を出す」資格はありません。
明らかな大銀行奉仕
4年前の衆院選で自民党は「郵政民営化こそすべての改革の本丸」と主張しました。公明党も郵政民営化で日本経済は「たちどころによくなる」(当時の冬柴鉄三幹事長)と力説しました。
口から出任せにもほどがあります。民営化の帰結は巨大な「郵政民営化利権」であり、大銀行奉仕であったことは明白です。郵政株の売却をやめ、郵政民営化路線を根本から転換するよう求めます。
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