2009年6月17日(水)「しんぶん赤旗」
根本的解決にならず
「海賊」法案 参考人が意見
参院委
参院外交防衛委員会は16日、「海賊対処」派兵新法案に関する参考人質疑を行い、海賊対策やアフリカ問題などで、各分野の専門家の意見を聴取しました。
国連開発計画(UNDP)武装解除・動員解除・社会復帰担当シニア・アドバイザーのデズモンド・ジョン・マロイ東京外大特別研究委員は、ソマリア沖の海賊は現在、沿岸から1千キロ以上の海域まで出ており、各国艦船の取り組みは、終わりがなく根本的な解決にはならないとの考えを示しました。
日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(AALA)全国理事の高林敏之・東京外大共同研究員は「ソマリア国家の再建をすることなしに、住民が海賊に走ることを止めることはできない」として、紛争の解決にむけ、現地で和平に取り組んでいるアフリカ連合(AU)などへの支援を政府は行うべきだと指摘しました。
山田吉彦東海大海洋学部教授は、同法案に賛成するとしながらも、現場を航行する船舶の自主警備の必要性を説き、中長期的な取り組みとして、マラッカ海峡における国際的な海賊対策(アジア海賊対策地域協力協定=ReCAAP)のソマリア版を確立すべきだと主張しました。
秩序回復の努力こそ
井上議員質問に参考人
日本共産党の井上哲士議員は16日の参院外交防衛委員会の参考人質疑で、海賊問題の根本解決に向けたソマリア和平の取り組みについて、日本AALA連帯委員会全国理事の高林敏之氏に質問しました。
高林氏は「ソマリア(政府)が再建されない限り、ソマリア人の海賊その他の違法行為に走る事態は止めようがない。今後は麻薬や武器の密輸、テロ活動に走ることが起きるかもしれない」と和平の重要性を強調しました。
井上氏は、アデン湾の海賊問題を解決するには、「政府もソマリアの陸(紛争)の問題解決が必要だと言っているが、『陸の解決まで待つのは迂遠(うえん)すぎる』という議論もあり、どう考えるか」と質問。高林氏は「すでに海賊対策が長期の時間がかかると言われ、ソマリア紛争の解決を待つのは迂遠というのは、論理的に整合性がない。今年度補正予算の海賊対策費だけでも180億円以上にのぼり、それを長期的に毎年かける余裕が日本の財政にあるのか」と指摘。日本のソマリア人道・治安支援費は海賊対策予算の3分の1にすぎないことを示し、「アフリカ連合などの取り組みを支援して、できるだけ早くソマリアの民主的秩序を回復する努力をすべきだ」と主張しました。