2009年6月21日(日)「しんぶん赤旗」
「エコカー減税」はエコ?
燃費悪いほど減税
環境にも景気にも逆行
2009年度補正予算で盛り込まれた3700億円のエコカー購入補助金制度の受け付けが19日に始まりました。09年度予算に2100億円のエコカー減税(環境対応車普及促進税制)を盛り込んだのに続くもの。国をあげての自動車購入奨励を、麻生太郎首相は「厳しい経済情勢下、環境性能に優れた自動車に思い切った減税を講じる」と、「不況」「環境」を理由に合理化しています。ところが、その中身は「環境に優しい」のうたい文句からは遠くかけ離れています。
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エコカー減税は、国土交通省が定める排ガスと燃費の基準値をクリアした自動車の自動車重量税や自動車取得税を、基準に応じて50〜100%減税するものです。
一見すると“環境性能に優れた自動車に対する減税”のようですが、「プリウス」「インサイト」といったハイブリッド車に限らず、売り上げ上位の人気車種はもれなく対象となっています。対象となる車種は普通車で62車種(全体の4割)、軽自動車で16車種(同5割)に上ります(日刊自動車新聞5月18日付)。
国あげ販売促進
国土交通省は9段階に分けた車体重量ごとに燃費基準を設定していますが、もともとその基準が重い車に甘く設定されているため、排気量が多く環境に悪影響を及ぼす車種ほど減税率が高くなる問題や、ハイブリッド車であれば燃費の性能に関係なく免税される問題もあります。
数字が大きいほど環境への負荷が少ないことを示す燃費値(燃料1リットルあたりの走行距離=キロ)24・5の「アルト」が50%減税なのに対し、11・2の「MPV」が75%減税、12・2の「レクサス」が100%減税になるのはそのためです。
なかには、「エスティマ」のように、後付けのサンルーフや音響装置で車体重量が増えると、燃費値は12・4から11・8に悪化するにもかかわらず、減税率は50%から75%へアップするケースまであります。
「“エコカー”は大義名分で自動車の販売促進にすぎない」というのは交通権学会の上岡直見副会長です。重い車に甘い燃費基準についても、「高級車を買う人に有利で、田舎で車がないと生活できないから、仕方なく中古の軽自動車に乗っているような人には恩恵がない」と話します。
購入補助も同様です。同制度は、13年以上使用した車を廃車し「2010年度燃費基準達成車」に買い替えると、普通車は25万円、軽自動車は12・5万円を補助するものです。廃車を伴わなくても一定の燃費基準(10年度プラス15%)さえ達成していれば、普通車10万円、軽自動車5万円を補助します。
経済産業省は合わせて280万台への補助を見込んでいますが、「乗用車の新車のうち、買い替えのケースで8割から9割、廃車を伴わないケースで3割から4割が対象になる」(同自動車課)といいます。
車依存でいいか
「購入補助金に反対する声明」を麻生首相あてに送ったクルマ社会を問い直す会の杉田正明代表は、日本の二酸化炭素(CO2)排出量の2割を自動車が占めることをあげ、「これだけ地球温暖化が問題になっているときに、なぜ車の利用を奨励するのか。車の利用を削減することが課題ではないのか」と批判します。(グラフ参照)
景気対策の効果が検証されていないこと、高速道路の「千円乗り放題」や首都圏3環状道路建設などCO2排出増につながる政策には熱心な一方、公共交通機関や自転車、カーシェアリング(車の共同使用)の利用者に恩恵がないことにも、杉田さんは疑問を呈します。
「車産業の発展と反比例して駅前産業や公共交通は衰退してきた。日本経団連は現在の産業構造を前提にCO2増まで主張しているが、車依存の産業構造の転換が迫られている」
前出の上岡さんも、「道路を聖域にせず、教育や福祉などほかに優先度の高いものへの予算の組み替えが必要だ」といいます。
しかも、政府・与党は、エコカー減税のつけを将来の消費税増税で賄おうとしています。エコカー減税が環境にも景気にも逆行するのは明らかです。(佐久間 亮)
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