2009年6月21日(日)「しんぶん赤旗」
入管法等改定案の問題点
外国人住民の人権を侵害
仁比聡平議員に聞く
「出入国管理及び難民認定法」(入管法)と「住民基本台帳法」(住基法)を改定する法案が19日、衆院本会議で与党と民主党などの賛成多数で可決されました。日本共産党は「外国人住民の人権を侵害する問題が多すぎる」と判断し、反対しました。問題点を仁比聡平参院議員(党国会議員団法務部会長)に聞きました。(聞き手、写真 豊田栄光)
個人情報―法相が継続的に一元管理
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現在、日本に90日以上滞在する外国人は、入管法と外国人登録法で管理されています。入国時や在留期間の更新時は入管法(法務省担当)が適用され、外国人登録証は市町村が交付します。このためよく「二元管理」と呼ばれます。
今回の改定では、外国人登録法(登録証交付)が廃止され、「新たな在留管理制度」と「外国人住民基本台帳制度」(新設)に再編されます。
新制度では、在留資格を有し3カ月以上滞在する外国人(永住者含む)を新しく「中長期在留者」と区分し、顔写真、氏名、住居地など、個人情報を入力した在留カードを、法務省が交付します。
在留カードに入れる情報は省令でも定めるとされており、勤務先に給与額、労働条件などが加わることもありえます。在留カードの常時携帯も義務づけられ、違反すれば刑罰の対象になります。
私的生活の細部にまで立ち入り、個人情報を収集するのは、外国人にも平等に保障されるプライバシー権の侵害です。
法務大臣は在留外国人のあらゆる情報を継続的、一元的に把握、管理し、警察など関係行政機関はその情報を利用できます。これは人権上も大問題です。
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外国人との共生ではなく、犯罪対策を重視した理念から生まれた制度といえます。
在日韓国・朝鮮人など、「特別永住者」とされた外国人には、法務省から市町村を経由し、「特別永住者証明書」が交付されます。
特別永住者については、衆議院での法案修正により、「証明書」の常時携帯義務が削除されましたが、本質的な問題は解決されていません。
行政サービスから社会保障など排除
新制度には多くの問題点がありますが、2点だけ指摘します。
第一に、医療や社会保障など市町村の行政サービスから締め出される恐れがあります。
新設される外国人住民台帳に記載される対象者は、在留カードを交付された人や特別永住者などに限定されています。
在留カードは「適正な外国人」に法務大臣が交付します。在留カードを所持できない、いわゆる不法滞在の外国人は、住民台帳に記載されません。
地方自治法上は、外国籍住民であっても、差別なく行政サービスは受けられます。
このため市町村の裁量で、「不法滞在」であっても外国人登録証を交付し、国民健康保険証を発行する地方自治体もありました。
「不法滞在」の外国人は約13万人といわれます。この人たちが住民台帳への記載から排除されると、多くの外国人が医療や社会保障からも締め出される事態になりかねません。
DV被害の配偶者国外退去の恐れも
第二は、家庭内暴力(DV)の被害を受けた外国人配偶者が国外退去になる恐れです。
入管法改定案では、配偶者としての活動を継続して6カ月以上行わない場合、法務大臣はその在留資格を取り消すことができます。
DVの場合は、取り消しの対象外とされます。しかし現状は、入国管理局の審査でDVと認定されるケースは少ないのです。
DVの被害実態を理解しなければ、外国人配偶者の地位を著しく不安定にしてしまいます。
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