2009年6月26日(金)「しんぶん赤旗」
国連経済危機サミット
途上国“先進国は責任果たせ”
【ニューヨーク=小林俊哉】24日、国連本部で開幕した「世界金融・経済危機と開発に与える影響に関する国連会議」(経済危機サミット)では、途上国から、先進国が責任を果たすよう求める声が相次ぎました。
国内総生産(GDP)の8割を輸出に頼る西アフリカ・ガンビアのアイサトゥ・ヌジーセイディ副大統領は、同国のような経済構造の途上国はとくに外部経済の影響に弱いと述べ、「とくに心配しているのは、政府開発援助(ODA)の削減だ」と強調しました。
中米ベリーズのバロー首相も、主要産業である観光が経済危機で打撃を受けているとして、「(経済刺激のために)財政出動を拡大するほどの外貨がわれわれにはない。多国間や二国間などの外部の資源に頼るほかないが、借りる能力にも限界がある」と述べ、両者とも先進国に途上国支援の約束を確実に実行するよう求めました。
中国の楊潔篪(ようけつち)外相は、国際通貨基金(IMF)や世界銀行に途上国の声がよりよく反映されるような改革を求め、「途上国からもっと多くの人を上級ポストにつける」よう提案しました。
一方、米国のライス国連大使は、米国は責任を共有していると指摘しつつ、「米国は、この重要な対話の機会に、よく耳を傾け、意見を交換し、協力の精神でともに努力する」と述べるにとどまりました。
経済モデルの再検討必要 円卓会議
【ニューヨーク=小林俊哉】国連の金融経済危機と開発に与える影響に関する会議の初日の24日、ノーベル賞経済学者のスティグリッツ氏などをパネリストに、国際通貨基金(IMF)などの国際金融機関の改革について議論する円卓会議が開かれました。
スティグリッツ氏は、デスコト国連総会議長が設置した経済専門家委員会の座長。同氏は、今回の危機が浮き彫りにしたのは、一国の危機や経済政策が他国に急速に波及するという現在の国際経済の特徴だと強調。先進国がとりくんでいる経済刺激策も、「保護主義」にかたよりがちで、経済のグローバル化の速さに各国の政策対応が追いついていないと指摘しました。
同氏は、世界のすべての国が参加する国連が、今回の危機への対応で中心的役割を果たせると指摘。新たに国連に「国際経済理事会」を設置して、各国の経済政策の調整やグローバル経済に対応するよう提案しました。
また、「これまでの経済政策が基づいてきた経済モデル、経済ドクトリンを再検討しなければならない」と述べ、途上国、貧困国に新自由主義経済路線を押し付けてきたこれまでのIMFの姿勢を批判。IMFが融資の際につける条件の見直しと同時に、途上国の支援に焦点をあてた新たな国際金融の枠組みの創設を提唱しました。
一方、世界銀行のオコンジョイウェアラ専務理事は、新機構の創設には時間がかかるとして、既存の手段を有効に使うことも考えるべきだと述べました。
会場からの発言で、キューバの代表は、今回の金融危機の背景に、利益ばかりを追求する投機や先進国の規制緩和があると指摘。先進国の間には、国際金融機構を根本的に改革する議論がないと批判しました。
べネズエラの代表も、新自由主義が投機を横行させ、途上国に主要な悪影響をもたらしたと批判。「資本主義的国際秩序は、力と利益を一握りの国に集中させている」として、「平等、団結、同胞主義」に基づいた新しい国際金融秩序を創設しなければならないと主張しました。
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