2009年6月29日(月)「しんぶん赤旗」
都立駒込病院
企業参入 トラブル続出
メスがない/異常な労働強化
「患部の切開をしようとしたらメスがなかった」「看護中の病室に清掃担当者が突然入ってきた」――企業参入(PFI)事業を今年4月1日から導入した都立駒込病院(東京都文京区)で、安全上の重大なトラブルが相次いでいます。
都立病院へのPFI事業導入は、医師と看護師の業務を除く、受付や会計、医療機器・医薬品の調達など、ほとんどすべての病院業務を、民間大企業に一括して委託します。「財政負担の抑制」が目的とされています。
駒込病院でのPFI事業の実施は、対象の都立4病院の中で最初のケース。2007年3月の都の入札で三菱商事に決定。1861億円余(契約期間約20年)で落札しました。都の担当者は「この事業で、直営と比べ4・9%の財政負担の削減が見込まれる」(病院経営本部)と医療予算の削減効果を自慢しています。
ところが、病院関係者によると、患部の切開をしようとしたらメスがなく、看護師が急いで別の病棟に借りに行くという事態も発生。関係者の一人は、「メスなど医療器具の提供・管理はPFIの委託業者の仕事。そうした基本的な医療器具が欠品になるのは、ゆゆしきことです。医療現場を知らない企業に運営などを丸投げすることで、費用を削り、医療水準を落としてしまうというPFIの本質が現れている」と批判します。
病室の清掃業務を担当していたベテラン職員約60人も、PFI導入を機に委託業者が代わり、ほぼ全員が解雇されました。同病院の清掃業務を約10年間続けてきた70代の女性は「私を含め生活のため、やめたくない人ばかり。そういう人がみんな首を切られた」と怒ります。
その後に入ってきた清掃業者の職員は約30人。仕事量は2倍になったものの賃金(時給)はほぼ同じといいます。こうした異常な労働強化が、時間内になんとか仕事を済ませようと、看護中の病室に清掃担当者が入ってしまうなど、あってはならないトラブル続出の背景となっています。(今田真人)
共産党反対
都立病院へのPFI事業導入 PFI事業は、公共施設の建設、運営などを民間企業に一括して委託すること。同事業の推進・支援を内容とするPFI法は1999年7月に国会で、日本共産党以外のすべての党が賛成して可決・成立しました。石原都知事はこの法律に基づき、「都立病院改革」の名で駒込、府中、松沢など四つの都立病院を対象に、同事業を推進しています。