2009年7月6日(月)「しんぶん赤旗」
イラク派兵終結 政府報告書
誤った戦争への誤った支援
昨年末の自衛隊イラク派兵終結に伴う政府の報告書が3日、国会に提出されました。
2003年3月にブッシュ前米政権が始めたイラク侵略戦争について、オバマ大統領は6月4日、カイロでの演説で「世界中で意見の対立を生んだイラク戦争は、外交手段による国際的合意の必要性を米国に認識させた」と述べました。
戦争を正当化
当事者の米国が自らの誤りを認めています。ところが政府報告書は、旧来のイラク戦争正当化の論理にいまだに固執しています。
「(イラクは)大量破壊兵器の査察に対する協力を含む累次の国連安保理決議に…継続的に違反した」「武装解除の義務を履行する最後の機会」に「イラクは応じなかった」ことから、米国などによる武力行使が始まったと断定しています。実際にはイラクに大量破壊兵器が存在していなかったことが米政府自身の調査で判明しましたが、政府報告書はその点をまったく考慮していません。
もう一つの重大な点は、今回の報告書で初めて明らかにされた、航空自衛隊による空輸活動の全ぼうです。
クウェートを拠点に03年12月から昨年末まで約5年に及んだイラク国内での空輸活動。政府は人道支援物資や国連職員を空輸したと宣伝してきましたが、実際は人員で6%、物資で17%にすぎないことが判明しました。(グラフ)
一方、人員では米兵が51%、他国軍兵士を含めると65%を占めます。物資では、06年7月までイラク南部サマワに駐留していた陸上自衛隊関係が37%で最多、多国籍軍関係の30%が続きます。
憲法9条違反
昨年4月には名古屋高裁で、武装米兵の空輸を行っている空自の活動は「他国の武力行使と一体化」しており、「憲法9条違反」であるとの判決が下されました。今回、政府自身の報告書により、イラクで武力行使を行っている多国籍軍の空輸が活動の大半を占めていることが証明されました。
政府は、自衛隊のイラク派兵が、誤った戦争に対する誤った支援だったことを明確に認識すべきです。(竹下岳)
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