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2009年7月14日(火)「しんぶん赤旗」

年金積立金

市場運用で損失18兆円

制度改悪 自公の責任大きく


 わずか1年9カ月で18兆円の損失。1日に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が発表した「2008年度業務概況書」は、08年度の公的年金積立金の市場運用が9兆6600億円の損失となることを明らかにしました。

 一時は18兆円以上の利益を積み上げましたが、07年7月の世界的な金融バブル崩壊で急激に悪化。07年7月〜09年3月の損失は17兆8800億円に上り、GPIFが運用を始めた01年以降の累積運用益も6700億円まで減少しています。(グラフ)

国民の財産を

 公的年金積立金の原資は、国民から強制的に徴収される年金保険料です。これを元手にした運用が短期間で巨額の損失をだした背景には2000年の年金制度改悪があります。

 積立金はそれまで、大部分を大蔵省に委託し、財政融資資金として運用していました。これを当時の自民、自由(後に民主党へ合流)、公明連立政権は「(株や債券に)分散投資すれば、長期的には安全で有利な運用が可能になる」と、厚生省が金融市場で直接運用する方法に変更。運用目的も、それまでの「公共の利益の増進」から、市場で利益を上げ「年金事業の運営の安定に資すること」へと変えました。

 日本共産党の小池晃参院議員の「(運用期間が)長ければ長いほど予期せぬ事態で大穴を開けることがある。分散投資だから必ず安全だとは言えない」との追及に、丹羽雄哉厚生相(当時)が「市場で運用するのだから、まさにその通り」と認めたように、年金積立金をかけ金に金融バクチに興じようというものでした。

 公共の利益を追求する運用から、金融市場の一プレーヤーとして利潤の極大化を追求する運用へと百八十度転換した結果、ひとたび金融危機に直面するや巨額の損失を生みだすことになったのです。現在、市場運用として国債や株に投資されている積立金の総額は92兆5300億円に達します。

 さらに、リーマンショックで株価が急落した08年9月以降、GPIFが国内株を2兆6400億円も買い増ししていたことにみられるように、積立金が株の買い支えに使われているとの指摘もされています。

安定に反する

 政府の「100年安心プラン」は、積立金の市場運用利回り4・1%以上を前提にしています。公明党などは、これまで制度の“安心”が問われた際には、積立金の市場運用利回りが前提を上回っていることを「『100年安心』は揺るがず」(公明新聞07年1月27日付)の根拠にしてきました。

 しかし、「100年に1度」といわれる今回の金融危機に限らず、97年のアジア通貨危機、01年のITバブル崩壊でも年金積立金が市場運用で巨額の損失をだしてきたことをみれば、市場運用が「年金事業の運営の安定」に反することは明らかです。

 政府・与党は、現在140兆円の年金積立金を40年度に207兆円まで積みます計画です。世界でも異常な積立額であり、段階的に取り崩し年金給付にあてるべきです。

 なにより、積立金を金融バクチに投じるまねは一刻も早くやめるべきです。

 (佐久間亮)

グラフ


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