2009年8月1日(土)「しんぶん赤旗」
“侵略美化の教科書 子どもに渡せない”
横浜市 4日に採択の動き
阻止の運動 急速に
2010年度から使用する中学校の教科書採択が始まりました。今年度は日本の侵略戦争を美化、合理化する歴史教科書が2種類も採択の対象となっています。各地でこれらの教科書を採択させようという動きが現れ、これを阻止する運動が求められています。
問題になっているのは、05年に文部科学省の教科書検定に合格した「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆した扶桑社版と、今回新たに合格した自由社版。自由社版は「つくる会」が内部抗争の末、分裂した結果できたものです。どちらも代表執筆者は藤岡信勝氏で、現在の「つくる会」会長です。
今月4日に採択を予定している横浜市。前回05年の採択では、扶桑社版の採択に教育委員6人中5人が反対しました。ところが当時、扶桑社版の採択をただ一人主張した今田忠彦氏が現在、教育委員会委員長を務めています。
教育委員会会議規則は「可否同数の場合は委員長がこれを決することができる」としています。今田氏の権限は絶大です。
同市の右派団体は昨年11月以来、市教育委員会に陳情や請願を集中していました。
昨年4月から委員で委員長職務代理も務める小M逸郎(いつお)氏は、扶桑社版を支持しています。「『大東亜戦争』が一方的に日本のあしき侵略とは言い切れない面を持つ」などとのべています。
このような人選をしたのは中田宏市長(7月28日に辞任表明)。7月17日、05年に扶桑社版を採択した東京都杉並区の山田宏区長らとともに「『よい国つくろう!』日本国民会議」を今秋に設立することを都内の集会で発表。基本理念の一つに「日本人の誇りと自信と夢を回復する」と掲げています。
他の地域でも危険な動きが起きています。 千葉県では6月、当選したばかりの森田健作知事が提案した野口芳宏氏を県教育委員に任命する議案が、賛成多数で可決されました。森田、野口両氏はともに「日本教育再生機構」の代表委員を務める間柄。同機構は「つくる会」が分裂した後、同会の元会長だった八木秀次氏が立ち上げた団体です。
05年に扶桑社版を採択した東京都、愛媛県などでも、引き続き採択しようとしています。市民団体が「つくる会」教科書を採択しないこと、現場教員の意見を尊重することなどを教育委員会に要請しています。
「つくる会」教科書の採択に反対する「子どもと教科書を考える横浜市民の会」は7月21日にシンポジウムを開き、160人が参加しました。署名や教育委員あてに2社の教科書を採択しないよう、ファクスでの要請を呼びかけています。新日本婦人の会神奈川県本部は、要請はがきを緊急に作製します。
12日に採択を予定している杉並区では「杉並の教育を考えるみんなの会」が教育委員会に要請するとともに、「つくる会」教科書の危険性を知らせるパンフレットも作製して区民に事態を知らせ、7月21日には800人の参加で集会を開いています。5日には区庁舎前で集会を開く計画です。
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