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2009年8月14日(金)「しんぶん赤旗」

9条生かした外交が必要

自民の軍事対応論こそ危険なギャンブル


 「私たちはギャンブルをやっているんじゃない。国民の生命、財産、国家の独立がかかっている」―自民党の石破茂農水相(元防衛相)は9日、テレビ朝日系の討論番組でこう語気を強め、北朝鮮のミサイル攻撃への軍事的対応の必要を主張しました。「撃たせない」努力ばかり言って「撃たれた」際の対応を考えないのは「ギャンブル」だというのです。

パンフを作成

 自民党は、この「ギャンブル」攻撃が気に入っているようで、『政治は、ギャンブルじゃない。』と題した民主党批判のパンフを作り、同様の批判をしています。

 西広整輝元防衛次官は、次のように述べたことがあります。

 「日本では防衛というと、日本が攻められた時どうだといった議論が多いのですが、それは極限状態、日本にとってはカタストロフィ(大破局)なんですね。防衛政策というのはそうした破局的な状況になるのを、いかにして回避するか、国が生き残り発展していくための方策を考えることです」(防衛省元幹部3人による『我、自衛隊を愛す 故に、憲法9条を守る』所収の竹岡勝美・元防衛庁官房長の論文から)

 石破氏らの「ギャンブル」論は、西広氏が批判する議論の典型です。

 例えば日本には50基以上の原発があり、日本最大の柏崎刈羽原発など、多数が日本海側に設置されています。竹岡氏らは、それらがミサイルなどで攻撃されれば、チェルノブイリ事件のような「大破局」が引き起こされると指摘しています。

 この種の攻撃に軍事的に対応すると、どうなるか。現在のミサイル防衛システムには、飛んでくるミサイルを確実に迎撃する能力はありません。確実に破壊するには、ミサイル発射時点で撃ち落とすなど、先制攻撃に限りなく近づくことにならざるをえません。それは相手側の反撃を誘発するだけの、軍事的ギャンブルそのものです。

 そうした破局的状況を回避するには外交と政治解決の道しかありません。現にオバマ米政権は、最近の北朝鮮による軍事的な挑発行動にも、軍事的対応ではなく外交を前面に出して対処しています。

 政府代表でないものの、クリントン元大統領が4日、米人記者解放のために訪朝し、金正日総書記と会談。記者は解放されました。軍事的緊張が高まった1994年にもカーター元大統領が訪朝し、政治解決への道を開いたことがあります。

解決遠ざける

 日本も2002年には小泉首相が訪朝し、日朝平壌宣言を合意しました。この交渉をもたらしたような外交チャンネルが途絶えた今日、北朝鮮のミサイル・核問題に対して、敵基地攻撃論や核武装論などの軍事的対応ばかりが突出することは、包括的解決を遠ざけ、国民を軍事的ギャンブルに巻き込む、危険極まりない道です。

 イラク戦争の失敗でアメリカの「一国覇権主義」が破たんし、国際社会は国連憲章に基づく紛争の平和的、外交的解決を求める方向に動いています。21世紀は軍事ではなく外交こそ重要な意味をもつ時代です。憲法9条を生かし、「ミサイルを撃たせない」外交努力こそ、日本が「生き残り発展していく方策」です。(洞口昇幸)



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