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2009年8月24日(月)「しんぶん赤旗」

総選挙

問われる自公政権退場後の政治
日本共産党は「建設的野党」として奮闘

テレビ党首討論 志位委員長の発言


 党首討論3番組には、日本共産党の志位和夫委員長のほか、自民党の麻生太郎総裁、民主党の鳩山由紀夫代表、公明党の太田昭宏代表、社民党の福島瑞穂党首、国民新党の綿貫民輔代表が出演しました。

NHK「衆院選特集 党首に問う」

 23日放映のNHK日曜討論「衆院選特集“党首に問う”」で、日本共産党の志位和夫委員長は、司会の影山日出夫解説委員の質問に答えながら、経済政策と外交政策の両面で大きな転換の方向を明確に示しました。その発言を紹介します。番組では、主要6政党に加え、みんなの党、改革クラブ、新党日本の代表も参加しました。

自公政権の「景気対策」

大企業応援政治が国民のくらしを土台から壊した

 冒頭、影山氏が「政策の継続か転換かが、争点になっている」と提起。自民、公明はそろって、経済成長率が4〜6月期でプラス3・7%となったことを強調、麻生首相は「先進国のなかでは群を抜いて高かった」、太田代表は「これまでの政策を切れ目なく執行する」などとのべました。影山氏が「たしかに、効果はでてきているのではないか」と質問したのに対し、志位氏は次のようにのべました。

 志位 今度の経済指標についていいますと、GDP(国内総生産)はたしかに、プラスになったとはいえ、ずっとマイナスだったものが、前期比でちょっとあがっただけなんです。なによりも、雇用者報酬が前年比で、マイナス4・7%で史上最悪なんです。つまり、賃金がうんと下がっている。それから、中小零細企業の倒産件数。帝国データバンクの調査ですけれども、7月で、去年より15%も増えている。ですから、一番の経済の支えが崩れているのです。

 これまで自公政権がやってきたやり方というのは、一部の輸出大企業を応援して、これを強くすれば、その成果が、いずれは国民にしたたり落ちてくる――「トリクル・ダウン」といわれますけれども、それが失敗した。結局、一部の輸出大企業は大もうけした。しかし、国民には、派遣労働のような「使い捨て労働」がひどくなり、ワーキングプア(働く貧困層)が広がる。そして、社会保障の連続削減で、介護、年金、医療、障害者福祉、あらゆる点で、社会保障がズタズタになる。

 国民の土台を壊してしまったということですから、この雇用と社会保障という土台から暮らしと経済を立て直して、日本の経済をまともな発展に乗せるという大転換が必要だと思います。

いま必要な経済政策

家計に軸足を移すことなしに日本経済は発展しない

 さらに、経済政策が議論となり、影山氏は「各党の経済政策は『企業が先か、家計が先か』の考え方の違いのようだ」と指摘。麻生氏は「税収を伸ばす。そのためには、まず景気を回復させたうえで、消費税をと申し上げている」と主張、鳩山氏は「業界を通じて予算配分するより、(家計へ)直接的な支援をしたほうが予算全体が少なくてすむ」とのべました。志位氏は、麻生氏の考え方を次のように批判しました。

 志位 支援の先が、結局、大企業の一部の競争力をまた強めようというやり方なんですね。それが、この間やってきて失敗したという事実をきちんと見る必要があると思うんです。

 大企業の競争力をつけてやると、そのために、たとえば、労働コストを削減するということで、不安定雇用をどんどん増やしました。(労働者の)3人に1人は、不安定雇用の労働者。そして、女性や若者は、2人に1人です。そういう中で、1000万人を超えて「働く貧困層」が広がると(いう事態です)。こういう中で、世界経済危機が襲いますと、「派遣村」ができるとか、非常に深刻な事態が起こる。

 それから、もう一つ。大企業の競争力のために、社会保険料負担を減らそうということで、毎年2200億円の社会保障費の削減をずっと続けてきた。その結果、たとえば後期高齢者医療制度、障害者自立支援法、あるいは、(生活保護の)母子加算、老齢加算の切り捨てなど、社会保障のセーフティーネット(安全網)がボロボロになったわけです。

 (自公は)“大企業の力を強くすれば、(景気は)よくなる”と(いってきた)。しかし、よくならなかった。(恩恵が)したたり落ちるといってきたけれども、落ちなかったわけですね。この事実を踏まえて、やはり、国民の家計を応援する。大企業から家計に、経済政策の軸足を抜本的に転換すること抜きには、私は、日本の経済は立ち直っていかないと思います。

消費税増税に頼らない財源

軍事費などのムダをただし大企業・大資産家に応分の負担を

 つづいて財源論の議論となり、「消費税をあげないで、(財源が)足りないとなると赤字国債を発行するのか」との質問に、鳩山氏は「絶対という言い方ができるかどうかわかりませんが、われわれとすれば十分にできる」とのべ、予算の無駄遣いを見直して必要な予算を捻出(ねんしゅつ)する考えを表明。志位氏はつぎのように主張しました。

 志位 無駄遣いという点では、不要不急の大型公共事業。たとえば、東京外郭環状道路、1兆8000億円の事業規模ですね。こういうものはやめる。あるいは、川辺川ダムや、八ツ場(やんば)ダム、スーパー中枢港湾。これでだいたい、2兆円ぐらい削れると思います。ただ、それに加えて、やはり、軍事費にメスを入れる必要がある。年間5兆円の軍事費に縮減のメスを入れる。とくに、米軍への「思いやり予算」は、廃止する。ここを「聖域」にしてしまうといけない。

 もう一つは、やはり、歳入の問題ですが、大企業と大資産家に対するゆきすぎた減税をただす必要があると思うんです。たとえば、証券優遇税制ってありますでしょう。いま、株の売り買いや配当にかかる税金というのは、10%なんです。こんな国はないですよ。アメリカが25%、フランスは29%です。額に汗して働いている人の税金より、ぬれ手であわの大もうけの大株主の税金が軽いというのは、ただす必要がある。大企業の負担も、社会保険料や優遇税制のことを考えたら、だいたいフランスの7割、ドイツの8割という状況ですから、応分の負担をしてもらう。

 この軍事費と大企業・大資産家優遇を「聖域」にしないで、メスを入れないと結局、消費税を増やすということになりますから。ここが鍵を握っていると思います。

 他党からは無駄をなくすという発言は相次ぎましたが、軍事費と大企業・大資産家優遇にメスをいれるという発言はありませんでした。

 消費税については、綿貫氏が「直間比率の見直し」を主張、鳩山氏は「消費税の議論は年金の問題として当然、あつかう必要がある」と将来の増税を主張。麻生氏は「われわれは年金の国庫負担を2分の1にしたが、民主党は反対した」とのべ、鳩山氏から「税が間に合わないから埋蔵金でやったから反対した」と反論されました。ここで志位氏が次のように指摘しました。

 志位 (自公政権は)国庫負担を2分の1にするという名目で定率減税を廃止したわけです。ところが定率減税の廃止のお金はそこに使われないで、他に使われて、結局埋蔵金ということになった。これは本当に国民のみなさんに対する公約違反ですよ。

 この年金の問題を考えるんだったら、やはり100万人もの方が無年金だ、そして国民年金の平均額が大体4万7千円と、こういう無年金、低年金、そして空洞化、これを解決しようと思ったら、やはり最低保障年金を入れる必要がどうしてもあります。その最低保障年金、私たちは、土台の部分は5万円、それに上乗せしますから、8万3千円ぐらいを国民年金で保障するところからスタートしようと(提案しています)。その際の財源については、先ほどいったように、大企業や大資産家、ここに応分の負担を求めるということで、しっかりまかなっていこうという提案をしておりますけれども、そういう方向が必要です。

新しい日本の政治へ

“財界主導”の政治との決別が政党の試金石

 政治と官僚の関係に議論が移り、自民、民主とも「官僚のコントロール」を強調、みんなの党は給与法改定による給与引き下げを主張、民主党の人件費2割削減も話題になりました。影山氏は「共産党は公務員いじめだけではダメだということか」と質問したのに対し、志位氏は次のように答えました。

 志位 もちろん、私たちはあしき官僚主導の政治からは決別する必要がある、天下りなどは全面禁止すべきだということをいっています。

 ただ、私は、日本の政治の一番大きな問題は、「財界主導の政治」だと思います。暮らしの問題、どの問題をとっても、ぶつかりますのは、やはり財界の問題になってきます。

 たとえば、なぜここまで「使い捨て」の労働が広がったかといいましたら、1995年に、日経連が「新時代の『日本的経営』」ということで、これから労働者を三つに分けて「使い捨て」労働を増やすんだと(提起した)。この号令が始まりだったんです。それから、なぜ社会保障費2200億円の削減が始まったかといいますと、「経済財政諮問会議」のメンバーだった日本経団連会長が号令かけたのが始まりだった。なぜ消費税増税の議論がこうやって起こるかといいますと、2003年1月に日本経団連が提言をだして、消費税は16%、法人税は下げろと、この号令なんです。

 ですから私は、この「財界主導の政治」から決別し、本当に「国民が主人公」の日本にしていく、この転換こそいま求められている。これをやる意思があるかどうかが、政党の試金石だということを言いたいですね。

 これに対し、麻生氏は「私どもを応援している団体は、官僚や大企業だと。(それなら)組合員に応援されているところも、その影響力は大きいと思わなければいけない」などと問題をすりかえ、太田氏は「大企業が特別に悪いということ以上に、国際競争力のなかで注文することは注文する」などと言い訳しました。

問われる日本の“外交力”

憲法9条を生かした平和外交への転換が必要

 最後に外交と安全保障の問題がテーマとなり、鳩山氏は「外交・安全保障はそれなりの継続性が必要。(自衛隊派兵は)オバマ大統領との信頼関係のなかで包括的な議論をおこなって解決したい」と主張。「インド洋からの即時撤退を求める」とした福島氏との違いがあらわになりました。「建設的野党としては、民主党の外交政策をどう評価するか」と問われ、志位氏は次のようにのべました。

 志位 やはり、インド洋にたいする派兵は即時撤兵させるべきというのが私たちの立場です。この立場を強く要求していきます。

 私たちは、いまの世界の平和という問題を考える際に、国際貢献というとすぐ軍事だと、あるいは自衛隊を動かすという発想から脱却する必要があると思うんです。9条を生かした“外交力”こそ、いま問われている問題と思うんですね。

 たとえばオバマ大統領が、プラハでああいう核兵器廃絶の演説をした。そのときに被爆国として、それをどういうふうに前に動かすかという“外交力”が問われる。

 あるいは、北朝鮮の核兵器の問題、これはなんとしても止めなきゃなりません。そのときに、いま、アメリカも、韓国も、中国も、外交的ないろんなルートをつくりながら、交渉していますでしょう。外交のメッセージが唯一ない国が日本なんですよ。軍事だけでことを構えようとしている。

 やはり、国際貢献というと軍事だという、ここから脱却して、9条を生かした平和外交に転換する必要がある、こう私たちは強く言いたいと思います。


フジ系「新報道2001」

 23日放映のフジテレビ系番組「新報道2001」では、6党党首の討論となり、小泉「構造改革」路線への反省や外交問題などが議論になりました。

小泉「構造改革」の総括

「子どもの夢、若者の希望、お年寄りの安心」を奪った反省が必要

 麻生氏は、小泉「構造改革」についてプラスとマイナスがあったとし、「ワーキングプア(働く貧困層)」に言及したものの、「(労働者)派遣法がなければ、約47万人が基本的に失業につながった」などと発言。志位氏は、次のように反論しました。

 志位 派遣(労働自由化)を入れなかったらその人たちは失業になったとおっしゃいましたが、2001年、2002年ぐらいから製造業がどんどん(生産を)拡張していった時期に派遣を増やした。かりに派遣(労働)を自由化しなかったら、正社員を増やしたわけです。どのみち人手が足りなかったわけですから。

 問題は、派遣(労働の自由化)ということになったために、景気悪化でひどい「派遣切り」が行われ、何十万もの人が路頭に放り出された。これに一番の問題があるわけですから、そこの反省が必要だと思います。

 これに対し麻生首相はまったく無反省な発言を繰り返し、太田氏は「世の中が構造変化をしてしまっている」などと言い訳をしました。

 また、自民党のマニフェストに「日本を守る責任力」などと書かれていることについて、鳩山氏は前回(4年前)の総選挙当時の自民党の公約が「全然果たされていない」と批判。麻生首相は、郵政民営化、消費者庁設置、教育基本法改悪をあげ「いずれも達成されている」と述べました。志位氏は、次のように指摘しました。

 志位 先日の討論会で麻生さんが、「子どもに夢を、若者に希望を、高齢者に安心を」とおっしゃった。私は、あれを聞いて本当に反省がないなと思ったんです。

 「子どもに夢」をといいながら、たとえば(生活保護への)母子加算を廃止する、食べ盛りの子どもの食費まで切り詰めざるをえないような状況が起こっています。

 「若者に夢を」といいながら、派遣労働をどんどん増やして、「ワーキングプア」といわれる人たちを1千万人を超えるまでに増やしてしまった。

 「高齢者に安心を」といいながら、後期高齢者医療制度というひどい差別医療の制度をつくった。

 こういうものに対する反省がまったくないまま、「責任力」といっても、これはおかしいです。この反省からいわなければ、先の展望はみえてこないと思います。

日米関係をどうする

米国には前向きの変化と変わらぬ部分、複眼で対応

 外交・安全保障のテーマとなり、ナレーションは「自らを『外交の麻生』と呼ぶ総理」と「友愛外交」を叫ぶ鳩山氏に続いて、「日米軍事同盟のゆがみをただす」と主張する志位氏を映し出しました。

 麻生氏は、「北東アジアには民主主義(の価値観)と違う国が存在して核実験を2回もし、脅威が存在している」と主張。志位氏はこれに対し、次のようにのべました。

 志位 北朝鮮の話を、すぐ何かというと麻生さんはお出しになるんですね。もちろん北朝鮮の核実験は絶対に許しがたいことですし、北朝鮮を対話の場に引き戻して、特に6カ国協議を再開させることが大事なことです。そのためにはやっぱり外交しかない。

 いま世界では、例えばアメリカはクリントン元大統領を送り込んで、そして対話のルートをもう一回復活させようという模索を始めています。それから韓国は金大中(キム・デジュン)元大統領が亡くなった(ことへの北朝鮮の)弔問団を受け入れて今日、李明博(イ・ミョンバク)大統領が会談して、ここも対話をまさしく始めている。中国は武大偉外務次官を送り込んで、これも対話を始めている。

 米韓中それぞれが外交でことを進めようとしているときに、麻生さんの口から出るのは軍事の話ばかりなんです。軍事で身構える話ばかりやっている。こんな国はないですよ。外交で解決することが大事だと思います。

(日米関係)

 「緊密で対等な日米同盟関係をつくる」という民主党の公約が議論になり、麻生氏が「どのような形で対応するのか。(民主党は)アメリカのいっていることにことごとく反対している」などと主張。鳩山氏は「アメリカにメッセージを出せる日本にしなければいけない」と述べつつ、「外交の継続性もそれなりに認める必要がある」との立場を表明しました。これに対し志位氏は次のように述べました。

 志位 アメリカとの関係を考える際には、アメリカが前向きに変化している面と、変わらない面とを複眼でとらえて、前向きに変わる部分は日本として後押しする、そして変わらない部分はきちんとものをいっていく、こういう姿勢がいると思うんです。

 オバマ大統領がプラハで核兵器廃絶の演説をした。私は、これは画期的な勇気ある発言だと思います。ですから書簡を送り、歓迎するということを伝えました。こういう問題について、アメリカ(大統領)の「核兵器のない世界を」という提起に対して、どうやって本格的に協力していくか、このメッセージが日本政府からは伝わってきませんね。こうした前向きの問題については反応しない。

 そして後ろ向きといいますか、変化しない部分、例えば在日米軍基地の問題、海外派兵の問題、こういう変化がない部分はアメリカにつき従っていく。この外交は最悪ですよ。

 麻生氏は、オバマ大統領の演説の背景には「日本が核の廃絶運動を国連でスタートした」ことがあると述べ、志位氏が次のように反論しました。

 志位 国連でやってきたと(いう)。たしかに日本の(核廃絶)決議を出してきたということはあるんですけれども、非同盟諸国が出している、核兵器廃絶を目標にして期限を切って交渉を始めようと(いう決議)、これにはいつも棄権しているんですよ、日本は。これは本当に恥ずかしい態度だと思いますよ。

 司会者から「鳩山さんはもともと憲法改正論者だった」と問われた鳩山氏は、「憲法改正の議論をいますぐ行うつもりはない」としつつ、「自衛隊を憲法の中にうたう必要があるのではないか」と述べました。

(日中関係)

 番組では、中国のGDP(国内総生産)が今年中にも日本を上回る可能性があるとのグラフが示され、司会者が「世界第2位の地位を奪われる」として、政治の対応を問いかけました。志位氏は次のように述べました。

 志位 中国が経済発展を遂げる、そして日本のGDPを抜く、この動きについて、「脅威」と考えたり、「大変だ」というふうに考えることには、賛成できないんです。やはり、中国と日本が平等・互恵の交易関係を発展させる、戦略的互恵関係ということをつくられた、これには私は賛成なんですよ。それをもっと発展させていく。

 その際に、中国も日本もそれぞれが内需を大事にしながら交易関係を発展させることが大事です。中国も内需主導にかじを切り替えて、貧困の問題なども具体的にただしていくという新しい方針をいまやっています。日本の側がやはり、「外需頼み」から内需中心、そして輸出大企業中心から家計中心に経済政策を転換して、それぞれが内需を大事にしながら交易していくと(いうことが大事です)。

「建設的野党」として

与野党一致してきた給付制奨学金の導入を

 最後に街で聞いた国民の声が紹介され、「(民主党は)自民党の悪口ばかり。もうちょっと仲良くすればいいのに」という中学生のコメントも。志位氏は、そこで次のように提案しました。

 志位 今後、新しい国会がつくられて、私たちは「建設的野党」として(新政権に)協力できるものは協力する、反対するものは反対するとやっていこうと思うんですけれども、この論戦のなかで例えば奨学金、日本ではいま返さなければならない返済制ですね。これを給付制にしようと私たちは提案してきたんですが、与党の側からもそういう意見が出てきて、野党もみなそうなっていますね。ですから、こういう一致点はどんどん前にすすめていくという努力はぜひやっていきたいと思っています。

 最後に、各党がフリップに獲得目標を書き込み示しました。

 志位 私たちは、「比例代表を軸」にということで選挙をやっていますが、(全国)11の比例ブロックのそれぞれで議席増を果たしたいと思っています。


テレ朝系「サンデープロジェクト」

 23日に放映された「サンデープロジェクト」では、総選挙結果についてのマスコミ予測から核密約、郵政民営化などが6党党首で議論されました。志位和夫委員長の発言を紹介します。

民主党中心の政権

よいことには協力、悪いことにはきっぱり反対

 冒頭、司会の田原総一朗氏は、各紙の総選挙予想を示しながら、「民主圧勝のマスコミ予測が出ているが、どう考えるか」とのべ、「共産党の分析能力をかっている。マスコミの民主圧勝の予測をどう分析する」と志位氏に問いました。

 志位 やはりこれは自民・公明政権退場の圧倒的流れが起こっていますね。国民の暮らしの安心と希望を奪ってしまったと、もう退場してくれと、この流れは圧倒的でもう決定的だと思います。

 同時にこれは民主党中心の政権になるでしょう。それに対して朝日新聞の世論調査で重要だと思ったのは、昨日の(「朝日」の)社説でも出ていますが、民主党の「子ども手当」は55%、「高速道路の無料化」は67%が「評価しない」と。財源についても「不安を感じる」が83%、こういう状況があるんです。ですから自公はもうだめだけど、民主にも不安があると(いう状況です)。

 そういうなかで、私たちは「建設的野党」といっていますけれども、良いことには協力する、しかし悪いことにはきっぱり反対する。こういう党がきちんと伸びてこそ。自公政権はもう退場ですから、その後の政治をどうするかが(問われます)。

 田原 今までは自民は共産が敵だった。これからは民主が共産の敵になる?

 志位 敵というより、良いことには協力しますよ。しかし私たちが是認できない、いろいろな問題がある。憲法の問題にしても消費税の問題にしても、考え方が違います。これはきちっといっていきます。

経済政策

働く人の賃金下がり、中小企業の倒産最悪では景気よくなったとはいえない

 司会の田原氏は、昨年来の経済成長率を紹介しながら、「今後、景気は良くなっていくのか。(自公政権による)経済政策は、借金によるバラマキではないか」とのべ、麻生氏は「これまでの政策の結果だ。バラマキではない」と主張。これに対し、志位氏は次のように語りました。

 志位 先ほどのGDPの額ですけれども、四半期四つ連続マイナスでこれに対して上がっただけなのですよ。つまり今年の1〜3月期に比べて上がっただけなのですよ。ですから前年同期比ですとマイナス6・4%なのですよ。

 何よりも一番重大なのは雇用者報酬、つまり働く人の賃金、これは減っている。これはとても(景気が良くなったとは)みられません。雇用者報酬は落ちている。中小企業の倒産は最悪の状況になっている。四半期四つ連続でマイナスで、これに対してあがっただけ。景気が本当に良くなったわけではない。

民主党の財源論

軍事費と大企業・大資産家を「聖域」にしている

 財源論が議論となり、民主党の鳩山由紀夫代表が「お金の使い方を正しい方向にずらしていく」と述べたのに対し、田原氏は「民主党の財源論は信用できるか」と志位氏に問いかけました。

 志位 民主党の財源論は、私はかなり無理があると思います。率直に言って、例えば軍事費の問題、これに切り込むのか、あるいは大企業・大資産家に対する税負担を求めるのか、ここらへんを「聖域」にしてしまいますと、結局つじつまが合わないことになると思いますね。

 やはりこの二つに切り込んでいく。そして私たちの案はいくつか暮らしを守るための財政出動を提起していますけれども、例えば子どもとお年寄りの医療費の無料化とか、本当に必要なところに重点的にやっていく。新しい借金をつくらないという立場を明確にしています。

日米核密約

核兵器持ち込み自由の密約を、官僚が引き継ぎ、国民をだまし続けた

 田原氏は、テーマを「非核三原則」に移し、村田良平氏など元外務事務次官などが日米核密約を認める証言が明らかになったことを示し、「(密約は)あるのか、ないのか」と麻生氏にただしましたが、麻生氏は「ないと思う」とこれまでの立場に固執。志位氏は、核密約のコピーを示しながら、次のように語りました。

 志位 これがアメリカの側の文書です。アメリカの側から公文書としてでてきた。これを見ますと、航空機や艦船による(核兵器の)持ち込みについては、(日米の)事前協議の対象としない。つまり、1960年の日米安保改定時に、重要な装備の変更については事前協議の対象にするという交換公文があるのですね。ところがその対象にしない。すなわち、核兵器を持ち込むことについて、航空機や船舶で持ち込む場合には、持ち込み自由だ、事前協議の対象にしませんよ、という密約が交わされていた。1960年当時の「討論記録」という形で。アメリカでは公開されていて、私どもがアメリカにいって見つけてきたものなんです。

 田原 (村田氏が)言っていることは正しい?

 志位 (密約の存在について)言っていることは正しいんです。

 もう一つの問題は、(外務)事務次官が(核密約を)引き継いでいた。事務次官が引き継いでいて、大臣に教えたり、あるいは総理大臣に教えたり、伝えなかった大臣もいた。これだけ重大な問題で、国民をだましつづけてきた。それをしかも官僚がそれをやっていた。麻生さんがもし、ご存じなかったら、官僚がそういうことになっていたということになるんですね。

 これに対し、麻生氏は「(村田氏)以降で密約の文書があったという人はいない」などと述べました。これに対し、志位氏は、「たくさんの人がいっているじゃないですか」と反論しました。

 朝日新聞の星浩編集委員が「92年のブッシュ大統領(父)以降は、(米国は)海外には持ち込みはしていない」と発言。これに対し、志位は次のようにのべました。

 志位 アメリカはたしかに、この間、水上艦からは核の配備を除くとしているが、攻撃型原潜は核兵器はいつでも積めるような態勢は解除していない。特に、トマホーク型の核兵器です。(核密約は)今も続いている問題なのです。

 民主党の鳩山代表は、密約について「あるという蓋然(がいぜん)性が強い。(民主党政権になれば)アメリカにいって事実を調査し、しかるべきタイミングで国民に説明する」と述べました。田原氏は、「国民のほとんどは、政府が『ない』といっているのは、ちょっとウソじゃない、かと(思っている)」と述べ、志位氏は、「そうです。国民だましだ」と応じました。

 志位 結局、自民・公明に求められるのは、核密約をちゃんと認めることです。そして、公開し、廃棄する。そして、(非核三原則の)「持ち込ませず」を文字通り実現し、非核の日本にする。ここができなかったら、もう退場しかないですね。

「非核の日本」になってこそ世界に向かって核兵器廃絶を主張できる

 番組のコメンテーターからは、「(核密約の)過去のいきさつをはっきりさせる」ことと、「将来のこと」として北東アジアの非核地帯も検討すべきではないかとの意見が上がり、志位氏は、次のように語りました。

 志位 過去の問題と将来の問題は、一体のものだと思います。過去の歴史をきちんと清算して、「非核の日本」になってこそ、世界にむかって核兵器廃絶といえるし、北東アジアの非核っていうことがいえる。

 この問題で、田原氏が「オバマ大統領に核を持ち込まないとOKさせるのか」とただすと、鳩山氏は「OKさせるまで頑張る」「アメリカ政府も非核三原則を守りたいといっているのだからオバマ氏を説得する」とのべました。これとは対照的に、麻生氏は、「すぐにアメリカにいってオバマ大統領と交渉しますといってほしい」と田原氏にいわれましたが、「お言葉を返すようだが、密約はないと申し上げている」とかたくなでした。

郵政民営化

国民の虎の子を投機マネーに使うことはやめ、3事業一体で公的事業として再生を

 「郵政民営化」をめぐる議論では、田原氏は、「一番の問題は郵貯だ。200兆円の金を民営化したから、金融市場に展開すると思っていたが、ほとんど国債と地方債にしている」と問題視しました。これに対し、志位氏は次のように述べました。

 志位 それは違うと思うのです。郵便局に貯金する、国民の虎の子ですよね。これを運用する際に、どんどん自由に展開して、投機マネーにお金を使うというやり方を正しいやり方だと思いません。そういう、危険なところにどんどんお金をまわしていく、そういうやりかたで、世界のカジノ資本主義に乗り出す、それが一番の問題です。

 田原氏は、「お金を郵貯があつめる力があるが、それをどう貸し付けるかの力はまったくない」と発言。鳩山氏は、郵貯部分を「民営化したことは間違い」、社民党の福島氏も「4社化などの見直しはある」と発言。志位氏は、次のように述べました。

 志位 (貸し付ける)能力がないというが、今年度は、数兆円の規模で外国社債を買うという方向にいきかけている。このままいくと、本当に危険な外国のわなに手をだすことになる。(民営化を)中止する必要がある。やはりユニバーサル(全国一律)サービスを守って、3事業一体で、公的な機関として再生させる必要がある。

年金問題

社会保険庁解体・民営化を中止し、国の責任で最後の1人まで解決を     

 5000万件に上るとみられる「宙に浮いた年金」の話題になり、「2010年中に解決する」と公約に掲げる自民党に対し、田原氏は「できるのか」と質問。麻生氏は、「年金特別便の確認作業は年内に終える」と述べ、自民党の“実行力”を懸命にアピールしました。これに対し、志位氏は次のように述べました。

 志位 これは2008年の4月までに解決するというのが、安倍元総理の約束だったのですね。その約束が果たされていないわけですよ。それで、これはやはり、結局国民の年金受給権を守ることよりも、徴収の方ばっかりやっている。この体質を変えないといけない。その上で、もう一つ言いたいのは、社会保険庁が、来年1月で解体・民営化されることです。そうすると、国の責任があいまいになっちゃう。私は、この動きは中止して、そしてきちんと国の責任で最後の1人まで解決するという必要があると思います。

年金一元化

国民年金の保険料引き上げ、厚生年金の受給引き下げをもたらす

 民主党がマニフェストで掲げる、国民年金、厚生年金、共済年金を「一元化」する問題も話題になり、鳩山氏は「4年間のなかで(一元化の)システムをつくりあげる」と語りました。志位氏は一元化の問題について、次のように述べました。

 志位 これは、ちょっと問題があると思っているんです。もちろん、公正な年金をつくるっていうのは大事ですけれど、厚生年金というのは事業主負担があるのです。国民年金はないのですよ。ですから、もしそれを一本にあわせちゃうとすると、国民年金の保険料をうんと上げるか、厚生年金の受給をうんと下げるかと(いう問題がある)。それは、国民にとっていいことは一つもないです。

沖縄・普天間基地移転問題

「県内たらい回し」のSACO合意は白紙に

 外交・安全保障問題では、沖縄の普天間基地の移転問題について、民主党の鳩山氏は、「県外が望ましい」と述べ、「オバマ大統領との間の信頼関係のなかで、最終的な決着」を図る考えを示しました。これに対し志位氏は、次のように質問しました。

 志位 沖縄の普天間の問題について話されました。それで、県内移設はやらないということになりますと、SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意というのがあるのですよ。SACO合意で「県内たらい回し」を決めているわけですよ。SACO合意は見直すと、これはアメリカとの関係で見直しをきちんとやると、これを提起しますか?

 鳩山氏は、「これは(米国)大統領とのあいだの信頼関係のなかで、包括的なレビューをしていくなかで、その必然性が出てくるかどうかだ」と回答。志位氏は、「SACO合意をやはり白紙にもどさないとね、この問題はすすみません」と強調しました。



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