2009年8月25日(火)「しんぶん赤旗」
教師からの批判反映せず
「つくる会」教科書採択で判明
東京・杉並
東京都杉並区の区民らでつくる「杉並の教育を考えるみんなの会」は24日、記者会見を開き、同区の教育委員会が侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の扶桑社版歴史教科書を採択した問題で、情報開示請求で入手した資料に基づき、現場教師の声が反映されていなかったことを明らかにしました。
杉並区教委は今月12日、2005年に続いて扶桑社版教科書を多数決で採択しました。みんなの会は、この採択にあたって区内23中学校ごとに社会科教員らが作成した「教科書調査報告書」などを入手しました。その結果、約8割にあたる18校の「報告書」では扶桑社版教科書について「人物コラムの人選に偏りがある」「難しい語句が多い」「世界史との関連が少ない」など明確に批判的な記述をしていました。(別項)
ところが教育長が委嘱した校長らでつくる「教科書調査会」が教育委員会に出した報告書では、批判的記述はほとんどなくなり、肯定的な内容が大半を占めていました。
また、12日の教育委員会では、扶桑社版採択に反対する委員が「現場教師の(扶桑社版への)異論もある」とのべたのに対し、大蔵雄之助委員長が「教師全員に聞いたのか。私のところには、そんな話はとどいていない」と発言していました。
みんなの会は「区教委は現場の意見を尊重しているといっているが、実際に扶桑社版を4年間使ってみての教師の声が届いていないということは明らかだ。現場の意見を反映するシステムになっていない。採択の手続きについて区教委はきちんと説明するべきだ」としています。
調査報告書の記載意見
・難しい語句が多く、文末も硬い表現である
・世界史の流れをとらえて、日本の歴史を理解するには偏った内容の選定である
・民衆の視点に立った記述が少ない
・戦前の復古的な内容を多く扱っており、戦後の扱いが不足している
・独自の歴史観や価値観が感じ取られ、中立性に欠ける
・今日までの歴史研究の成果が生かされていなく、一面的である