2009年9月2日(水)「しんぶん赤旗」
主張
世界金融改革
規制強化の流れは止まらない
昨年9月の米大手証券会社リーマン・ブラザーズの破たんは米国発の金融危機を象徴する出来事でした。金融危機は世界経済を重大な混乱に陥れました。マネーに飢える投機屋が「高リスク、高リターン」を追求する金融のあり方に厳しい批判が向けられています。
危機を通じて世界は様変わりしました。市場にまかせろという自由放任への賛美はすっかり影を潜めました。深刻な金融危機を二度と起こさないために、「カジノ資本主義」に代えて「ルールある」金融経済を築くことが求められています。
様変わりの世界
先進国と新興国の20カ国・地域からなる新たな枠組み(G20)がつくられ、国際協力のもとで金融改革が進められています。各国も、G20の方針をにらみながら規制強化に乗り出しています。
大きな変化を見せたのが米国です。ブッシュ前政権は一国覇権主義の立場から弱肉強食の「新自由主義」を推進し、規制強化を求める独仏などと対立しました。一転、オバマ現政権は金融規制でも国際協調の姿勢を示しています。
オバマ政権は連邦準備制度理事会(FRB)に大手金融機関への一括した監督権限を付与し、投機屋ヘッジファンドの登録制導入などを進めています。現代の錬金術というべきデリバティブ(金融派生商品)の店頭取引への規制にも初めて踏み切り、具体策をとりまとめたばかりです。
当初の衝撃が和らぐ中で、改革は打ち止めだとする見方も一部にあります。しかし、これで終わりにするわけにはいきません。
現に新たな問題提起が続いています。3度目となる今月のG20サミットでは、サルコジ仏大統領が銀行の高額な報酬制度への規制を呼びかけるとしており、ドイツなども賛同しています。銀行幹部への法外な成功報酬が、リスクの高い取引を誘ってきたからです。
米国と並んで世界金融の中心であるイギリスで、金融監督当局のトップが、投機的な金融取引に課税する「トービン税」の創設に言及し、衝撃を持って受け止められています。金融活動に「社会的有用性」の視点を据えるという「2、3年前には考えられなかった」(英マスメディア)提案で、賛否両方の議論を呼んでいます。金融のあり方に批判的な研究者や団体が長年展開してきた議論が、にわかに政策的な現実性を帯びています。
第2次大戦後から続く米ドルを基軸とした国際金融も抜本的な見直しが迫られています。
経済危機で世界各国では雇用や所得が悪化しています。途上国が受けた打撃はとりわけ深刻です。国連食糧農業機関(FAO)によれば、所得減や失業増で、世界の飢餓人口が2009年に前年から1億人も増加し、「史上最悪」です。生活防衛は緊急の課題です。
生活防衛のためにも
金融危機で低下した原油価格はふたたび上昇し、航空会社が燃料サーチャージ(上乗せ料金)を復活するなどの動きが出ています。数年来の原油や食料の世界的な異常高騰は投機が最大の要因でした。一握りの投機屋の利潤追求に実体経済や国民生活が振り回されることは許されません。各国政府は金融改革の手を緩めず、食料やエネルギーへの投機の規制に踏み出すべきです。
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