2009年9月12日(土)「しんぶん赤旗」
主張
沖縄新基地
違法なアセスを押し付けるな
沖縄県名護市沖の米軍新基地建設に関する環境影響評価(アセスメント)を強引に進める政府・防衛省の横暴に対して、沖縄県民の怒りが噴出しています。
環境アセス準備書を審査している沖縄県環境影響評価審査会(津嘉山正光会長)の審議会でも、環境アセスのやり直しの声がでています。環境アセスのやり直しを求める全国初の訴訟も起きています。沖縄県議会の野党会派は日本共産党などへ新基地反対の要請を行いました。防衛省が強権的姿勢を続けるなら、県民の反発は大きくなるだけです。
怒り広げる強権的手法
新基地建設に関するアセスは、アセスを進める設計図ともいうべき方法書の審査に続き、評価書に先立つ準備書の審査の段階に入っています。しかしいずれも欠陥だらけで、アセスの手続き自体が明白な違法状態となっています。
防衛省が2007年に沖縄県に提出し公告縦覧に付したアセス方法書は、必要なことを書かない欠陥方法書でした。米軍機がどの方向に飛ぶのか飛行経路も示していません。米軍が計画している垂直離着陸も可能な最新鋭輸送機オスプレイの配備も書いていません。住民の命と安全に関する事項を書かない方法書にそったアセスの手順は明らかに無効です。
今年4月、防衛省は環境アセス準備書を提出しました。重大なのは、方法書(その後の追加・修正を含む)になかった新たな事業を突如追加したことです。ヘリが離着陸するヘリパッド4カ所の設置、海兵隊員を運ぶ強襲揚陸艦も利用できる係船機能付き護岸の建設は、新基地の機能を飛躍的に強化する重大な事業です。方法書に書かず、「後出し」ですますのはアセス法の趣旨に反します。とうてい許されることではありません。
飛行経路がどうなるかも住民の命と安全にとって重大です。しかし準備書は、「訓練の形態等によって集落上空を飛行することもあり得る」といいながら、飛行経路を「特定することは困難」として具体的説明を避けています。これでは普天間基地(宜野湾市)と同じような全方位の飛行の心配は消えません。住民に爆音被害と墜落の危険を押し付けるというのに、米軍機の飛行経路も飛行の時間帯も示さないのでは、アセスの意味はありません。
天然記念物であり絶滅危ぐ種のジュゴンも、米軍ヘリの爆音や基地建設による餌場の破損で大きな影響を受けることが避けられないと専門家が一様にいっているのに、「影響はほとんどない」というのはきわめて不誠実です。
防衛省の環境アセスは手順も内容も違法であり、住民がやり直しを求めるのは当然です。
変化を直視し断念を
沖縄では、昨年の県議選で新基地建設に反対する勢力が多数を占めたことに続き、今回の総選挙でも新基地建設推進派の自民党がすべて落選しました。これは、日米軍事同盟中心の政治を進め、県民に米軍基地の痛みを押し付けてきた自民党政治そのものへの県民の怒りの大きさを示しています。国は、新基地に反対する7割の県民の意思をじゅうりんすることをやめ、計画を断念すべきです。
新基地計画を断念させ、基地のない平和な島づくりにつなげることがいよいよ重要です。