2009年9月15日(火)「しんぶん赤旗」
新型インフル緊急シンポ
「タミフル頼み」は問題
医療体制の確保 課題に
国内で発生した新型インフルエンザ患者が、抗インフルエンザ薬「タミフル」を飲んでも重症化・死亡し、タミフルの「重症化阻止効果」がはっきりしていないことが14日、明らかになりました。東京都内で開かれた「新型インフルエンザ ワクチン、パンデミック(大流行)対策を問う」緊急シンポジウムで、ウイルス研究者が報告したもの。
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報告したのはWHO(世界保健機関)感染症地域アドバイザーの押谷仁・東北大学教授。押谷教授は、国内で発生した新型インフルエンザで死亡した患者について発熱・発症から死亡までの経緯を分析。発熱1日目にタミフルを飲んだ患者が3人、2日目が4人、3日目が1人と、計12人中8人がタミフル治療を受けていました。(図参照)
押谷教授は、「外国では投与が遅れていたが、国内ではタミフルを早期に投与されても亡くなっている人がいる。タミフルなどの抗インフルエンザ薬が、重症化を阻止するというデータはまだない」と指摘。「タミフルに頼りすぎる新型インフルエンザ対策は問題がある」と強調しました。
基礎疾患のある人や妊婦のワクチン接種が始まるころに、新型インフルエンザ患者が医療機関に殺到する可能性もあることから、押谷教授は、ICU(集中治療室)や人工呼吸器の準備だけでなく、医療機関側の受け入れ体制など、「救える命をどう救うかを考えた被害軽減の基本戦略を立てておく必要がある」と訴えました。
押谷教授は、新型インフルエンザは、感染者のほとんどは軽症ですむものの、一部はウイルス性肺炎の重症化など「季節性インフルエンザとは違う特徴がある」と指摘。重症化した患者への医療体制の確保が日本でも大きな課題で、「地域の医療崩壊・産科医不足など日本の医療の弱点が被害拡大につながる可能性がある」と警鐘を鳴らしました。
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