2009年9月21日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
場外舟券売り場 断念させた
“健全なまちづくり”で住民団結
「このまちにギャンブルの施設はいらない」と各地で反対運動がとりくまれています。場外舟券売り場(ボートピア)の計画を断念させた新潟市と和歌山市の経験を紹介します。
新潟市
場外舟券売り場が予定されていた新潟市東区中心部の旧イトーヨーカドー跡地を、新潟市が区役所移転のために正式購入することが明らかになり、設置は事実上断念となりました。これまでの住民運動の成果です。
7月23日付でこのことが新聞報道され、翌24日に「場外舟券売場設置に反対し、健全で明るいまちづくりを考える会」の世話人会は勝利集会を開催。「会」の代表世話人の一人で、最も近接する地元自治会の下木戸自治会長は「阻止できたのは住民が一致団結したから。五十嵐さん(完二元県議)や飯塚さん(孝子市議)の援助で阻止できてよかった。今後は健全で明るいまちづくりで力を合わせて頑張っていきたい」と述べました。
圧倒的な反対で
昨年の6月1日付で設置会社と二つの地元自治会長による「合意書」が作成され、そのうち下木戸自治会ではその後開催した自治会総会で圧倒的多数が反対したことから、日本共産党に対応の相談がもちこまれ、元県議の私と飯塚市議が援助してきました。
国土交通省の設置要件では「地元自治会の同意」が必要であり、下木戸自治会では、自治会総会での住民の意思をふまえ、自治会住民に対して「反対署名」運動を開始し過半数から協力を得、さらに東区内自治会長170人に対して署名を依頼、110人から協力をえました。また、近隣の自治会長にたいして住民への反対署名を依頼しました。
8月には、場外舟券売り場計画を阻止した旧黒埼町での反対運動の経験を学ぶ学習会を開催。11月には集まった署名を日本共産党の井上哲士参議院議員の協力も得て、国土交通省にも届けました。
舟券売り場設置会社などは、今年3月に「地元説明会」を開催。弁護士を通じての下木戸自治会長に対する質問、スーパーやレストランの併設を前面にしての「賛否署名」など反対運動を妨害しましたが、4月19日の自治会総会ではこれを乗り越え95対5の圧倒的多数で「反対決議」がおこなわれました。
「会」を結成して
設置会社からは正式な設置申請が出されていないものの、さらに設置への執拗(しつよう)な動きがあることを考慮して、地元自治会だけでなく地域全体での運動をひろげようと、5月には「場外舟券売場設置に反対し、健全で明るいまちづくりを考える会」を100人の参加で結成し、市長に2500人を超える署名を提出。場外舟券売り場設置に反対すると同時に、東区中心部のまちづくりについても積極的に働きかけていくことを確認しました。
その後、署名運動を中心にして地域の声が大きく広がるなかで、新潟市が購入を決断したもので、舟券売り場計画は事実上断念となりました。
(元県議・五十嵐完二)
和歌山市
和歌山市6月定例議会最終日の7月7日、「ミニボートピア設置に反対する」請願が、あふれる傍聴者が見守るなか賛成20人、反対18人で採択されました。推進決議が本会議で採択されたことは過去に何度かありましたが、設置反対の決議が採択されたのは市議会としてはじめてのことです。
和歌山市では、過去に何回もボートピア(場外舟券売り場)設置計画が持ち上がりましたが、そのつど地元自治会やPTAなどの反対ですべて中止されてきました。
急浮上した計画
2007年9月、和歌山市は地元同意の範囲を「一単位自治会」(和歌山市の場合数十戸となる)でも可能とする「政策判断」を示し、反対運動を挫折させる動きに出てきました。この判断と並行して、ミニボートピア(販売窓口15カ所)を設置する計画が急浮上しました。
地元住民は、「子どもの教育環境を守れ」「通学路にバクチ売り場はいらない」「ギャンブルに頼らない商店街の発展を」などと声をあげ反対運動が急速に広がりました。ミニボートピア設置計画地の連合自治会(1600世帯)は、36単位自治会のうち27単位自治会が、また和歌山市内の小学校育友会は30団体すべてが反対決議を上げ和歌山市長に「市長同意」をしないことを求めました。
4万5千の署名
署名は、短期間に4万5千人をこえました。さらに、昨年と今年夏、炎天下のもと孫をもつ高齢者の方やベビーカーを引いた若い女性も参加した反対集会で決議を上げ、和歌山市役所までパレード行進し、市長に提出しました。
市長同意、地元同意、議会の反対決議がないことが、ミニボートピア設置における3要件ですが、市の政策判断の変更と時を同じく、ミニボートピア設置対象となる27戸の地元単位自治会では「推進派」巻き返しで、新たに9戸のテナント営業者などが単位自治会に加入し、きん差で設置同意の決議があがりました。
日本共産党市議団は、設置された全国の事例を調査研究し、穀田恵二衆院議員とも連携して国交省基準を示し、一単位自治会での同意では不十分であることなどを提示しました。とくに、6月定例議会で、当局から「周辺1キロ以内に、2幼稚園、4小学校、2中学校があり通学路となっている」との答弁を引き出し、反対市民の声を市長に示して、同意はするなと論戦を進めました。
住民の圧倒的な声が議員に届いたことは間違いないと思います。計画中止後、住民の方から「議会質問は、資料として配り参考にしていました」との声が寄せられ、「設置反対請願が採択されて本当にうれしい」と涙ながらに喜ばれました。
(和歌山市議会議員・渡辺忠広)