2009年9月29日(火)「しんぶん赤旗」
セミパラチンスク
世代超え拡大する深刻な核被害
志位委員長が病院訪問・記念碑に献花
【セメイ(カザフスタン)=田川実】カザフスタンを訪問中の日本共産党の志位和夫委員長は27日、首都アスタナから空路で、旧ソ連時代のセミパラチンスク核実験場に隣接するセメイ市(旧セミパラチンスク市)に入り、市立診断センターを訪問しました。
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同核実験場では、旧ソ連時代の1949年から89年まで、空中、地上、地下で計456回の核爆発実験が実施され、その爆発威力の合計は広島型原爆の2500倍、放射能汚染の規模はチェルノブイリ原発事故の5000倍といわれています。30万平方キロの生態系が被害をうけ、残留放射能や体内被ばくによる、周辺住民の深刻な健康被害が、いまなお続いています。
市立診断センターは、被ばくの影響を診断し、治療も実施する施設で、日本の援助が重要な役割を果たしています。同センターでは、現在までに1万6000人の住民への診断結果が出され治療が始まっており、さらに2万4000人以上の人々が診察を受けています。
障害は世代を追って深刻に
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市立診断センターのジャナート・モルダガリエバ医師長は、志位委員長の訪問を歓迎し、核実験による深刻な被害が、今日もなお引き続き、拡大さえしている実態を克明に説明しました。
リンパ、血液、乳房、肺をはじめ、人体のあらゆる部位でがんが多発していることにくわえ、何よりも痛ましいのは、ダウン症、心臓疾患、発達障害、水頭症、小頭症などの障害が、他の地域よりはるかに多いことです。
志位氏が、「遺伝子がひどく傷つけられているのですね。障害は、世代を経て減少しているのでしょうか。それとも拡大しているのでしょうか」と質問すると、モルダガリエバ氏は、次のように答えました。
「障害が現れる比率は、被ばく者でも第2世代、第3世代と、世代を追って高くなっているのです。今がこれまでで障害が現れるピークとなっています。これから先も、さらに障害の比率が高くなるのかどうか、何世代にわたって障害が続くのか、人類が経験したことのないことで、誰にもわかりません。長い時間がかかるでしょう。妊娠しても両親はたいへん心配ですし、死産も多いのが実態です。何とかして子どもたちへの影響を減らさなければなりません」
核廃絶を求める国際署名に「大賛成」とサイン
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志位氏が、「旧ソ連によって続けられた核実験に、いまどのような気持ちを抱いておられますか」と尋ねたのにたいし、モルダガリエバ氏は、「大虐殺以外の何ものでもありません。私たちに対してだけではなく、人類に対する犯罪です」と、強い口調で怒りの気持ちを語りました。そして、「日本とカザフスタンの両国民ほど、お互いの苦難を理解しあえる関係はありません」と述べました。
志位氏は、同医師長に要請されて、センターの訪問者ノートに次のように記帳しました。「核の被害が世代を超えて続いていることは心が痛みます。核兵器と人類は決して共存できません。この地で、『核兵器のない世界』に向けて力をつくす決意を新たにするものです」
志位氏は、最後に、「核爆発の犠牲者を生み出すようなことを決してくり返してはなりません。その唯一の道はこの地球から核兵器を廃絶することです」と述べ、原水爆禁止世界大会が呼び掛けた「核兵器のない世界」を求める国際署名を紹介しました。モルダガリエバ氏は、その場で国際署名に目を通し、「おっしゃるとおりです。大賛成です」と力強く署名しました。
志位氏は、その後、トルシンガジ・ムサピルベコフ副市長と懇談し、核実験の被害者を追悼した記念碑に献花をおこないました。