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2009年10月9日(金)「しんぶん赤旗」

主張

イラク「空輸実績」

戦争支援を隠した責任は重大


 航空自衛隊がイラクで行っていた米軍などに対する空輸支援活動の「週間空輸実績」を防衛省が全面開示しました。

 本紙記者の開示請求に対して、北沢俊美防衛相が「現時点で不開示とする理由がない」として開示を認めたものです。これによって、自公政府が進めてきた空輸支援の全記録が明らかになりました。アメリカなどとの「信頼関係を損なう」といって、空自の空輸支援の実態を隠し続けてきた自公政権の責任があらためて問われます。

うそだった人道支援

 公開された「週間空輸実績」は、2004年3月3日から、最後の空輸となった08年12月12日までの全記録です。このうち06年7月まではクウェートから陸自が駐屯していたイラク南部の飛行場との往復、それ以降は激しい戦闘が行われているバグダッドを往復した輸送の記録です。輸送した兵員などの数、国籍、所属、階級から携行した武器の種類や数量を週ごとに詳細に書き込んでいます。

 全期間を通した空輸人数の総計は約4万5千人ですが、このうち米兵が約63%を占めます。武器・弾薬は「輸送しない」ことになっているのに、小銃や拳銃の携行を許し、なかには兵員数より多い武器の持ち込みを認めたことも記録されています。

 イラク戦争は、イラクが大量破壊兵器をもっているとうそをいってアメリカのブッシュ政権が始めた国連憲章違反の侵略戦争です。日本が真っ先に支持し、戦争支援を強行したこと自体、憲法と国連憲章をないがしろにした暴挙です。そのうえ、「人道復興支援」というごまかしで国民と国会をあざむき、戦争を支援してきた自公政権の態度は卑劣としかいいようがありません。

 とくに重大なのは、06年7月から空自がバグダッドまで輸送範囲を拡大したことです。2年半の間に空自が空輸した総数は約2万6千人で、そのうち米兵は約67%にもなります(「東京」6日付)。空自が完全に米軍の後方支援部隊の役割を果たしたことがわかります。

 バグダッド地域では激しい戦闘で米軍・多国籍軍の被害が続出し、米軍は戦争を続けるために新しい戦闘要員を補充し、バグダッドに投入する必要にせまられました。しかし米軍は各地の戦闘に手を割かれているため、陸自が南部サマワから撤退するのを認める代わりに、危険なバグダッドへの兵員・軍事物資の輸送を空自に押し付けたのです。自公政権の対米追随の異常は明らかです。

 武力行使と一体化した支援を隠すために、空輸実績の記録をこれまで開示しなかった自公政権の責任はきわめて重大です。

全容解明が必要だ

 自衛隊のイラク派兵差し止め訴訟で名古屋高裁は08年4月、米軍に対する空自の空輸支援が憲法にもイラク特措法にも違反するとの判決をだし、確定判決となりました。

 憲法違反と判定された問題を、輸送兵員の数や武器の数量の開示で済ませるわけにはいきません。「空輸実績」の公開を第一歩に、日本の戦争支援の徹底検証が不可欠です。米軍の武力行使との一体化問題など全容を解明する必要があります。戦争支援の責任をあいまいにはできません。



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