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2009年10月30日(金)「しんぶん赤旗」

死者、最悪の155人 イラク爆弾テロ

狙いは議会選挙の妨害

宗派抗争再燃の恐れも


 【カイロ=松本眞志】イラクの首都バグダッドの政府中枢地域で24日に発生した爆弾テロは死者155人を出し、米軍が6月に都市部から撤退して以降、最悪の事態となりました。8月にも100人近い犠牲を出す連続爆発テロがあり、イラクの不安定な治安情勢、政府の治安能力への疑念を強めています。


 どちらの犯行も、国際テロ組織アルカイダとの関係がある国内のスンニ派武装グループ「イラク・イスラム国」が関与したといわれています。

選挙で優位に

 バグダッド大学のファイヤド政治学部長は本紙の問いに、今回のテロについて、「マリキ政権主導の政治プロセスと経済復興事業にダメージを与えることが目的だ」との見方を示しました。

 アルカイダが来年1月の国民議会選挙を妨害するために選挙法の審議の時機を見計らって犯行に及んだといいます。

 また直前にワシントンで、石油産業を中心とするバスラ(イラク南部)での120の投資企画に外国資本を導入することを目的にした会合が行われていたことも無関係ではないといいます。

 ファイヤド氏はまた「政敵が選挙で優位に立つためにテロを利用する可能性もある」とも述べています。

 イラクでは8月に約400人がテロの犠牲となり、多くの場合、イスラム教シーア派教徒が標的となりました。このとき、シーア派主導のマリキ政権とイスラム教スンニ派民兵組織との不和、テログループの治安組織への浸透などが要因として報じられました。

分裂への傾向

 マリキ政権は、8月と今回のどちらの事件もスンニ派の旧バース党政権の残党が関与していると非難。「イラク・イスラム国」は今回の犯行声明で、「シーア派国家の支柱を標的とした」と表明し、宗派間抗争の再燃が危惧(きぐ)される事態となっています。

 また選挙に向けて次々と新会派が組織されるとともに、シーア派、スンニ派それぞれに分裂への傾向を強めています。

 シーア派与党内ではイラク・イスラム革命評議会(SIIC)やサドル師派らが「イラク国民同盟」、マリキ氏らが「法治国家連合」を結成し、シーア派内部の対立が表面化。スンニ派内でもかつて政府と共同してアルカイダとたたかった「覚せい評議会」などが新会派「イラク統一連合」を創設し、マリキ政権との対決姿勢を強めています。


 シーア派とスンニ派 イスラム教の預言者ムハンマド(マホメット)の後継者(カリフ)の正統性をめぐり、シーア派はムハンマドのいとこで娘婿である第4代カリフのアリーとその子孫だけが後継者の権利を持つと主張。スンニ派はアリーに先立つ3人のカリフも正統と認めています。イスラム教全体ではスンニ派が85%と圧倒的多数を占めますが、イラクではシーア派60%に対し、スンニ派は20%。



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